連載企画 観客が発見する 第2回

◎演劇と寄り添い合って生きる
 小泉うめさん

-今回の企画は、劇場に足しげく通っている人たちのインタビューです。

小泉 登場する人たちとはきっと、どこかの劇場でお会いしていると思います(笑)。

-そうですね。観客が何を考えているのか、何を見て、何を楽しんで、何に心を動かされているのか。そういう実情を明らかにしたいと、軽い気持ちでこの企画を始めました。ところがだんだんと…。小泉さんは関西出身とのことですが、どちらですか。

小泉 和歌山県です。高校卒業まで和歌山市内で育ちました。大阪までJRか南海電車で1時間くらいのところです。
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DULL-COLORED POP「アクアリウム」

◎1982年生まれのレイアウト水槽
 小泉うめ

「アクアリウム」公演チラシ
「アクアリウム」公演チラシ

 1997年「神戸連続児童殺傷事件」(当時14歳)、2000年「西鉄バスジャック事件」「岡山金属バット母親殺人事件」(当時17歳)、2008年「秋葉原通り魔事件」(当時25歳)、2010年「取手駅通り魔事件」(当時27歳)、これらの事件の犯人は、いずれも「1982年度生まれ」という共通点を持っている。
 更に2013年に「パソコン遠隔操作ウィルス事件」(31歳)が起こり、再び世間を騒がせた。この事件では、容疑者が「1982年生まれ」が大きな犯罪を起こし続けてきたことを意識していたとも供述している。
 DULL-COLORED POP主宰・谷賢一は、これらの事件の犯人とされる者たちと同じ「1982年生まれ」である。

 決して、約150万人いる1982年生まれの全てがそうだということではない。だが、世間は継続して彼らを「キレる世代」と評してステレオタイプ化して扱ってきた。
 この作品で表現されたのは、それらの事件の犯人の異常性ではなくて、むしろそのような犯人と同類として括られて見られた者たちの心に生じた苛立ちと、同時に「ひょっとしたら自分もそうかもしれない」という自己への疑いである。
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万博設計「鮟鱇婦人」

◎落語と劇と一人の女優
 小泉うめ

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「鮟鱇婦人」公演チラシ

 「一世一代」というような言葉はいささか古めかしいが、今時この言葉を使うとしたら、このような時なのだと思う。万博設計「鮟鱇婦人」、それは女優・千田訓子の一世一代の一人芝居だった。観た者の心に刻まれて、これから長く語り続けられていくであろう。

 舞台装置は和室の一室を想わせるシンプルなもので、そこにセミの鳴く声が聞こえてきて真夏の様相を醸し出していた。風鈴がぶら下っているが開演時には風はないので音はしていない。照明は裸電球が一つだけ、寂しげに灯っていた。 “万博設計「鮟鱇婦人」” の続きを読む

TACT / FEST 2013

◎児童演劇の祭典で出会ったおとなげないおとなたちの記憶と記録
 中村直樹・小泉うめ

 2013年7月29日(月)~8月11日(日)TACT/FEST(大阪国際児童青少年フェスティバル)が大阪・阿倍野で開催されました。
 TACTとは、ラテン語で「触覚」のこと。「機転が利く」、「配慮する」という意味があるそうです。それを冠するTACT/FESTは、こども達が世界の多彩多様な表現に触れることで「機転が利く」柔軟な思考を、そしてこども達が演劇を観賞することで、周囲に「配慮する」社会性を獲得することを目的としているそうです。

 ワンダーランド・東京芸術劇場共催の劇評セミナーに参加中の中村直樹と小泉うめの二人は、なんと8月3日(土)のTACT/FESTの会場でばったりと出くわしてしまいました。2人とも参加したのはこの1日だけなのに。逆に言えば、「TACT/FESTのレビューを書け」という演劇の神の思し召しかもしれません。
 果たして、それはどんなイベントだったのか。東京で再び2人で語り合いました。
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大阪大学ロボット演劇プロジェクト×吉本興業「ロボット演劇版 銀河鉄道の夜」

◎ロボットから学ぶ、心のつながり
  小泉うめ

 大阪駅の改札を出ると、ゴールデンウィークの雑踏が大きな流れになっていた。2013年4月26日にオープンしたばかりの新名所「グランフロント大阪」に向かう人々だ。
 その流れに乗って「まち」の深部へと進んで行くと、館内に5月2日にオープンされた劇場「ナレッジシアター」を見つけることができた。その名の通り、商業演劇で使われるような大劇場の派手さはないが、かと言って伝統を受け継ぐ小劇場の渋さとも違う。講演会などにも使えそうな落ち着いた雰囲気で、シンプルかつスタイリッシュな造りである。
 大阪はかつて賑わっていた演劇用の小劇場が次々閉館され、その数が減少しており、このような新しい劇場のオープンは本当に喜ばしい。
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