◎表面張力への一滴 ―「アンティゴネーへの旅の記録とその上演」と福島―
前田愛実
フェスティバル・トーキョー(F/T)2012の主催プログラム、マレビトの会(代表:松田正隆)による『アンティゴネーへの旅の記録とその上演』は、第一の上演と第二の上演から構成された作品である。
第一の上演では、ある架空の劇団「パトリオット劇場」が福島で一人の盲目の観客のためにギリシャ悲劇『アンティゴネー』を上演するという物語が、ブログやツイッターなどのSNSや動画を使ってウェブ上に配信されたのだが、SNS上では、パトリオット劇場の主宰や俳優を中心とする、登場人物たちの日常や生活などが書き込まれていた。つまりこの期間、物語の中の人間たちがSNSを介して現実に紛れ、この世界に生存していた(ツイッターでいうならサザエさんbot的に)というわけだが、それらを読むことで、三カ月ほどの間オンライン上で『アンティゴネーへの旅の記録とその上演』の一部が上演されていたということでもある。
また「パトリオット劇場」をめぐる様々な「出来事」の告知もされ、地図を手掛かりにその現場に立ち会うことも可能だった。
このような形で、第一の上演は8月から11月まで行われ、観劇を予定している観客は、あらかじめ第一の上演を見てから来場することがオススメされていた。
“マレビトの会「アンティゴネーへの旅の記録とその上演」” の続きを読む