サブテレニアン プロデュース 「キル兄(あん)にゃとU子さん」

◎近くて遠い国に伝うべきもの。
 柾木博行

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 晴れ渡った青空の下、ゆったりとのぼり旗がたなびいている。ずんぐりとした年配の男がマイクを片手に話す。
「全国の皆さん、お元気でしたか。今日も世界各地で希望を胸に頑張っておられる海外の同胞や勤労者の皆さん、ボランティアの皆さん、蒼い大海原を渡る外航と遠洋漁船員の皆さん、韓国を守る兵士の皆さん、そして全羅北道金堤市の市民の皆さん、ありがとうございます…」
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ふじのくに⇄せかい演劇祭2013

◎宮城体制の完成へ向けて、或いはお別れの始まり
 柾木博行

ふじのくに⇄世界演劇祭2013公演チラシ
演劇祭チラシ © Ed TSUWAKI

 今年もまた6月の週末は静岡に通った。静岡県舞台芸術センター(以下SPACと表記)が開催する「ふじのくに⇄せかい演劇祭」を観るためである。今年は演劇祭本編で9作品、そして番外編として開催された「ふじのくに野外芸術フェスタ」は4企画6作品が上演された。前身の「静岡春の演劇祭」からリニューアルした一昨年から比べると徐々にだがプログラムの方向性が変わってきているように思う。過去2年はのれんの架け替えを周知してきたのに対して今回は内容そのものを変えたと言えるだろう。
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平山素子ソロプロジェクト「After the lunar eclipse/月食のあと」

◎自然と科学に向き合う生命体
 柾木博行

「After the lunar eclipse/月食のあと 」公演チラシ
「After the lunar eclipse/月食のあと」」公演チラシ

 あれはいつのことだったのか。もう二十年くらい前、たぶん日光あたりへ旅行に行ったとき、ちょっとした林の周りを散策していた。木々の根元はしっとりと水を含んだ苔が覆っている。そんなところを歩いていうちにふと、寝そべってしまいたい気になった。生い茂った緑の影に身を横たえて自然と一体になれるような感覚。ああ、いつか自分もこうした木々と一緒に朽ちて、大地に溶け出して拡散し、周りの植物や虫や鳥に取り込まれていくのだと。そんなことを思っていると、ふと意識までもが自分の体を抜け出して、美しい林の中へと拡散していくような気がした。平山素子のソロ公演『After the lunar eclipse/月食のあと』(以下、『月食のあと』と表記)を観た後に、そんなことを思い出したのは、まさに同じようなイメージの場面が出てきたからだけではない。それは侵食し合いながらも共生していかなければならない自然と人間の関係を、我われが3月11日以降、常に考えさせられているからだ。
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シアター・リフレクション「箱とジョージさん」

◎ 人形たちの映し出すもの
 柾木博行

「箱とジョージさん」公演から
撮影=神崎千尋

 演劇関係者が集まると必ず出る言葉が「最近面白い舞台ありましたか?」。今回この原稿を書くきっかけも、ある芝居の帰りに(ワンダーランドの)北嶋氏から言われたこの言葉がきっかけだ。いつもは、「いやー、これっていうのはないですねぇ」という枕詞を挟んで、2、3記憶に引っかかった芝居の名前をあげるが、その時は違った。
 「この前、座・高円寺でやったシアター・リフレクション、あれはすごかったです。子どものための人形劇だけど、内容は大人向けというか、もうシュールで不条理、カフカを観ているような感じで、なかには怖がってる子どももいたくらいで。最後はタルコフスキーの『惑星ソラリス』を思い出したりして…」
 まさに今年見た舞台ではダントツに刺激的な作品であった。今思い起こせば7月は芝居関係で会う人すべてにシアター・リフレクションを勧めていたようにも思う。このカンパニーが面白いのは昨年観て分かっていたからだ。しかし今回の『箱とジョージさん』は、こちらの予想をさらに裏切るような刺激的な作品だった。今回はこのデンマークの人形劇団シアター・リフレクションの魅力について解き明かしてみたい。

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