マレビトの会「PARK CITY」

◎不可視の都市を「観光/感光」する
森山 直人

「PARK CITY」公演チラシ
これまで、松田正隆とマレビトの会の作品については、何度も論じたことがあるにもかかわらず、最新作『PARK CITY』について書こうとすると、まったく未知の演劇作家について、はじめて触れる錯覚に陥りそうになる。8月に山口情報芸術センター(YCAM)で初演され、10月に滋賀県のびわ湖ホールで再演されたこの作品を、実際に見ることのできた東京の観客は、おそらくそれほど多くはなかったかもしれない。マレビトの会の存在自体、東京で本格的に知られるようになったのが、おそらく今年3月にフェスティバル/トーキョー09春で上演された『声紋都市-父への手紙』(初演は伊丹アイホール)以降である、という事情もあるにせよ、それ以上に、この『PARK CITY』という舞台自体、ワンステージあたりの客席数が100席以下に限定された、かなり特殊な上演形態であったということも大きいと思われるからである。

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マレビトの会「声紋都市―父への手紙」

◎棲みついた〈坂〉と言葉 〈ノスタルジック〉な身体をめぐって
森山直人(京都造形芸術大准教授)

「声紋都市―父への手紙」公演チラシ
坂道をよく夢に見る。二十年近く前に引っ越して以来一度も訪れたことのない、生まれ育った場所の坂道が、いまだに時々夢の中に、はっきりそれと分かるように出現する。道添いに立っている家々の風景はでたらめで、ほとんど毎回違うのに(ようするにウロオボエなのだが)、子供の足にはかなりの急勾配と感じられ、途中から二股に分かれる坂がつくる地形だけは、私の身体に、すでに深く棲みついてしまっている。-これはたんなる私の個人的な夢にすぎない。けれども、たとえばこんなふうに、誰もが〈坂〉というものについて、なにがしかの記憶をもってはいないだろうか?

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新国立劇場「エンジョイ」(岡田利規作・演出)

◎ 「演劇をやってほしい」という熱い周囲の期待を、岡田利規はどのように裏切ることが可能か?
森山直人(京都造形芸術大助教授)

「エンジョイ」公演チラシ“verisimilar”という英単語がある。「迫真的」という訳語をあたえられたりもするが、もともとは“very similar”、つまり、「非常によく似ている」「本物そっくりである」という意味である。
いまや「リアル」という言葉が、あまりに手垢にまみれてしまったとすれば、「本物そっくりである」というこの単語の切り口は、岡田利規(チェルフィッチュ)が、近年高く評価されているその一端を確実に言い当てていると言える。

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山田せつ子公演「奇妙な孤独vol.2」

◎〈要約できない豊かさ〉に触れつづけることへの戦い
 森山直人(京都造形芸術大学助教授)

 このダンス作品を見て、「地図を見る感覚」を連想した。なぜそうなったのかを振り返ることで、劇評にしたいと思う。

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