イヨネスコ「瀕死の王」

◎王の死はフレイザー『金枝篇』を思わせ、そして…
大泉尚子

「瀕死の王」公演チラシ「瀕死の王」は、文字通り死を眼の前にした王ベランジェ一世が、生に強く執着をもちながら、ついには死を受け入れるというお話。あくまでも威厳をもって王らしく死ぬことを突き付ける、第一王妃マルグリットと医者。より多く寵愛を受けているせいか、嘆くばかりの第二王妃マリー。それに、お世話係の侍従にして看護婦のジュリエットと衛兵。この6人が登場人物となる。

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イヨネスコ「瀕死の王」

◎揺さぶられた芝居観 公演の終わりは、混沌
浜崎未緒

「瀕死の王」公演チラシ劇場に行って、まず公演予定時間の掲示を探してしまう。ほとんど儀式のように近づいて、公演にかかる時間を確認する。2時間を超えているとがっかりだ。途中休憩があれば尚更。いつからか私の身体には、「休憩なしで2時間以内に終わる芝居はいい芝居(短編集やオムニバス公演を除く)」との持論が、染み付いている。2時間という時間の枠にギュウギュウに詰めこまれる方が、主題の際立つ「濃い」お芝居になる。そう、2時間以上かけて「薄い」お芝居をみることが、いちばん嫌いだ。なぜこんな苦痛を味わわなければいけないのか、と悔しい想いをしたことが何回もあった。『瀕死の王』は、休憩なしの2時間15分の予定だが…。

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イヨネスコ「瀕死の王」

◎台詞=言葉を支える声とからだ 稀有なオーディエンス体験
鴨下易子(アトリエ・ドミノ主宰)

「瀕死の王」公演チラシ『瀕死の王』のチラシは、縦長の金色のフレームに入った写真だ。2人のティアラをつけた喪服姿の女性の間に、頭に王冠を載せた男性が車椅子に座っている。王冠からタイトルにある王様のようだが、パジャマを着て病人に見える。ティアラや王冠がなければ、喪服もパジャマも普通で、写真館で撮った家族写真に見えないこともない。その家族写真の金枠にかかるように、「死っ!死にたくねぇ!」と書かれている。初めて見る不条理劇は、チラシにも奇妙さがあり変に印象的だった。

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イヨネスコ「瀕死の王」

◎瀕死の、殿
杵渕里果

「瀕死の王」公演チラシ「あと1時間40分で、王様はお亡くなりになるのです。このお芝居の終わりには」
舞台に、体調を崩した老齢の王が登場すると、王妃と侍医にこう宣告される。余命1時間40分。終演とともに昇天の予定。
「何を申す。縁起でもない」
王は、機嫌を損ねる。なるほど、タイトルどおり『瀕死の王』である。

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