◎「嘘言うなー!」(ぜひ京都弁のイントネーションで)
都留由子

もう一度見たい舞台を挙げるときりがない。孝夫・玉三郎の「桜姫東文章」、スウェーデンの劇団(名前を忘れてしまった)の「小さな紳士の話」、デンマークのボートシアター「フルーエン」、五期会の「そよそよ族の叛乱」、プロメテの「広島に原爆を落とす日」。どの作品も、いくつかの場面が鮮やかに目の前に浮かぶ。
が、ひとつ、具体的な場面はほとんど覚えていないのに、もう一度見たい作品がある。1980年に京都のどこかの小学校の体育館で見た、劇団風の子の作品「2+3」だ。
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「カタルシス」という言葉がある。学生時代、習ったのによくわからなかったこの言葉の意味を、あ、これか、と思ったのは、ミュージカル『コーラスライン』を見たときだった。まぶしいステージのダンスナンバーを見終わって席を立ったとき、やっぱりダンスにはカタルシスがあるね、と後ろの席から声が聞こえた。ああ、この快感がカタルシスなんだ! 本当にそれが正しいのかどうか、実は今でもわからないのだが、しかし、筆者の中では、ダンスを見る快楽とカタルシスという言葉はこのとき結びついてしまった。生身の人間の身体が動く。シンプルなそのことの、ぐいと心をつかむこの力の強さはどうだろう。それ以来、筆者にとってダンサーや振付家は、カタルシスをもたらすという特別な力を持った、神様に祝福された人になった。