FUKAIPRODUCE羽衣「サロメvsヨカナーン」

1.オリエントの果てで、女子の二軍と男子の補欠が、へたウマ的に、オリエンタリズムのちゃぶ台をひっくりかえす(高橋英之)

初見の男: なんだ?このド下手なミュージカルもどきは?どういうつもりで、こんなのに俺を誘ったんだよ?
再見の女: ミュージカルじゃなくて、妙ージカルって、本人たちは呼んでるみたいだけどね。
初:  女があれだけでてきて、そろいも揃って…何あれ?二軍?
再:  そんなこと言ったら、男の方だって、イケメンなんか一人たりとていなかったけどね。
初:  女子が二軍で、男子が補欠ばっかりだと、もっと渋い作品になるんじゃないの、普通。ほんと、こういうのをわざわざ二回も観て、しかも、人を誘おうなんていうのは、信じられないなぁ。
再: ま、味わい深いとこもあるよ。
初: 何が味わい深いだよ。見栄えは、さておいてもさ、そのミュージカルだか、みょージカルだかしらないけど、舞台で歌をあれだけ歌うんだったら、少なくとも、もうちょっと上手くないと、あれだろ。
再: あれぇ?下手だった?あたしは、なんか面白いなぁって思ったんだけど、な。いまだに、あの妙ちくりんなメロディーが耳に残っちゃってるし。
初: それは、お前が、2回も観たからだろが。
再: そ、か、なぁ・・・
初: 例えば、さ、『Glee』ってあるじゃん?
再: あ、なんかNHKでやってるやつね。
初: 俺は、あれ、も、いまじゃ、ジャーニーとかのオリジナルよりも、『Glee』のメンバーの歌の方が断然いいよ。メルセデスとか、ま、正直ブーちゃんだけど、バリバリ歌うまいしな。カートとかも、キモいんだけども、歌がプロだろ、プロ!
再: 『Glee』と比べるのは、ちょっと可哀相ていうか、違うかもなぁ。
初: でも、こいつらも、カネとってんだろ?も、ほんと、何とかして欲しいよ。ひどいよ、これは。
再: ま、あたしも、最初観たときは、ね、そんな感じもしたんだけど。
初: けど?
再: これ、よく考えたら、やっぱり『サロメ』なんだよね。で、改めて『サロメ』の本読んだりしたら、正しくそうだなぁ…ていう気がしてきて、それで、ね、あんた誘って、来てみたわけ、よ。
初: え?これが、『サロメ』?
再: だって、『サロメ vs. ヨカナーン』でしょ?題名。
初: いや、それは、そうなんだけど。え?どこが、これ、『サロメ』なの?
再: 去年、あんた『サロメ』にハマったとか言ってなかったけ?
初: あ、多部美華子の『サロメ』だろ?新国立でやってた。あれは、そりゃ、『サロメ』さ。俺の中では、サロメってのは、ビアズリーの挿画に出て来るみたいな、妖艶なる悪女みたいなイメージがあったんだけど、多部ちゃんの清楚な少女のサロメ観て、ああ、そいうのもありだなぁ…て、感動したんだよね。
再: だから、誘ってあげたんじゃんか!あたしに感謝しなきゃ?
初: え?どこが?今日の舞台に、そもそも女子の一軍はゼロだったぞ!
再: も、まったく、あんたこそが、凡庸なヘロデ王だなぁ・・・
初: ヘロデ王?エロドじゃなくて?
再: そうよ、あたしゃ、平野啓一郎のファンなの。…て、そんな話はどうでもいいんだけど、ヘロデは、女ってのは、こーんな感じっていうステレオタイプの思い込みの塊みたいな奴よ。
初: ああ、あのサロメのとーちゃんか。
再: 正確には、継父、ね。
初: あ、それで、その継娘にいやらしーダンス踊らせて、エロい目で見つめる、エロいオッサンのことだろ?
再: ま、あんたも、負けてないけどね、エロい目って意味では…
初: でも、さ、なんで、今日のが『サロメ』だ・・て思ったわけ?
再: あんた、さ、多部未華子の観たとき、「これは、ちょっと違うサロメだなぁ」って思ったんでしょ?
初: そうだな、なんか、こう、もっと初々しい少女のサロメ?
再: で、それも、やっぱり、それも『サロメ』だった、と
初: そうだな
再: それは、なんで?
初: なんで?って・・・何?
再: なんで、あんたは、ビアズリーの妖艶なる悪女じゃなくて、多部未華子の清楚な少女をサロメだなぁと思ったか、って話よ。
初: それは、ま、そういうことは、ま、俺の経験的にもあるわなぁ・・・てことじゃないの。だいたい、カマトトぶってるお嬢様ってのが、あぶねぇ、あぶねぇ
再: ひょっとして、あたしのこと?
初: バカな?おめぇは、だいたい、おじょーさまでも、もはや少女でもないだろが。
再: 失礼ね!せっかく誘ってあげたのに。
初: で、今日のは、どこが『サロメ』だったって?
再: つまり、オリエンタリズムってことよ。
初: はぁ?オリエンタリズム?…て、ダニエル・バレンボイムのか?
再: なに、そのツボのハズし方?エドワード・サイードでしょう!
初: も、おまえは、わけがわかんねーょ、今日のがやっぱり『サロメ』だぁとか言い出したかとおもったら、なんで突然オリエンタリズムなわけ?
再: 今日の観てて、なんか、つまらなくなかった?
初: 「ヘタうま」てのは、俺の趣味じゃないからな。
再: そうじゃなくて、さ。なんか、こう、紋切型すぎるんじゃないかって。
