◎根こそぎにされた存在の遍歴と出会い
チンツィア・コデン
1ヵ月以上前に観劇した鵺的の「丘の上、ただひとつの家」(高木登作・演出)を振り返って、ジョン・レノンの「マザー」(1970)の歌詞を台本の骨組に照らし合わせてみると、その歌詞の背景に存在しうる人間の心境が、鵺的の上演から浮かび上がってくるように思った。
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小劇場レビューマガジン
◎根こそぎにされた存在の遍歴と出会い
チンツィア・コデン
1ヵ月以上前に観劇した鵺的の「丘の上、ただひとつの家」(高木登作・演出)を振り返って、ジョン・レノンの「マザー」(1970)の歌詞を台本の骨組に照らし合わせてみると、その歌詞の背景に存在しうる人間の心境が、鵺的の上演から浮かび上がってくるように思った。
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◎歴史に向き合う自然な演技
(鼎談)芦沢みどり(戯曲翻訳)、チンツィア・コデン(演劇研究)、北嶋孝(編集部)
北嶋 今年は第一次世界大戦の引き金になったサラエヴォ事件からちょうど100年になります。1914年6月28日、当時オーストリア=ハンガリー帝国に併合されていたボスニアの都市サラエヴォで、オーストリアの皇太子夫妻が暗殺されました。犯行グループの青年たちをセルビアが支援したとみたオーストリアは7月28日に宣戦布告。それがドイツやロシア、フランス、イギリスなどを巻き込んだ戦争に発展しました。
劇団チョコレートケーキの「サラエヴォの黒い手」公演はこの史実に正面から取り組みました。過去の公演では、第一次世界大戦後から第二次大戦にかけて、主にドイツで起きた歴史にスポットを当てた舞台が続いていました。今回はその源流をたどる趣もあります。
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◎嫌な男たち、抗わない女たち
チンツィア・コデン × 北嶋孝(対談)
「この世の楽園」ではない
北嶋 公演の率直な印象はいかがでしたか。
コデン タイトルが気になりました。「この世の楽園」でしょう。文字通りの「楽園」はどこにもないし、登場人物の会話にも楽園のような雰囲気は出てこない。見終わってどういう関係があるのかと考えました。
北嶋 そうですね。楽園ではないことは間違いありません。あんな緊張関係に満ちた「楽園」には暮らしたくない(笑)。地獄だとは思いませんが、登場する3人の男女はともに薄ら寒い関係だったので、むしろ皮肉っぽいし、反語的な意味が強いのではないでしょうか。高木さんの作品は案外意味のこもった強いタイトルを付けますね。鵺的の1回公演「暗黒地帯」も、文字通り「暗黒」が塗り込められているような世界が露出しました。その後は「不滅」「カップルズ」「荒野1/7」と続きます。小細工なしですね。
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