忘れられない一冊、伝えたい一冊 第32回

◎「後宮小説」(酒見賢一著、新潮社)
 玉山悟

【「後宮小説」表紙・玉山さん蔵書】
【「後宮小説」表紙・玉山さん蔵書】

 「忘れられない一冊」という企画ですが、私は演劇の本はあまり読んでなくて、読んでも全部忘れてしまうので、「忘れられない一冊」って実はないんですよね(笑)。私の「忘れられない一冊」は酒見賢一のデビュー作「後宮小説」です。酒見賢一は好きですね。全作品初版で持ってるんじゃないかな。「後宮小説」に至っては、3冊持っているんです。最初に手に入れた単行本が6刷りで、初版が欲しくて古本屋を6年も探してようやく手に入れました。それに文庫本。合わせて3冊持ってます。

 酒見賢一の好きなところは、非常に博識なところと、文章が格調高くて美しいところ、作品の設定の面白さですかね。ただ、すごく寡作な作家なので、新作を待っている読者は読むものがなくて。単行本を持っているのに、文庫本あとがきが読みたくて文庫本も買ってしまうみたいなところがあります(笑)。
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