ココロノキンセンアワー演劇部「カレー屋の女」

◎新聞紙で作る竈に無言の想い
 西村博子

currywomen0a 公演後毎回催されたアフタートーク「3.11後の演劇を語る」で、公務の傍ら観劇歴30年という佐々木久善氏から仙台をはじめ東日本の様子を聞くことができた。
 それによると大震災を描いた作品は非常に多く、あまり多いので暫く自粛しようよと話し合った演劇コンクールさえあったほどという。佐々木氏は高校演劇の審査員もされているのだが、それでも、津波で亡くなった生徒をモチーフにした宮城県名取北高校の「好きにならずにはいられない」が東北地区の最優秀賞に選ばれ、昨年(2013年)10月に長崎で開かれた第59回全国高等学校演劇大会に出場し、優良賞に選ばれたと。

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演戯団コリペ「Floor in Attic 屋根裏の床を掻き毟る男たち」

◎歴史や伝統見る目も
 西村博子

 久しぶりに“演戯”を堪能した。狭く、今にもずり落ちてしまいそうに床も壁も傾いた屋根裏部屋(美術李潤澤)。そこに働くことを拒んで住んでいる、ボス格の男1(金哲永)と、折あらば取って代わろうとする男2(洪旻秀)、強い方にゴマをすり少しでも得しようとする男3(趙承熙)、何かというと殴られいじめられる男4(金鎬尹)。それに、近所のバーの女で、のち床下の木の根から出現してくる、この家を代々護ってきたオモニのような女神(金志炫)に、ジャンジャン麺の出前(千石琦)。一人ひとりが見ていてほんと楽しく、ゲネと二日目と三日目、3回見ても見飽きなかった。リアルを基調とした男4人の真剣な、だからこそ笑えてしまう演技に対して、麺を配達してきた出前・千石琦の、次第に大きくなっていく身振りは、何と言ったらいいだろう、歌舞伎の荒事みたいに様式化されていて、岡持ちにふんぞり返って大仰に読み上げる注文メモなど、まるで、家取り壊しの強制執行言い渡しだった。
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サーカス劇場「カラス」

◎底の底の願いを掬い上げてくれ 利口で美しいカラスを脳裏に
西村博子

「カラス」公演チラシ舞台は東京のどこかのガード下。壁に手の跡、人影などいろんなシミや落書きがある。と、いきなりバイクが突っ走り、元男性のカラスおばさんが廃棄物いっぱいの自転車押しながら出てきて歌い出す。

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劇団印象「青鬼」(再演版)

◎「妻の愛情物語」ではもったいない とびぬけた舞台になったけど
西村博子

「青鬼」(再演版)公演チラシこの4月2日、ある劇評セミナーの帰り、途中まで地下鉄をごいっしょした劇団印象のプロデューサーまつながかよこさん。あの日「愛の物語になっちゃったね」とひとこと言って私は帰ったという。横浜相鉄本多劇場の「青鬼」を見せてもらった日のことである(2009年3月21日所見)。その作・演出鈴木厚人さんもいっしょだったので自称び探検隊長の私はヤッホー!(二本の指でV字作って)のご満悦だった。

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劇団青羽「足跡のなかで」

◎「私たち」を描く申し分ない同時代劇
西村博子

劇団青羽「足跡のなかで」公演チラシ舞台の冒頭、憂いを含んだピアノ曲。そのリズムに乗って町の人々が列をなしてソ、ソ、ソ、そ、そ、そと、やや漫画チックに走りこんで来て舞台後方や両袖、それぞれ所定の位置につく。と、つづいて青格子のシャツ、スラリと背の高い、ちょっと憂いを含んで美しい青年(李憲在)が中央の小さな空き家、米屋という看板のある廃屋にすうっと立つ。これはイクゾ!と思った。そしてその予感はみごとに的中した。

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仏団観音びらき「蓮池極楽ランド」

◎シリアスと愉快な笑いが快調に
西村博子(アリスフェスティバル・プロデューサー)

