あうるすぽっと「季節のない町」

◎貧困と退廃の牧歌
 片山幹生

「季節のない町」公演チラシ
「季節のない町」公演チラシ
宣伝美術:早田二郎

 都会の吹きだまりのようなスラムは、パステル調の色彩に塗り分けられた美術によってファンタジックに彩られている。戌井昭人は貧困の情景をある種の甘美なメルヘンとして提示し、そこに自堕落な生活がもたらす安逸を表現した。しかしその甘美さには、健康をむしばむ人工甘味料のような毒が含まれていた。

 『季節のない街』の原作は山本周五郎の連作短編小説である。原作の小説は昭和37年(1962)に執筆された。この原作を黒沢明が昭和45年(1970)に『どですかでん』の題名で映画化した。原作小説では各編でそれぞれ別の人物に焦点が当てられ、都市の片隅の貧民街に暮らす住民の生態が三人称体で綴られている。黒沢明の『どですかでん』では、原作からいくつかのエピソードを取り出し、それらのエピソードをさらに細分化して再構成したものになっていた。
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チョイ・カファイ “Notion: Dance Fiction” and “Soft Machine”
アマヤドリ「幸せはいつも小さくて東京はそれより大きい」

◎心と口と行いと―KYOTO EXPERIMENT2012報告(第4回)
 水牛健太郎

 チョイ・カファイはシンガポールのアーティストである。大柄で太り気味の中国人だ。通訳としてcontact Gonzoの塚原悠也を引き連れて、電気と筋肉の関係についてやおら説明を始める。18世紀以降の研究史をスクリーンに映しながら解説する。

 研究によって分かったこと。人体は神経繊維を通る電気信号によって筋肉に命令を伝え、動かしている。そして解説は、この科学的な成果を利用したパフォーマンスのアイディアへと収斂していく。コンテンポラリー・ダンスにおける身体の各部位の筋肉の動きを電気信号に変換してコンピュータに記憶させ、それを別人の身体に流すことによって、同じ動きをさせることができる。動きをコピーするというか、レコードで音を再生するのと同じように、動きを再生する。こういうアイディアである。
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忘れられない一冊、伝えたい一冊 第13回

◎「日本凡人伝」(猪瀬直樹著、新潮文庫)
 中井美穂

「日本凡人伝」表紙
「日本凡人伝」表紙

 猪瀬直樹さんの『日本凡人伝』は雑誌『STUDIO VOICE』に連載されたもので、大学生だった80年代の後半、とても好きな読み物でした。後に単行本・文庫になりましたが、続編も出ています。猪瀬さんは、若い方たちには東京都副知事のイメージが強いかもしれませんが、当時はもっと尖がった社会派ジャーナリストの印象がありましたね。
 インタビューものなんですけど、相手は著名人ではなく一般の社会で働く人たち。今でこそ、そういう本もけっこう出ていますが、あの頃は、誰にも知られない普通の人に話を聞くというのが新鮮でした。
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重力/Note「職業◎寺山修司(1935~1983/1983~2012)」

◎「テラヤマ」から今何マイル?―私たちの測られた距離/時間
 谷竜一

「職業◎寺山修司(1935~1983/1983~2012)」公演チラシ
【宣伝美術=青木祐輔 提供=重力/Note】

 随分間抜けな時間を経てしまった。論旨の九割は出来ているんだが、というのは書き手の常套句だが、敢えて言わせてもらおう。論旨の九割はできていた。けれども残りの一割は、《時間を経る》ということでしか、私は書けなかった。言葉から距離を取るということ。しかし、同時にそこに居あわせてしまうということ。そのふたつの状態を持ち合わせないでは、何を言うにも躊躇われる公演だったのだ。そしてこの遅さ/早さを、反省とともに捧げたい。
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ナカゴー「鳥山ふさ子とベネディクトたち」
ロロ「LOVE02」
ニッポンの河川「大地をつかむ両足と物語」
リア・ロドリゲス「POROROCA」

◎ブラジルの河川―KYOTO EXPERIMENT2012報告(第3回)
 水牛健太郎

 KYOTO EXPERIMENT 3週目の先週はフリンジを中心に観劇する週となった。フリンジ作品を3本見たが、それぞれに刺激があった。

 ナカゴーは「鳥山ふさ子とベネディクトたち」と題して二本立て、そのうち主な演目は「ベネディクトたち」で、2年前にも「町屋の女とベネディクトたち」という二本立ての一本として見たことがある作品だった。これはかなり面白い作品である。
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ロロ「LOVE02」
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MU「いつも心だけが追いつかない」(クロスレビュー挑戦編)

