◎不可視の都市を「観光/感光」する
森山 直人
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これまで、松田正隆とマレビトの会の作品については、何度も論じたことがあるにもかかわらず、最新作『PARK CITY』について書こうとすると、まったく未知の演劇作家について、はじめて触れる錯覚に陥りそうになる。8月に山口情報芸術センター(YCAM)で初演され、10月に滋賀県のびわ湖ホールで再演されたこの作品を、実際に見ることのできた東京の観客は、おそらくそれほど多くはなかったかもしれない。マレビトの会の存在自体、東京で本格的に知られるようになったのが、おそらく今年3月にフェスティバル/トーキョー09春で上演された『声紋都市-父への手紙』(初演は伊丹アイホール)以降である、という事情もあるにせよ、それ以上に、この『PARK CITY』という舞台自体、ワンステージあたりの客席数が100席以下に限定された、かなり特殊な上演形態であったということも大きいと思われるからである。