◎消費社会揶揄する自己物語
風間信孝
この劇の作・演出をしている鈴木アツトは、奇天烈な発想をするやつだ、と評者はつくづく思った。評者は、劇団印象の舞台を観るのは、これで3度目である。初めて観たのは、夢の中に本を食べる虫が登場する『枕闇』。次は、言葉を話し、二足歩行をするイルカが出てくる『青鬼』(再演)。そして、今回は、父親が子供を産む『父産』(再演)。劇団印象の特色は、現実のルールを無視してもかまわない小劇場演劇においては、ありふれたものである。しかし、鈴木アツトは、それだけでは終わらない。「演劇は世界を映す鏡である」とは、シェークスピアの言葉だと評者は記憶しているが、この劇は、現代日本社会のリアリティを見事に映し出していると感じ取った。そして、「父親とは何か」という父親自身にとっての永遠のテーマを、現代日本社会に生きる観客に問いかける作品だった。