◎分厚い下塗りの上に描かれる牧歌的笑劇
片山幹生(早稲田大学非常勤講師)
アイルランドの西北部の寂れた漁村を舞台とする牧歌的笑劇。『西の国のプレイボーイ』を見た印象を一言で表現すればこうなる。ダブリンでの初演時(1907年)にそのスキャンダラスな内容ゆえに暴動騒ぎになったことが不思議に思えるほど他愛ない話なのだ。観客の視覚に強く訴えるような斬新なスペクタクルもあるわけでもないし、意外性のある仕掛けが演出で用意されているわけでもない。しかしその古典的様相の穏やかさにも関わらず、この作品は私を大きな演劇的感興で満たすものだった。この芝居に私が感じた面白さと充実感は何に由来するのだろうか? 上演を企画した東京国際芸術祭(TIF)のウェブページ上の資料、芸術祭事務局から提供していただいた字幕原稿、および戯曲の原作および翻訳などを読んで上演舞台をじっくり反芻し、その魅力の源泉について考察してみたい。
2001年に初演されて以来、再演を重ねてきた三条会の「ひかりごけ」の公演を下北沢、ザ・スズナリで見る(2007年1月19日)。三条会の独創的な舞台についての高い評価はこれまで何度も目にしていたが、私が三条会公演を観たのは今回がはじめてである。