◎「公害原論」(宇井純、亜紀書房)
詩森ろば

子供のころから趣味といえば読書くらいで、小説も戯曲もずいぶん読んでいるはずなのだが、「忘れられない一冊」と言われると劇作をする中で資料として読んだ本ばかりが思い浮かぶ。歴史に題材を求めたり社会的事象について取材したりすることが多いので、どうしても膨大な資料を読む必要が出てしまうのであるが、読んでいるあいだは、戯曲など早く書き上げて好きなものを読みたいと思っているのになぜなのだろうか。
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ムスタヒールアリスの「バグダットの夢」という作品を見た。ムスタヒールアリスはイラクのカンパニー。不安定で、成田に着くまではほんとうに来ることができるかどうかもあやぶまれた状況下から、日本が初演という作品を携えてやってきた。それは、雨が降ると水に浸されてしまう古い家に耐え忍びながら住む家族の話であった。不幸な状況は人間関係の不全と不安を呼び、苛立ちや悲しみが降り止まぬ雨に浸されていく。そこに狂ったひとりの若者がやってきてすべてを破壊してしまう。跡に残ったのは夥しい死と亡骸。暖かな屋根の下に住みたいというささやかな希望さえも終える。
誰にも望まれず生まれ落ちた豊穣な果実。それがわたしにとってのTOKYOSCAPEです。誰にも望まれず、とは参加カンパニーや立ち会っていただいたたくさんのお客様に対して失礼なものいいであることはわかっています。しかし、せっかくこのような場をいただいたのだから、嘘のないレポートを書きたいと思います。