東京デスロック「モラトリアム」

◎観察者(遊歩者)たちの8時間
 藤原ちから

 東京デスロックの新作『シンポジウム』(2013.7)に出演することになった。舞台を観て批評を書くはずの人間が、その舞台に立ってしまうということに、ある一線を超えていくというか、未知の領域へとわたっていく感覚もあり、今からとても楽しみなのだが、その前に、ずっとくすぶっていた宿題を終わらせようと思う。
 それは、ほぼ1年前に上演された『モラトリアム』について書くこと。8時間にも及んだあの作品を体験して以来、どうやらわたしの中には、何かそれまでにない感覚が芽生えているらしい。その正体に迫ってみたいと思った。
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渡辺美帆子企画展「点にまつわるあらゆる線」(青年団若手自主企画)

◎彼女のすべてを見尽くすことはできない-展示空間を食い破る演劇のトリガー
 藤原ちから/プルサーマル・フジコ

「点にまつわるあらゆる線」チラシ
企画展チラシ

■「記憶/記録」の罠

 今この瞬間にもたくさんの作品が生み出されているが、たとえ優れたものであっても、たまたま良き理解者に恵まれなかったがゆえに埋もれてしまうことはある。タイムラインは今や、消費と忘却のストリームを形成している。それが果たして、作り手たちの渾身の作品の味方をしてくれるのかどうか、定かではない。だがそれでも「それ」は確かにあったのだ!、と思うからこそ、その存在証明をアーカイブとして書き残すこと。それが劇評の主たる使命だと考えてきた。
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青年団「ソウル市民 五部作」

◎耽溺と覚醒? 〈唄〉をめぐるアンビヴァレンス
 プルサーマル・フジコ/藤原ちから

 生まれる土地を選ぶことはできないけども、生きていく土地を選ぶことならできる。そう思いつつも、実際はそう簡単に移住できるものではないけどねー、とゆう実感は今では広く共有されつつあるのではないだろか。仮にえいやっと思いきって新天地を求めたところで、いろんな摩擦に晒されるのは避けられない。ぬぐえない。泥まみれの人生だ。おまけにそこに放射能まで加わっている。

 2011年、移民とゆう選択肢はわたし(たち)にもそれなりにリアルなものとして突きつけられた。その壊滅的な年の秋に、〈ソウル市民五部作〉は2本の新作を含む一挙上演とゆう形で東京・吉祥寺シアターでお披露目となった。ある意味、移民の話である。日本列島本土を離れてソウルに移り住んだ豪商・篠崎家を数世代にわたって描いた歴史クロニクル。いつもの青年団の芝居と同じくただ日常が進行し、特に大事件が起きるわけでもないのだが、手品師や臆病な相撲取り、はたまた偽・看護婦や偽・ヒトラーユーゲントまでもが次々やってくるので、篠崎家の女中たちはお茶を出すのに大忙し、てんやわんやとなっている。
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二騎の会「四番倉庫」

◎《チャーミング》の転がる展示空間
 プルサーマル・フジコ

「四番倉庫」公演チラシ 演出の多田淳之介は当日パンフに「チャーミングであるという事はどういう事なのか」と書いている。その問いに対して、なんといってもまず見た目? 仕草、声、匂い、それに価値観とか特異な経験に惹かれたりもするし、やっぱりお金や地位や権力も勘定には入れておきたい、人間だものね。……などと仮に考えてみて、しかし、要素をいくら列挙してみてもたどり着けないのが《チャーミング》ではないか、とか。

 本稿では、二騎の会『四番倉庫』におけるこの《チャーミング》を視野に入れながら、この作品が試みようとしたチャレンジについて考える。そして観客の新しい《消費》の仕方や、劇場の捉え方についても思考実験してみたい。
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マームとジプシー「コドモもももも、森んなか」

◎コドモたちの《祈り》が織りなすタペストリー
 プルサーマル・フジコ

「コドモもももも、森んなか」公演チラシ マームとジプシー、そして主宰で作・演出の藤田貴大の名前は、リフレインを特徴とする優れたテクニックを持った気鋭のカンパニー/演出家として知られつつあるけれど、のみならず、戯曲・演出・組織のつくり方といった点で彼らが「演劇」の多くを更新していることはそろそろ認知されてもよい頃合いだと思う。今回の『コドモもももも、森んなか』の再演で〈コドモ・シリーズ〉とも呼べる彼らの一連の作品群もひとまずの完結を見たし、これから未踏の領域に進んでいく節目ともいえる今、マームとジプシーのこの1年の歩みを振り返りつつ、『コドモ』再演にあたって取り組まれたこと、そして藤田貴大の知られざる演出・戯曲の特徴など、できるだけ過不足なく記述していきたい。
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ほうほう堂×DJs(佐々木敦、大谷能生)

◎《官能》と《多様性》の夜にその《現象》を目撃する
 プルサーマル・フジコ

身長155cmのダンス・デュオ・グループほうほう堂(新鋪美佳+福留麻里)は神出鬼没な妖精、もしくはオリーブ少女的な小動物のようにキュートな動きでどんな空間でも味方につけてしまう。3月はカフェで。4月はジャンボサボテンと。5月は斜面をごろごろ転がり、6月は砂丘で飛び跳ねる。7月は下北沢の「開かずの踏切」横にあるスーパーマーケット・オオゼキのエレベーターで昇降して電車が過ぎると消えてしまった。

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シアターKASSAIオープン企画「ON THE WAY HOME」(久間勝彦作、黒澤世莉演出)

◎人が月に行く時代に《共振》する
プルサーマル・フジコ
「ON THE WAY HOME」公演チラシ
池袋の繁華街の果てに小さな劇場・シアターKASSAIが誕生した。こけら落とし公演は、久間勝彦氏の戯曲『ON THE WAY HOME』を4人の演出家が順繰りに演出する連続企画公演である。そのトップバッターを務めたのが、今回取り上げる黒澤世莉(時間堂)だ。

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ワンダーランド200号記念鼎談「2010年、超新星は小劇場を更新するか?」(後半)

徳永京子(演劇ジャーナリスト)× 藤原ちから(編集者)× 日夏ユタカ(ライター) (発言順)

■イケメンと可愛い女の子が小劇場を変える?

徳永京子さん徳永 いきなり余談なんですけど、昔、ある演劇の本の帯に載っていた著者の顔写真にがっかりしたことがあって。もしそれが、表が三浦大輔で裏が多田淳之介だったら…(笑)。「演劇、いいかも?」って思った人は確実に増えるのにとその時は思いました。

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ワンダーランド200号記念鼎談「2010年、超新星は小劇場を更新するか?」(前半)

徳永京子(演劇ジャーナリスト)× 藤原ちから(編集者)× 日夏ユタカ(ライター) (発言順)

ロロ「旅、旅旅」公演チラシ■今回取り上げる劇団・作品
ロロ旅、旅旅』作・演出:三浦直之 @王子小劇場
マームとジプシー『しゃぼんのころ』作・演出:藤田貴大 @STスポット
バナナ学園純情乙女組『アタシが一番愛してる』作:月並ハイジ 演出:二階堂瞳子 @ART THEATERかもめ座
ジエン社『クセナキスキス』作・演出:作者本介 @日暮里d倉庫

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鰰「動け! 人間!」

◎肯定と否定のあいだのあいだで半魚人は愛を叫ぶ
プルサーマル・フジコ

似ている……と安易に喩えるのは失礼で怠慢だけども、鰰の『動け! 人間!』を正面から語るのは難しいのでまずは迂回して搦め手から攻めてみる。長い旅になりそうだけどお付き合いいただきたい。

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