◎あの頃のボクにとっての怪談
吉田季実子

橋本治が処女作『桃尻娘』を書く前に執筆していた「幻の戯曲」というふれこみで『ボクの四谷怪談』は創作後40年にして日の当たる場所へと登場した。演出は蜷川幸雄、音楽は鈴木慶一が手掛けており、麻実れい、瑳川哲朗といった出演者の顔ぶれからも、これは何やら大事に違いないという期待がいやがおうにも高まってしまう。
劇場にかかっている幕は歌舞伎の定式幕であり、舞台の上下には電光掲示板がある。タイトルに騒音歌舞伎(ロック・ミュージカル)とあるのだから、歌舞伎の『四谷怪談』を意識した作品なのだろう。歌舞伎=ミュージカルで騒音=ロックなのか、あるいはいずれの訳語も二語で一つの意味をなしているので解体することには意味などないのだろうか、などと考えているうちに幕が上がった。
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