マームとジプシー「ΛΛΛ かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと———-」

◎食卓は待っているか?
(座談会)林カヲル+藤倉秀彦+麦野雪+大泉尚子

「わかりやすさ」をめぐって

藤倉秀彦:6月に上演されたマームとジプシー「ΛΛΛ かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと———-」。本題に入る前に、この作品の大まかなアウトラインを説明します。舞台は海辺の小さな町で、中心となる登場人物は、長女、長男、次女の三人。ある夏、長女と次女がそれぞれの娘を連れ、長男がひとり暮らす実家を訪れる。集まったひとびとは卓袱台をかこみ、食事をするわけですが、三人きょうだいの思い出の場であるその家は、区画整理によって取り壊されることが決まっているんですね。 “マームとジプシー「ΛΛΛ かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと———-」” の続きを読む

チェルフィッチュ「現在地」

◎見下ろせば透明
 林カヲル

「現在地」公演チラシ チェルフィッチュが四月に神奈川芸術劇場で新作『現在地』を上演した。作・演出は岡田利規。チェルフィッチュとはセルフィッシュを幼児語化した造語だが、本作はそのような意味ではまったくチェルフィッチュではない。岡田が若者言葉の多用をやめて久しいが、今回は口語ですらないともいえる。人物も話題もセルフィッシュではない。一種、巨匠と呼びたいような風格を備えた作品となった。
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