連載「もう一度見たい舞台」第9回ねずみの三銃士「鈍獣」

◎舞台は記憶をつれて
 稲垣貴俊

 はじめて歩く大阪・梅田の街では、その風景は実際よりもはるかに美しく映り、またその喧騒もどこか心地良く聴こえたものでした。
 2004年夏、15歳の私は、実家のある三重県から、初めて舞台を観るためだけに大阪を訪れていました。ある日、テレビ番組で知ったある舞台のために大阪に行きたいといいだした私に、さぞ両親は困ったことでしょう。話し合いの結果、当日は父との短い大阪旅行になりました。もっとも父は、他に行きたいところがあったようですが…。
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