DULL-COLORED POP「夏目漱石とねこ」

◎目の前の相手に直情的表現することが苦手な表現者「漱石」、複雑な心は坊ちゃん時代から
 大和田龍夫

「夏目漱石とねこ」公演チラシ 「谷賢一」演出の演劇をいくつ見たか数えてみた。初めて見たのは2010年のサンモールスタジオでの「国道58号戦線異状ナシ」(再演)の演出以来だった。結構見ていることがわかった。Théâtre des Annales『ヌード・マウス』(2012年1月@赤坂レッドシアター)、『モリー・スウィーニー』(2011年6月@シアタートラム)、第11回公演『くろねこちゃんとベージュねこちゃん』(2012年3月)、第12回公演『完全版・人間失格』(2012年11月)、「俺とあがさと彬と酒と」(2012年12月)、第13回本公演『アクアリウム』(2013年11月)、第14回本公演『音楽劇・河童』、「証明/Proof」(2012年6月)(2014年5月)、Théâtre des Annales vol.2『従軍中の若き哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン…(中略)…の事実にまつわる物語』(注)(2013年3月)、「最後の精神分析 フロイトvsルイス」(2013年10月)、Théâtre des Annales vol.3「トーキョート・スラム・エンジェズルズ」(2014年11月)。随分と観てきたものだ。
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彩の国さいたま芸術劇場/ホリプロ「わたしを離さないで」

◎大きな芝居を小さな劇場で上演したら、小さな劇場で上演された芝居を大きな劇場で上演したらと妄想しながら
 大和田龍夫

never_let_me_go0a 彩の国さいたま芸術劇場は開館して20年。新国立劇場中劇場、神奈川芸術劇場より長い歴史を持つ有数の大劇場だということに少し驚きをもって会場に向かった。実はこの演劇チケットを買ったのは「農業少女」で好演した多部未華子が脳裏から離れなかったからと、倉持裕脚本であることがその理由。蜷川演出、カズオ・イシグロ原作にはあまり惹かれてはいなかった(というよりはその事実をヒシヒシと感じたのは会場に着いてからだった)。
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muro式「グラフ~その式を、グラフで表しなさい、~」

◎器用な客演役者と不器用な主演・演出・脚本家による3つのコント
  大和田龍夫

「グラフ」公演チラシ
「グラフ」公演チラシ

 着々と大きな劇場に移っていくmuro式。第1回は見ることができなかったが(チケットは買っていた)、第2回以降、欠かさず見に行くようにしている。今回で初回から4年が過ぎているとのことで、それなりの回をこなしているようだ。ムロツヨシなる役者の存在を知ったのは映画「サマータイムマシン・ブルース」だった。しばらくの間「ヨーロッパ企画」出身の役者だと勘違いしていた(それほど、当時は違和感がなかったというか、個性が薄かったというか)、次第にムロツヨシの存在は、濃いのか、薄いのかよくわからない謎というか、異様な役者という実感を持つようになっていた。
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ギンギラ太陽’s 「翼をくださいっ!さらばYS-11」

◎3つの仕掛けは東京地方公演を福岡にいる気分にさせてくれた
大和田龍夫(大学講師)

「翼をくださいっ!さらばYS-11」公演2005年の再演となったこの芝居には、普通の芝居に慣れた者には意表をつく3つの仕掛けが待ち受けていたのである。

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プロペラ犬「マイルドにしぬ」

◎「死」をテーマにした連作コント集 持ち味出した水野美紀と河原雅彦
大和田建夫(大学講師)

「マイルドにしぬ」公演チラシテレビから舞台へその活躍の場を変えてきた水野美紀が脚本家と演劇ユニットを立ち上げたという不思議な舞台を見る機会に恵まれた。テレビタレントが様々なサイドビジネスをする例はあれども、テレビタレントがお金を儲けると副業としてレストラン経営などをする人が多いそうで、それをとあるタレントは、そんなノウハウも経験もないことに手を出すくらいなら、映画監督をやった方がまだ似たジャンルのことをやっているのだから、許されてもいいのではないか?というようなことを言っていたのを思い出した。

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ペンギンプルペイルパイルズ「ゆらめき」

◎妄想を増大させ狂気の階段を昇る
大和田龍夫(大学講師)

「ゆらめき」公演チラシマンションの一室で、まるで田舎の寄合所であるかのようなにぎやかな家庭で繰り広げられる「永年の友人」と「知り合ったばかりの友人」が夫婦に降り注ぐ些細な事件を大きな妄想により大事件に拡大させている、まさに、狂気の階段を昇っていく2時間の舞台であった。

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