燐光群「ハシムラ東郷」

◎研究は創作であってはならないが、創作は研究からも生まれる
 松岡智子

 チラシを一見しただけでは、坂手洋二作・演出による燐光群の新作だとは気がつかなかった。そして観に行きたいとも思わなかった。白地にあっさりとモノトーンのイラストがあしらわれたチラシは地味だし、「ハシムラ東郷」という題名も地名なのだか人の名前なのだか意味不明。燐光群といえば現実の社会問題を真正面から捉えた、どちらかというと硬派な作風という印象を持っていたが、「百年前、アメリカでもっとも人気のあった日本人を、知っていますか」というキャッチコピーからは、単なる過去の人物の伝記のように思える。全然面白そうに思えなかった。料金も決して安くはないし、おそらく劇評セミナーの課題に挙げられなければ観に行かなかっただろう。でも、観劇が進むにつれ、この作品に立ち会えたことに感謝した。でも、全編夢中になって見入ったというわけではなく、正直なところ、膨大な台詞のシーンに意識が遠のいてしまうこともあった。それなのになぜか、決して良く眠れたからとかではなく、観劇後の気持ちが爽快だった。なんだか「演劇」という表現方法の自由奔放さがとても痛快だったのだ。

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リミニ・プロトコル「Cargo Tokyo-Yokohama」

◎現実と対峙する演劇
松岡智子

2009年12月2日水曜日天気は晴れ。天王洲アイル駅を地上に出て、午後の穏やかな日差しの中、出発地点となる東品川のクリスタルヨットクラブ隣接の駐車場に向かう。運河と東京湾に挟まれた倉庫街は人通りが少なく、空も都心部より広く感じられ、非日常感が増す。受付で公演プログラムと赤い荷札を受け取り、出発時刻の15時近くなってからシンプルな外装の巨大なトラックの荷台に乗り込んだ。

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