忘れられない1冊、伝えたい1冊 第9回

◎「宇宙 -そのひろがりをしろう-」(加古里子著、福音館書店、1978)
  柴幸男

「宇宙 -そのひろがりをしろう-」表紙
「宇宙」表紙

 すべてを知りたい、と思うときがある。人間には、知りたいという願望、欲求、快感がある。知的好奇心、探究心、特に、僕は、それが満たされた瞬間に、幸福を感じる。だから、知らないことが沢山あるのだと実感したときは、とても寂しいような気持ちになる。沢山の本、映画、音楽を、目の前にしたとき、一生をかけてもそれらすべてを享受ことはできないと瞬時に悟った、あの絶望。いや、さらに言えば、例えば、家の、玄関のドアを開けたとき、目の前に広がる光景の、すべて。例えば、名前、歴史、役割、仕組み、本当に理解しているのだろうかと、考えるときがある。そして、クラクラする。当たり前だが、そんなことは不可能だ。きっと日常生活は送れなくなる。そして、それが不可能だと理解したとき、自分もまた、その無数の、理解しえない、物質の一粒でしかない、ことを体感する。そしてまた、無力感に襲われる。それでも、いや、だからこそ、その一粒が、どこまで、世界を想像しえるのか、挑戦したくなるのかもしれない。
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