MU「5分だけあげる」

◎素カレーは偉大
 小畑明日香

「5分だけあげる」公演公演チラシ
「5分だけあげる」公演チラシ

 『5分だけあげる』・上演時間55分、平台で舞台、一回り小さい平台を上に重ねて上演スペース、主に教室と、そこへ向かう廊下で起こる、学級崩壊した小学校(パンフレットに寄れば「ぶっ壊れた6年2組」)での物語。
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SPAC「天守物語」「野田版 真夏の夜の夢」

◎演劇は祝祭である-宮城聰小論
 中西理

ふじのくに⇔せかい演劇祭 1995年の阪神大震災とオウム事件以来の日本の現代演劇の流れを形成してきたのは平田オリザの現代口語演劇を中心とした「関係性の演劇」(*1) であった。この流れは2000年代に入り、代表的な作家としてポツドールの三浦大輔や五反田団の前田司郎らを生み、チェルフィッチュの岡田利規の超現代口語演劇へと受け継がれた。90年代半ば以降の日本の演劇を振り返るとそんな系譜が見えてくる。そのことはこれまでもいろんなところに折に触れ書いてきたが、実は90年代には「関係性の演劇」と並んで身体表現を重視するもうひとつ重要な現代演劇の潮流があった。それは「身体性の演劇」で代表的な作家がク・ナウカの宮城聰だった。

 「演劇は祝祭でなくてはならない」。都市生活を営む私たちに必要なのは祭りではなく、この世界がいかにあるのかを静かに見つめなおすような時間・空間であると「都市に祝祭はいらない」という著書で持論を展開した平田に対し、宮城は対照的な演劇=祝祭論を提唱(*2)。感情的な反発ではなく理論的な視座において平田の演劇を批判できる数少ない論客でもあった。
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イキウメ「散歩する侵略者」

◎センス・オブ・ワンダーの彼方に待ちうけるものの正体
 三橋曉

「散歩する侵略者」公演チラシ
「散歩する侵略者」公演チラシ

 見逃したことで悔やんでも悔やみきれない過去公演のワーストワンは何か、を考えてみるとしよう。わたしの場合、その最右翼にくるのは、もしかしてイキウメの『散歩する侵略者』初演(@新宿御苑サンモールスタジオ)かもしれない。
 2005年10月、その評判に気づいたときすでに遅く(確か楽日だった)、不覚にもその公演を目撃することはかなわなかった。しかし捨てる神あれば拾う神あり。その翌年2006年6月、演劇プロデュースのカンパニーG-upが、THE SHAMPOO HATの赤堀雅秋の演出でこの作品を上演してくれたおかげで(@新宿スペース107)、初演からわずか半年で、遅れて観ることができた。
 その後、本家イキウメによる再演(2007年9月@青山円形劇場)、さらに同再々演(2011年5月@三軒茶屋シアタートラム)と、上演されるたび足を運んでいるのだが、それでも初演を逃したことが、今も悔やまれてならない。『散歩する侵略者』という作品の、どこがそんなに気になるというのか?
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オクムラ宅「かもめ 四幕の喜劇」

◎二年間の休憩-いつか「かもめ」が飛ぶ日のために-
 宮本起代子

「かもめ 四幕の喜劇」公演から
「かもめ 四幕の喜劇」公演から

 「オクムラ宅」は俳優・演出家の奥村拓が主宰する演劇ユニットである。
 二〇一〇年年四月、『紙風船・芋虫・かみふうせん』で旗上げした。
 岸田國士の『紙風船』をまずは原作通りにきっちりと作ったものをみせ、江戸川乱歩の『芋 虫』をベースにしたオリジナル作品をはさんで、最後にオクムラ版『かみふうせん』を披露した。きちんと和服を着て端正に『紙風船』を演じた夫婦(横手慎太郎/発汗トリコロール、名嘉友美/シンクロ少女)は、『かみふうせん』では着くたびれたスウェット姿になり、場所は現代の都会、マンションの一室らしい。何らかの事情で引きこもり状態になった夫婦が現実と妄想のあいだを行き来しながら、妻は圧倒的な暴力で君臨し、夫は卑屈に耐えながら遂には妻を殺害してしまう。台詞はまったく変えていないのに、状況設定と俳優の造形によって劇世界がこうも変容するとは。予想外の演出に驚嘆しながらも「これはどうしたものか」という困惑があり、何に対してかはわからないが罪悪感のようなものも入りまじって、複雑で刺激的な夜になった。
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福岡と北九州の演劇・ダンススポットを訪ねて

◎福岡と北九州の演劇・ダンススポットを訪ねて
 大泉尚子

 6月末に、九州にある公共ホールで働いていらした栗原弓枝さんのご案内により、福岡と北九州で演劇やダンスにかかわっておられる方々を訪ねた。お会いしたのは、NPO法人「FPAP(エフパップ)」の高崎大志さん、「枝光本町商店街アイアンシアター」の市原幹也さん、「劇団こふく劇場」の永山智行さん、「北九州芸術劇場」の泊篤志さん、NPO法人「Co.D.Ex(コデックス)」のスウェイン佳子さんなど。2日間という短い日数ではあったが、地域の舞台創造を支える活動の一端にふれることができた。
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【レクチャー三昧】2011年8月

 7月は個人的な事情で休載してしまい申し訳ございませんでした。
 今年、大学の夏休みは、東日本大震災の影響により変則的なところがあるのですが、毎年秋期はどこもレクチャー花盛りになります。見つけ次第【レクチャー三昧】カレンダー版に入力していきますのでお楽しみに。土曜の午後は空けておかれることをお勧め致します。
(高橋楓)
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