ひょっとこ乱舞「うれしい悲鳴」

◎ネタ・シアターの限界と、戯曲の寿命(第1回)
 堤広志

●「ひょっとこ乱舞」は、常に“気がかり”な劇団だった

「うれしい悲鳴」公演チラシ
「うれしい悲鳴」公演チラシ
宣伝美術=山代政一

 ひょっとこ乱舞という劇団は、私にとって常に“気がかり”な存在だった。
 “気がかり”というのは、他の多くの若手小劇団に対して抱くような“心配”とはまた別種の懸念といっていいかもしれない。実際、小劇場演劇に接していると、将来を期待したくなるような才能が感じられず、突出した舞台成果も見受けられないために、「この人たちはこんなことをしていて大丈夫なのだろうか!?」「もっとこうした方が良いのではないだろうか?」といった老婆心が湧き起こることが往々にしてある。
 その一方で、このままそうした人たちの活動にオブザーバーとして付き合いながらも、無為に自分の人生の貴重な時間を浪費するような生活を送っていて、はたして割に合うのか、無駄なのではないかと思わされることも少なくない。
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ピエール・リガル「プ・レ・ス」第3回

◎閉塞空間をリアルな身体で生きる ユーモアを意識的に導入して
堤広志

Shizuoka春の芸術祭2009プログラム表紙●異色の振付家ピエール・リガル

ビエール・リガル(Pierre Rigal)は、ここ数年で一躍世界的に注目されるようになったアーティストである。1973年南フランス・トゥールーズ近郊に生まれ、陸上競技の400m走ならびに400mハードルのアスリートとして活躍した後、バルセロナ大学で数理経済学を、トゥールーズのオーディオ・ビジュアル・スクールで映画製作を学んだという異色の経歴を持つ。

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ピエール・リガル「プ・レ・ス」(第2回)

「ダンス」や「アート」の概念を揺さぶる
堤広志

●「演劇」か「ダンス」か、それが問題か!?

「今どきのコンテンポラリー・ダンスはどうなっているの!?」という問いかけの裏には、「なぜ、これがダンスなの?」「どこがダンスとして評価できるの?」という疑問があるように思う。それだけ現在のコンテンポラリー・ダンスと呼ばれている表現は多種多様であり、一般的なダンスの概念からは乖離してみえるようなものが数多くあるということなのだろう。

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ピエール・リガル「プ・レ・ス」(第1回)

◎「寛容のオルギア」があぶり出したのは コンテンポラリー・ダンスは今  堤広志 ●まずはヤン・ファーブル『寛容のオルギア』評判記  「今どきのコンテンポラリー・ダンスはどうなっているの?!」。最近こうした質問をよく受ける … “ピエール・リガル「プ・レ・ス」(第1回)” の続きを読む

◎「寛容のオルギア」があぶり出したのは コンテンポラリー・ダンスは今
 堤広志

●まずはヤン・ファーブル『寛容のオルギア』評判記

 「今どきのコンテンポラリー・ダンスはどうなっているの?!」。最近こうした質問をよく受ける。実は本稿も同様の執筆依頼による。そのため、本題であるビエール・リガル振付・出演『プ・レ・ス』(※1)の舞台評に入る前に、その前提となっている「今どきのコンテンポラリー・ダンス」をわかりやすく把握できるような例示と概説に大半を割くことにした。また長話になるが、お付き合い願いたい。

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らくだ工務店「幸せのタネ」(下)

3.「ポスト静かな演劇」の表現的冒険
堤広志(演劇・舞踊ジャーナリスト)

「幸せのタネ」公演チラシ●「上演」への評価
公演に参加できなくなった劇団員たちに替えて、他劇団から多くの客演を頼んだ『幸せのタネ』。長年培ってきたアンサンブルの妙味が崩れるのではないかといった傍目の心配をよそに、舞台は成功裡に終わった。また、劇団としてのこの大きな転換点は、結果的に俳優の資質を活かす石曽根の演出家としてのセンスを証明するに充分な機会ともなった。

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らくだ工務店「幸せのタネ」(中)

2. 転換点となった『幸せのタネ』
堤広志(演劇・舞踊ジャーナリスト)

「幸せのタネ」公演チラシ●岐路に立った劇団
ナチュラルな演技に基づいた絶妙なアンサンブルにより、インティメート(親密)な空気感を醸し出す。らくだ工務店が、そうした「アンティミスト(親密派)」な傾向を持つ劇団であるということを前章で書いた。そして、その表現は石曽根有也の「日常」を優しく活写しようとする戯曲と、緻密にして厳格な演出、それに応える劇団員たちの不断の努力があって、初めて成立するものであると思われた。

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らくだ工務店「幸せのタネ」(上)

1.「静かな演劇」とらくだ工務店
堤広志(演劇・舞踊ジャーナリスト)

「幸せのタネ」公演チラシ●変節の年だった2006年
昨年(2006年)は、小劇場界にとって変節の年だったのではないかと私は考えている。それは奇しくも若手劇団の登竜門である二つのフェスティバル-パルテノン多摩小劇場フェスティバルとガーディアン・ガーデン演劇フェスティバル(GGフェス)-が、ともに休止となったことに象徴されるだろう。一般的には無名に近い若手の小劇団が知名度や評価を獲得していく上で、こうしたフェスティバルはとても重要な機会である。しかし、そのステップアップのための檜舞台も、経済不況からくる劇場施設の移譲や方針転換から、近年は減少傾向にある。こどもの城「青山演劇フェスティバル」、グローブ座「春のフェスティバル」、新宿シアターサンモール「コマーシャル・サーカス」等が次々と開催を取り止め、最後まで残っていたこの二つのフェスティバルも、今また休止に至ってしまった。

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