「いつも心だけが追いつかない」公演チラシ

 MUは「短編」をコンセプトに2007年から活動してきた珍しい演劇ユニット。劇作家、演出家、プロデューサーなど多面的に活躍する主宰のハセガワアユムは、「テーマは< not "no Message" >(「メッセージがいらないなんていらない」)」という。そのMUの今公演は、バーやカフェなどで定期的に開く「少人数による会話劇」第二弾。「ぶっ壊れた学園モノ系」だそうです。さて、どんな舞台だったのでしょうか。★印と400字コメントのクロスレビューをご覧ください。掲載は到着順。レビュー末尾の丸括弧内は観劇日時です。(編集部)

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忘れられない一冊、伝えたい一冊 第12回

◎「作画汗まみれ-増補改訂版-」(大塚康生著、徳間書店、2001)
  筒井加寿子

「作画汗まみれ」表紙
「作画汗まみれ」表紙

 高畑勲さんや宮崎駿さんなど日本アニメーション界の大御所たちとともに数々の傑作を生み出してきたアニメーター・大塚康生さんの自伝。
 日本にまだテレビがなくアニメ映画もほとんど上映されてなかった昭和30年代にアニメーターを志し、東映動画(現・東映アニメーション)に第1期生として入社、同社で高畑さん・宮崎さんと出会った大塚さん。のちに彼らの監督作品(『パンダコパンダ』『未来少年コナン』『ルパン三世 カリオストロの城』『じゃりン子チエ』など)で作画監督を担当し、それ以外にも様々なアニメ作品で活躍、またたくさんの新人アニメーターを育成し、今日の「ジャパニメーション」隆盛の礎を築いていきます。
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鵺的「荒野1/7」

◎劇作家の幸福
 宮本起代子(因幡屋通信発行人)

「荒野 1/7」公演チラシ
「荒野 1/7」公演チラシ

【肉親を題材にすること】
 劇作家高木登の母上のきょうだい7人は事情があって離散したのち、母上が中年にさしかかったころに長兄の尽力で再会を果たした。その後のおじやおばたちの人生は非常に厳しいものであったらしい。公演チラシには、「この程度の不幸はよくあることだが、あいにく彼らは自分の血族だった」と記され、「家族なんていらないという伯父の肉声に応えるように、導かれるように書いている」と続く。
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杉原邦生/KUNIO 「更地」

◎KUNIO10「更地」を見て感じたこと。
 林 伸弥

太田省吾さんを僕は知らない。
知らないけど、太田省吾という人が生きていた、という事実が堪らなく愛おしい。
いつもそうなんだけれど、作品を見て作品を好きになることより、作者を好きになってしまうことが多い。
駄作だろうとその人の生き様が作品から見えれば、それで良い、というかそれが良い。
エレファントカシマシの宮本浩次のようなあの感じ。あの人はトータルアルバムを作れない人で必ず駄曲がいくつか入っていて、でもその凸凹感含めて愛おしく。
ってそりゃあタダのファンか。
太田さんもかつては駄作を作ったのだろうか。
だったら嬉しいし、なおさら好きだ。
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地点「はだかの王様」
レイジーブラッド featuring Reykjavík!「The Tickling Death Machine」
杉原邦生/KUNIO 「更地」
劇団競泳水着「リリィ」

◎台風一過―KYOTO EXPERIMENT2012報告(第2回)
 水牛健太郎

 以前どこかで書いたけれど、身分というのは演劇そのものである。「この人は王様だ」という「お約束」の上にすべてが築かれ、それが否認されるや王冠は奪い取られる。「身分は演劇だ」というのは比喩ではない。ただの事実だ。だっ
て、誰かが誰かより、「生まれつき高貴である」なんて、現実じゃありえない。お芝居の設定以外の何だと言うのか。それが一国を挙げての大掛かりなものだったとしても、お芝居に違いはない。

 「はだかの王様」というお話の鋭さは、身分というもの(というか、ありとあらゆる「AさんはBさんよりも偉い」)の演劇性というものを、容赦なく暴いてしまうところにある。一見のんきな寓話のようで、その刃はすべての虚飾を切り裂く。
誰の身の周りにも、一人や二人、「はだかの王様」にたとえたくなる人がいるのではないか。会社の上司とか。劇団の主宰とか。や、特定の劇団の話じゃないですよ、もちろん。
“地点「はだかの王様」
レイジーブラッド featuring Reykjavík!「The Tickling Death Machine」
杉原邦生/KUNIO 「更地」
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