象牙の空港「女体出口」(クロスレビュー挑戦編)

「女体出口」公演チラシ
「女体出口」公演チラシ

 「象牙の空港」は京都大学生の伊藤元晴が2012年3月、自作を上演する個人ユニットとして旗揚げ。この名称は「長年住み慣れてすっかり寂れた象牙の塔に、外界との窓口として空港を設置する」とのねらいで付け、「言葉と物語と身体に基点を置いた表現活動を模索」しているそうです(ユニットHPより)。今回の公演は父親に頼まれて「見たこともない祖母を探す」旅らしいのですが、実際の舞台はどうだったのでしょうか。レビューは★印と400字コメント。掲載は到着順。末尾は観劇日時です。(編集部)

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絶対に通る! 地方劇団のフェスティバル攻略法

谷竜一(集団:歩行訓練代表)

谷竜一さん
【谷竜一さん 撮影=大脇理智】

 どもども。谷です。僕は君たちに武器を配りたい。っていいタイトルですね。でも武器より楽器。楽器よりラッキー。ラッキーも二度三度続くなら、もはやマグレではない。谷です。山口で、今もっとも調子に乗っている舞台芸術ユニット「集団:歩行訓練」(通称ほこくんちゃん)の代表です。
 今年は何故か、えだみつ演劇フェスティバル2012(「えだフェス12」)、フェスティバル/トーキョー12(「F/T12」)という日本有数の特徴的なフェスティバルに参加が決定し、全国ツアーに行くことになっています。ていうかもうやってます。いやあ、選考にあたった皆さんなかなか勇気があるなあ。
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山下残「ヘッドホンと耳の間の距離」

◎広がりゆく、コレオグラフ
 中野三希子

「ヘッドホンと耳の間の距離」公演チラシ
公演チラシ

 山下残の作品は、訳が分からない。ある程度はもう覚悟ができているので、まずは我慢する。全力なのか適当なのか分からないシーンの連続に、そろそろ何か展開があるのではないかとつい期待する。期待は裏切られて、わりと何も起きない。のに、目が離せない。何も起きていないフリをして何かが起きているからだ。そして、訳が分からないフリをして、そこで起きていることは実はまぎれもない「ダンス」なのである。そう気付いて、嬉しくなってしまう。
 『大洪水』『庭みたいなもの』に続き、STスポットと山下の3作目の協働となった『ヘッドホンと耳の間の距離』。
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さいたまゴールド・シアター「白鳥の歌」「楽屋」

◎劇場に根を張る巨木に
 木俣冬

さいたまゴールド・シアター公演チラシ

 劇場脇の通路を抜け階段を上がり、さいたま芸術劇場大ホールのステージ上に特設された劇空間に足を踏み入れると、左側の奥に複数の鏡とテーブルがあって、さいたまゴールド・シアターの俳優たちが座っている。そこがアクトスペースかと思ったら、違って、右側に階段上の客席が設置されていた。
 客席前のアクトスペースのつきあたりには、舞台裏を想像させる機材や小道具などの入った棚がいくつか並んでいた。
「こいつあしまった!」と老俳優ワシーリー・ワシーリイチ・スヴェトロヴィードフが上手からよろよろと登場し、チェーホフの短編戯曲「白鳥の歌」がはじまる。
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佐藤佐吉演劇祭2012

◎劇場の意欲と志が見える 佐藤佐吉演劇祭2012を振り返る(座談会)

 小林重幸(放送エンジニア)+齋藤理一郎(会社員)+都留由子(ワンダーランド)+大泉尚子(ワンダーランド)(発言順)

 王子小劇場が隔年で開催する佐藤佐吉演劇祭は9月で全10公演を終了しました。6月末からほぼ3ヵ月の長丁場。ワンダーランドは演劇祭の全公演をクロスレビューで取り上げました。劇評を書くセミナーで劇場提供の主な公演を取り上げたことはありますが、演劇祭の全演目を取り上げるのは初めての試みでした。その10公演をすべて見て、クロスレビューにも毎回欠かさず参加した4人に、今回の演劇祭の特徴や目立った公演、クロスレビューに参加した感想や意見などを話し合ってもらいました。進行役は、ワンダーランドの北嶋孝です。(編集部)

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