◎東ヨーロッパに「やってきたゴドー」
ラモーナ・ツァラヌ
別役実作『やってきたゴドー』公演(K. Kiyama演出、名取事務所プロデュース)は今年6月前半、モルドヴァ共和国のキシナウ、ルーマニアのシビウとブカレストで上演された。この作品は2007年が初演で、それ以来内外で数多く上演された。海外公演はアイルランドのベケット演劇祭をはじめ、フランス、ドイツ、ロシアなどで回を重ねた。
『やってきたゴドー』は、ベケットの『ゴドーを待ちながら』の内容を踏まえて作られ、原作に登場する人物―ウラジーミル、エストラゴン、ラッキー、ポゾー、少年―がそのままこの舞台にも登場する。そのうえ、ゴドーにまつわる不条理的な設定がさらに進展する。何よりもまず、ベケットの原作で待ちに待たれたゴドーという人物が早い段階から登場する。彼は長いトレンチコートを着て帽子を被り、スーツケースと傘を手に持っている、ごく普通の人間に見える。そのほか別役作品によく登場する受付の女性二人、エストラゴンの母かもしれない女性、ウラジーミルの子を乳母車に乗せた女性も加わる。
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