バック・トゥ・バック・シアター「ガネーシャVS. 第三帝国」

◎問われる境界と私たちの慣性―演劇、障害、好奇、当事者性を架橋するメタシアター
 水谷みつる

 アイディアは、そして作品は、誰のものか? 誰が意見を言い、誰が決定を下すのか? そこにあるのは支配と搾取なのか? 彼らは演じさせられているのか? 演じているのか? そもそも演じるとは何か? リアルとは? フィクションとは? 稽古場で起こる本気のぶつかり合いが台本に組み込まれ、繰り返し演じられる時、その演技は「リアル」なのか? 「障害者」「健常者」とどちらも一括りにされがちな人々のなかに否応なく存在する多様性/差異は、グループの関係性に何をもたらすのか? 「できる」「できない」が両極とそのあいだのリニアなグラデーションではなく、複雑に絡み合い、時に反転さえするものだとしたら、互いの役割もまた揺らぎ、交換され、共有されるものではないのか? そして、それら一部始終をあちら側で見ている観客こそが、好奇の目で覗き見し、果実を掠め取っていく簒奪者ではないのか? いや、それとも…?
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