マームとジプシー「しゃぼんのころ」

◎震えと揺れが引き起こす、舞台上の遠景。
徳永京子

「しゃぼんのころ」公演チラシ
「しゃぼんのころ」公演チラシ

おそらく劇場を持った瞬間に、演劇は“遠景”を捨てたのだと思う。世界一巨大な劇場に出現する奥行きも、簡素な野外劇のテントから図らずも見えてしまった空がもたらす、一瞬の目眩にはかなわない。そう、遠景とは目眩だ。確かに“ここ”とつながっている/いたけれど、決定的に遥かな“あの場所”。時間を好き勝手に伸び縮みさせる演劇の暴挙と偉大な自由も、神聖な“あの場所”の前では嘘っぽさが目立ってしまい、劇場の中で演出家は、遠景に永遠の片思いをしてきた。

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チェルフィッチュ「ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶」

◎表現の領域、さらに広げる
中西 理

「ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶」公演チラシ「ゼロ年代(2000年代)」の終わりから、「テン年代(2010年代)」の初めにかけて、演劇・コンテンポラリーダンスに顕著な傾向は2つの領域の境界に位置するボーダレスな表現が増えたことだ。最近のwonderlandレビューでも音楽家・ダンス批評家の桜井圭介氏がダンスの側から神村恵カンパニー「385日」を素材(*1)に「演劇なんだかダンスなんだか分かんないよ」的な演劇やダンスの流行現象を取り上げているが、さらに演劇側の例として快快、東京デスロック、ままごとなど「テン年代」と言われる若手劇団の舞台を挙げることもできる。

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3人で語る「2010年7月はコレがお薦め!」

吾妻橋ダンスクロッシング・チラシ表
★カトリヒデトシさんのお薦め
維新派「台湾の、灰色の牛が背のびをしたとき」(犬島精練所跡 野外特設劇場7月20日‐8月1日)
百景社 野外公演2010「授業」(茨城県つくば市豊里ゆかりの森 特設野外劇場7月8日‐11日)
第17回BeSeTo演劇祭(新国立劇場・こまばアゴラ劇場・アトリエ春風舎・静岡県舞台芸術公園・鳥の劇場 6月29日‐7月25日)のうち、柿喰う客「Wannabe-日中韓俳優出演・3カ国語版」(アトリエ春風舎 6月29日-7月19日)
★鈴木励滋さんのお薦め
吾妻橋ダンスクロッシング・チラシ裏・「吾妻橋ダンスクロッシング」(アサヒ・アートスクエア7月16日‐18日)
ミクニヤナイハラプロジェクト「幸福 オン the 道路」(STスポット7月2日‐4日、9日‐11日)
・toi presents 5th「華麗なる招待‐The Long Christmas Dinner‐」(STスポット7月23日‐8月1日)
★徳永京子さんのお薦め
ブス会「女の罪」(リトルモア地下7月29日-8月10日)
劇団、江本純子「婦人口論」(東京芸術劇場小ホール7月15日‐25日)
・「空白に落ちた男」(パルコ劇場7月24日‐8月3日)

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テレビで見る演劇(~7月末)

 7月の注目は、10日と16日に放映されるダンス3作品。うち2つは、イスラエルのコンテンポラリーダンスカンパニーのもの。バットシェバ舞踊団「マックス」は、呪術的ともいえる低音の男声合唱とともに、ダンサーたちの動きが伝播し … “テレビで見る演劇(~7月末)” の続きを読む

 7月の注目は、10日と16日に放映されるダンス3作品。うち2つは、イスラエルのコンテンポラリーダンスカンパニーのもの。バットシェバ舞踊団「マックス」は、呪術的ともいえる低音の男声合唱とともに、ダンサーたちの動きが伝播していくさまが見事です。インバル・ピント・カンパニー「オイスター」のタイトルの由来は、次々と現れる不思議な登場人物を、牡蠣の中の不揃いな真珠になぞらえているとか。勅使河原三郎「オブセッション」は、シュールレアリスムの名作映画、ルイス・ブニュエル「アンダルシアの犬」から着想を得ており、バックには、フランス人女性演奏家による、イザイ作曲の無伴奏ヴァイオリンソナタが流れます。16日放映の「裏切りの街」は、5月にパルコ劇場で上演されたばかり。岸田戯曲賞受賞者の三浦大輔が、テレクラで知り合ったとことんダメな男と女の日常を〈リアル〉に描きます。
(場合により、番組内容、放送日時などが変更になることがあります。また、地上波デジタル放送の番組表は関東地区のもので、地域により一部番組が異なります。編集部)

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プロジェクトあまうめ「よせあつめフェスタ」

◎「つぶやき」から二週間で公演 興奮と喧騒  カトリヒデトシ  終演後、観客にも大入袋が配られ打ち上げとなった。興奮の余韻を噛みしめつつ賑やかに歓談に移った。そんな中、風琴工房の詩森ろばさんが脚立を持ち出して、照明を外し … “プロジェクトあまうめ「よせあつめフェスタ」” の続きを読む

◎「つぶやき」から二週間で公演 興奮と喧騒
 カトリヒデトシ

 終演後、観客にも大入袋が配られ打ち上げとなった。興奮の余韻を噛みしめつつ賑やかに歓談に移った。そんな中、風琴工房の詩森ろばさんが脚立を持ち出して、照明を外し始めた。いつものようにチュニック・ジーパン姿の女性らしい姿である。確かに打ち上げと平行してバラしを行うとアナウンスがあったが演出助手とはいえベテランが黙々と働いているのは、まぶしかった。制作総指揮の松本隆志とその勇姿を見上げつつ、「すごい状況だね」「ほんとですね」「申し訳ないようだが、こういうイベントだったんだよね」「まさにそうですよね」という会話をした。

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快快「SHIBAHAMA」

◎酷薄な皮肉さを肯定すること  柳沢望  快快の『SHIBAHAMA』は、古典落語の『芝浜』をモチーフにしながら、天井と四つの壁すべてにせわしなく映像を上映しつつ、断続的に多様な場面が入れ替わる、極めて同時代的な舞台作品 … “快快「SHIBAHAMA」” の続きを読む

◎酷薄な皮肉さを肯定すること
 柳沢望

 快快の『SHIBAHAMA』は、古典落語の『芝浜』をモチーフにしながら、天井と四つの壁すべてにせわしなく映像を上映しつつ、断続的に多様な場面が入れ替わる、極めて同時代的な舞台作品に仕上げられた上演だったと思う。

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【レクチャー三昧】夏休み

 7月中旬より各大学は夏休みに入り、無料講座は少なめです。当【レクチャー三昧】では、「一般」成人向けイヴェントに絞ってご紹介しておりますが、検索をしておりますと、自治体主催の子ども向け夏休み体験講座がそこここに見受けられ … “【レクチャー三昧】夏休み” の続きを読む

 7月中旬より各大学は夏休みに入り、無料講座は少なめです。当【レクチャー三昧】では、「一般」成人向けイヴェントに絞ってご紹介しておりますが、検索をしておりますと、自治体主催の子ども向け夏休み体験講座がそこここに見受けられます。お子さんをだしにして(?)ご自分も楽しまれる、という手もありではないでしょうか。
(高橋楓)

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