「蓮池極楽ランド」公演チラシ楽屋風景か、青年がひとり客入り前から黙々と化粧をし青い着ぐるみに着替え、被り物をし、どらえもんになっていった。と、チャーミングな赤鬼-女装なのだが、それがとってもよく似合う-が出てきて、あなたはどんな罪を犯してきた? どこから来たの? そう静岡、でも可哀想、あなたはもうこの地獄から帰れないわよと脅しをかけるなど、いかにも大阪らしい〝客いじり〟となり、そして見る間にキャラクターたちの総出演、極楽ランドのショー。客席から引きずり?出されたおじさんもいっしょになんまいだ、なんまいだのダンスとなり、蜘蛛の糸の這い上がり争いとなっていく……ラクに見た舞台は、シリアスと愉快な笑いが入り混じりながら快調に始まっていった。

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DULL-COLORED POP 「セシウムベリー・ジャム」

◎使いも来ない「ゴドー待ち」 チェルノブイリ近郊の村で
西村博子(アリスフェスティバル・プロデューサー)

「セシウムベリー・ジャム」公演チラシ見たかった回が満席とのことでその次の回まで待った。出てきた二人の友だちにどうだった?と聞いたら、とても面白かったというのと、ウ~ン長すぎ、詰めすぎみたいというのと。
私はさてどっちだろう? 友だちの鑑賞眼チェック(失礼!)も含めて期待は倍加。そしてその結果は-文句なく前者だった。

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劇団印象「父産」(とうさん)

◎思い切ってぶっ飛んだ、演劇常識に挑戦するみごとな爆笑劇
西村博子(アリスフェスティバル・プロデューサー)

劇団印象「父産」公演チラシ芝居は水ものとはよく聞くことばだが、ほんとにその通りだなあと改めて思った。鈴木厚人作・演出の「父産」を初め見た日、随所で客席に笑いが起こり、終わると熱い拍手が長く続いた。私もいっしょうけんめい拍手。口笛うまく吹けなくてカーテンコールに呼び出せなかったのが残念なほどだった。が、ラクは、周りから時々クスッと忍び笑いが聞こえるぐらい。同じように好感持った大きな拍手で終わったが、思いなしか、笑いを含んだというより、メッセージ受け取りましたといった感じの、マジメ拍手だった。ラクの方がセリフ噛む人もほとんどなく、舞台は遥かに分かりやすくなっていたのに、である。ラクに向ってどんどん盛り上がっていく……はずなのに!? ほんの一呼吸ずつのテンポの遅れか? それとも客席にまでビンビン伝わってきた、あれはあまりに真面目な俳優たちの緊張感のせいだったろうか? その点だけ惜しかった。

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楠美津香ひとりシェークスピア「超訳 ヘンリー六世 Part1」

◎忘れていた記憶が蘇ってくる面白さ
西村博子(アリスフェスティバル・プロデューサー)

「超訳 ヘンリー六世」公演「ひとりシェークスピアを見てみませんか?」-Kさんからお誘いをいただいたとき、エエッ?? そんなことできるのオ?と驚いた。大体がシェークスピアはもう沢山!の食傷気味。よっぽどでないと動かないぞと思ってる私のこと。おまけに行き先は北千住とか。JRの路線地図を眺めたら、うちから軽く1時間半はかかりそう。もし誘ってくれた人がKさんでなければ、そしてもしも出しものがシェークスピアのいわば処女作、日本じゃ見たことない「ヘンリー六世(第1部)」でなかったら、決して行かなかったにちがいない。

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DULL-COLORED POP「ベツレヘム精神病院」

「ベツレヘム精神病院」公演チラシ以前の「新劇」で言えば開幕を告げるベル。オルタネイテイブ演劇でいえば携帯は~、場内の飲食は~などと開幕前に言うお決まりの諸注意。これぐらいキライなものはない。とくに「新劇」の芸術至上や教養主義に背を向けたはずの後者の場合、劇場への配慮かも知れないけど、そんなことぐちゃぐちゃ言ってないで、もし迷惑な人がいたら周りの客がシーッとその人を睨むぐらいの芝居すりゃいいのにと内心いつも思ってた。ところが谷賢一作・演出の「ベツレヘム精神病院」。まあいちおう、制作のひとが前に出て何かそんなことも言っていたようだけど、そんなことお構いなしに、同時進行で白衣の医者が舞台を横切り職員が出てきて芝居はどんどん始まっていく。お、すっごくいいセンス!と初っぱなから期待が膨らんだ。

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