名取事務所「やってきたゴドー」

◎東ヨーロッパに「やってきたゴドー」
ラモーナ・ツァラヌ

シビウ演劇祭2014ポスター
シビウ演劇祭2014 ポスター

 別役実作『やってきたゴドー』公演(K. Kiyama演出、名取事務所プロデュース)は今年6月前半、モルドヴァ共和国のキシナウ、ルーマニアのシビウとブカレストで上演された。この作品は2007年が初演で、それ以来内外で数多く上演された。海外公演はアイルランドのベケット演劇祭をはじめ、フランス、ドイツ、ロシアなどで回を重ねた。

 『やってきたゴドー』は、ベケットの『ゴドーを待ちながら』の内容を踏まえて作られ、原作に登場する人物―ウラジーミル、エストラゴン、ラッキー、ポゾー、少年―がそのままこの舞台にも登場する。そのうえ、ゴドーにまつわる不条理的な設定がさらに進展する。何よりもまず、ベケットの原作で待ちに待たれたゴドーという人物が早い段階から登場する。彼は長いトレンチコートを着て帽子を被り、スーツケースと傘を手に持っている、ごく普通の人間に見える。そのほか別役作品によく登場する受付の女性二人、エストラゴンの母かもしれない女性、ウラジーミルの子を乳母車に乗せた女性も加わる。
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蓮沼執太フィル 「音楽からとんでみる4」全方位型フィル

◎「ステレオ」のパフォーマンス空間
 ラモーナ・ツァラヌ/井関大介/廣澤梓

「音楽からとんでみる4」公演チラシ
「音楽からとんでみる4」公演チラシ

 TPAMへの2度にわたる招聘や快快への楽曲提供など、舞台芸術との関わりも深い音楽家・蓮沼執太。彼による15人編成のオーケストラ「蓮沼執太フィル」は2010年の結成以来、ライブベースの活動を行ってきました。そこでは集団性や観客を含めた場の創造という観点において、今日の演劇を考える上でのヒントを与えてくれるように思います。この度、4月27日(日)の「全方位型フィル」と題されたライブに立ち会った3名によるライブ評を掲載します。(編集部)

解放感のサウンドスケープ—蓮沼執太フィル公演『音楽からとんでみる』
 ラモーナ・ツァラヌ
作者をこれ聖と謂ふ—音楽共同体への憧れと蓮沼フィル—
 井関大介
もう一度、集まることをめぐって
 廣澤梓

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フェスティバル・トーキョー2013「光のない。(プロローグ?)」(E.イェリネク作、宮沢章夫演出)

◎観客に届く、彼方からの声 語ることの不可能性と必要性
 ラモーナ・ツァラヌ

keinlight_prologue0a 東日本大震災によって発生した福島の原発事故に強い衝撃を受け、オーストリア出身のノーベル文学賞受賞者エルフリーデ・イェリネクが ”Kein Licht”『光のない』(日本語訳は林立騎による)という戯曲作品を執筆した。初演は2011年9月ケルンで行われた。翌年はオーストリアのグラーツで再演されたが、その時点では原作に『エピローグ?』が増補されていただけではなく、序幕に当たる文章を読むイェリネク自身の声の録音が本番に先立って流れた。おそらくその文章をベースにして『光のない』シリーズの3番目の作品『プロローグ?』が成立した。震災のことが語れない、表現できないという確信がこの作品の重大な主張である。

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