初: おお!それは、そうだな。「肩濡れてんじゃん」「きゃん」とかって、も、いまどきの少女マンガでもそんなの出てこねーだろ。あと、モテ無さそーな感じのいかにもーな感じの男が、いかにもありがちーな感じの女に、ご都合主義的なシナリオで、いきなり口で・・・とか、ほんと、いまどきのアダルトビデオの方が、もうちょっと深みがあるよ
再: でしょ?だから、『サロメ』な、わけよ。
初: え?
再: つまり、『サロメ』に出てくるサロメは、あくまでヘロデ王の期待通りの女として眼差されるわけよ。サロメが本当はどういう女かとか、そいうのは、関係がない。あくまで、ヘロデ王のイメージの世界としての女、それがオスカー・ワイルドの『サロメ』の前半までのポイントよ。
初: つまり、エロいオッサンが、キャバクラで、いかにもありがちーな感じの女子の一軍と、どうにもありきたりーな感じの話をして、何万円もぼったくられるっていう感じの話にそっくりってこと?
再: あんた、そんなとこ行ってんの?サイテー!
初: いや、行ってないよ。行ってない。それは、も、ほら、想像の世界だよ。
再: で、ね、その、いかにもーな感じの女が、やっぱりーみたいな感じのストーリーを、演じちゃう感じがね、この作品に流れてるじゃん?
初: ま、そうだな。どこにも、おや?とかへぇ?とかいう感じの男と女のシーンがなくて、むしろ、道端の陳腐な話の連続技みたいな感じだったし、な
再: オリエントは、未知のものとの遭遇としてではなく、のっけから知られたものの「再発見」として立ち現れる・・・ま、そういうこと、よ
初: 再発見?
再: そう。だって、見る者は、何も見てなんかいないんだから。あくまで、自分の中に学識として、あるいは、耳年増の智恵として積み上がったイメージとして、見ているものに投影しているだけなんだから。
初: なるほど、・・・じゃ、多部未華子の少女版サロメは、俺のオリエンタリズムの妄想視線にピッたしだった、てか?
再: そ、「オー、ジャパンからですか、トーキョーでは、女のひとは、みんなゲイシャさんで、男の人は、みんな刀を振り回してます、スゴイところ、いってみたいでーす!」・・・みたいな、ね
初: おいおい、それじゃ、『キル・ビル』じゃねぇか!
再: ま、あれも、ま、確信犯的なオリエンタリズムだもの、ね。
初: でも、そんな、紋切型の話がズラズラ並んだ今日の作品は、・・いったい、誰のオリエンタリズムなんだ?
再: あら?それを、確認するために、あたしはもう1回観に来たんじゃない
初: あ、なるほど。で、誰だった?
再: 最初に観た時に、なんか奇妙だな…て思ってたし、家に帰って、ああ、やっぱり『サロメ』なんだぁとか、オリエンタリズムだなぁとか思い始めた時に、ね、じゃ、いったい誰がその眼差しの犯人であるヘロデ王だったんだろうか?って思い始めたわけ
初: あ!わかった!
再: そう!そうなの、よ
初: たしかに、あいつ、舞台のスクリーンに、ずっと張り付いてたなぁ
再: 気づいてみれば、あたり前すぎる話だし、今日、もう一度みてみたら、ちゃんと彼は自分で「俺が、この街の王なんです」なてセリフを言ってるじゃない、も、びっくりしちゃった、なんで、最初観たときには、こんなことに気づかなかったんだろ・・・て
初: そうか、だから、ワイルドな夜なんだな
再: そう、オスカー・ワイルドが作り出した、オリエンタリズムの眼差しをもつ男ヘロデ王は、タクシー運転手をしてたって、わけ、よ
初: それにしても、気になるのは、じゃ、この作品が『サロメ』だったとして、そのエロおやじの、オリエンタリズムのちゃぶ台をひっくり返す、ヨカナーンの首実検のシーンは、どこにいったんだ?
再: そこよ!あたしが、きょうあんたを誘って一緒に来てもらった、最大の理由は、・・・どう思う?
初: わかんねーなぁ、でも、あれじゃないの?ヨカナーンの首そのものはいらないんじゃない、別に。むしろ、そういう、ヘロデ王というか、タクシーのエロおやじの眼差しを、うろたえさせさえできれば・・
再: とすると、それが、あの、舞台に立てばいつも決まって根こそぎさらっていってしまう役者泣かせの例の歌人かぁ・・・
初: なるほどな。いや、でも、もうひとつあるんじゃないかなぁ…
再: 何?
初: それは、あまりに二軍な女子と、あまりに補欠な男子…ていう、この設定じゃないの?二軍と補欠の夫婦が、子供気にしながらラブホテル行くラブストーリーとか、なんとも、どうにも盛り上がらない!…じゃん?
再: なんじゃ、そりゃ?
初: いや、そもそも、タクシーのおやじのエロい眼差しを、寄せ付けないくらいの二軍と補欠の確信犯的にちんけな話、そして、その下手くそな歌でのちゃぶ台返し!
再: また、いうかぁ
初: お、じゃ、俺が、あいつらよりもはるーに上手い歌を聞かせてやろう!これから、カラオケ行こうぜ!
再: そりゃまた、紋切型だなぁ。
初: オリエントの果てで、女子の二軍と、男子の補欠の歌合戦…どうよ?
再: ま、あたしや、まだ一軍だけど、ね。

[観劇日: 2013年2月8日]

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