◎小林秀雄先生、来る!?
村井華代(西洋演劇理論研究)
「『玉勝間』という本の中にあるんですがね。「考える」の「か」は発語です。何も意味がない添えた言葉です。とすれば「考える」は「むかえる」だ、と言うんです。「むかえる」の「む」は「身」です。身はこの身体です、自分の体です。そして「かえる」の古語は「かう」です。「かう」って言葉は交わるって意味でしょ。だから「考える」とは、自分の身が何かと交わるってことなんです。」
これは、壱組印プリゼンツ「小林秀雄先生来る」の劇中おこなわれた小林秀雄の講演のなかにある言葉で、聞いたとき、いい言葉だと心に残ったのであるが、終演後、新宿東口の辺りのアルタやらルミネやらを眺めて、ぼんやりとうろついていると、突然このセリフが、舞台芸術そのものの核心である様なふうに心に浮かび、言葉の節々が、まるで待ちかねた出会いであったかの様に心に滲みわたった。そんな経験は、はじめてなので、ひどく心が動き、マックでメガたまごを喰っている間も、あやしい思いがしつづけた。