パルコ・プロデュース公演「90ミニッツ」

◎葛藤と沈黙と、揺さぶられる心
 永岡幸子

「90ミニッツ」 公演チラシ
「90ミニッツ」 公演チラシ

 あれは砂?
 砂時計?
 いや、違う。水だ。

 芝居が始まると、舞台前方中央から、ひとすじの糸のようなものが落ちてきた。途切れそうで途切れない、か細い糸が舞台上の床へと落ち続ける。
 照明がつく直前に鳴っていた効果音が時計の秒針音だったところから咄嗟に砂時計を連想し、これから90分間という時を刻む砂が降っているのかなと思ったのだが、役者二人が台詞を発せず沈黙がうまれた瞬間、水の流れる冷ややかな音が耳に飛び込んできた。舞台装置の一環として本物の水を使用すること自体は珍しくはない。池や水路に見立てて水を張る、大雨が降り注ぐといった使われ方はしばしば見かける。しかし、このように流れ落ちる水を見たのは恐らく初めてだ。そして、この水が生む効果に、終盤わたしは吃驚することになる。
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