◎<劇的>なるものの威力
高橋 英之
このセリフと同時に、全ての光が失われ、音が止み、舞台の上で繰り広げられていた希望あふれる村の祭りの準備の雰囲気がたちどころに消え、正に、<劇的>なるものが降臨した。
劇作家・木下順二は、<劇的>なるものの効果として、「逆転を伴う発見」ということ指摘している。能の物語ではなく構造そのものにチャレンジした前川知大の『現代能楽集』は、紛れもなく<劇的>なるものを舞台に立ち上げた。死者として舞台に立つシテと、その姿をひたすら見守ることによって魂の救済を試みるワキ。死者と生者の出会いとなる前場と、死者たちの記憶の場を呼び覚ます後場。この夢幻能の構造の力を借りて、前川知大は衝撃的な「逆転を伴う発見」をもたらしてくれた。
“世田谷パブリックシアター「現代能楽集 VI 奇ッ怪 其之弐」” の続きを読む


ホンモノに出会う旅は、必ずニセモノから始まってしまう。それは、ホンモノであるがゆえに、数多のニセモノが登場してしまうためだが、そのニセモノの中には時として単なる偽物として切って捨てることができない存在になってしまうものがある。『寝台特急“君のいるところ”号』がそうしたニセモノのひとつであるかどうかは、こまばアゴラの席に着いた時は知る由もなかった。不幸にして、中野成樹+フランケンズという名前も、ソーントン・ワイルダーという名前も、全く知らなかったのだから。