「ヤン・リーピンのシャングリラ」

◎滅びゆくものは美しく、喪われたものだから懐かしい
文月菖蒲(古書・骨董研究家)

「ヤン・リーピンのシャングリラ」公演チラシ東京渋谷のBunkamuraで『ヤン・リーピンのシャングリラ』は喝采をもって迎えられた。同時期、チベットでは2008年3月10日から始まったデブン寺の僧によるデモを発端として大規模な暴動が発生し、中国政府への抗議活動と中国政府による鎮圧行動が続いている。華やかな祭典、北京オリンピックを目前に控え、中国における少数民族のあり方が改めて注目されている。それは中国が大国だからこそ人道的であるべきだという理論よりも、アメリカを中心とした近代感覚が無意識に抱いている、文化・歴史への強い憧憬に近い。

“「ヤン・リーピンのシャングリラ」” の続きを読む

ジェットラグプロデュース「投げられやす~い石」

◎お前の頭の中にある俺は、俺ではない 才能をめぐる残酷な物語
文月菖蒲(古書・骨董研究家)

「投げられやす~い石」公演チラシこれは「才能を傍でみているもの」の物語だ。
かつて天才ともてはやされ、美大生「山田」の憧れだった級友「佐藤」は失踪から2年、変わり果てた姿を見せる。「佐藤」の元カノで今は「山田」と結婚している「美紀」をまじえ、才能を失ったもの、才能が元からなかったもの、才能を愛したものという三様の人間を描き、岩井秀人(作・演出・主演/ハイバイ)は残酷な物語を作り上げた。

“ジェットラグプロデュース「投げられやす~い石」” の続きを読む