あうるすぽっと・豊島区「おやすみ、かあさん」

◎邪悪
 杵渕里果

「おやすみ、かあさん」公演チラシ 『おやすみ、かあさん』(‘Night, Mother)は、1983年ピューリッツア賞受賞の戯曲。
 「アラフォーおんなが自殺するはなし」というと「やたら暗い」けど、現代演劇に「自殺」がからむのは、『セールスマンの死』、『動物園物語』、『欲望という名の電車』…あんがい忌み嫌われてもないみたい。
 「自殺」をめぐる葛藤は、健康な人でも…というか、そのカラダがそのカラダを殺せるくらい健康なカラダの人なら、窮状から消え去る手段としての「自死の誘惑」に襲われうるワケで、とりたてて異常なものではない。
 なのに「自殺」がらみの葛藤は、まずその本人が隠すし、遺族も黙って抱えこんでヒミツにすることが多いから、外からはその存在じたい見えにくい。そんなふうに隠しこむ風習のためますます人は、孤独のドツボに落ちてゆく。
 でも演劇にしてさしだせば、「特定の誰かの死」から離れたかたちで「自殺」についてコミニケーションする契機にできる。多くの力ある劇作家が「自殺」を好んで描いてきたのは、「演劇」という制度を最大限活用させられるテーマだから、なんだろう。
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三条会「S高原から」

◎恋愛、「いざ、生きめやも。」
杵渕里果

三条会「S高原から」公演チラシ高校の、教室にあるような生徒用の机が、十卓ほど、スズナリの狭い舞台に並んでいた。
学生服の男優四人と、セーラー服ではないが黒ワンピース、喪服の女優が入場し、着席する。
と、この教室の先生なのか、カジュアルな服装の、ひときわ背の高い男優が来て、平田オリザ『S高原』、冒頭のト書きを読み始める。
彼は、「上手」「下手」を、舞台の前と奥、つまり教室の前後の出入り口にふりわけた。先生が合図を送ると、学生服の男優たちはノートを開き、滑らかなセリフを朗読の身振りで、演じ始めた。

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ガールズ・トーク「4.48 サイコシス」(サラ・ケイン作、飴屋法水演出)

これまで何回か掲載した「鼎談」企画の復活第一弾として、座談会をお届けします。取り上げるのはフェスティバル/トーキョーで大きな話題を呼んだ「4.48 サイコシス」(作:サラ・ケイン、演出:飴屋法水)。イギリスの女性劇作家の作品を、4人の女性に思う存分語っていただく趣向です。題して「ガールズ・トーク『4.48 サイコシス』」。次々飛び出す目から鱗の発言にご注目あれ。

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劇団東京ミルクホール「水晶の夜『グーテンターク! 私たち、日本のとある  元祖有名少女歌劇団です。』」

◎宝塚でも上演ありそうな歴史喜劇へ
杵渕里果

「水晶の夜 グーテンターク! 私たち、日本のとある 元祖有名少女歌劇団です。」公演チラシグーテンターク!
普段ゼンゼン演劇をみないそこのあなた。それは正しい。
(1)当たり外れが多い。(2)時間帯が映画のようには選べない。(3)公演日数が短く他人と話題するころには千秋楽過ぎている。(4)金かかる。
話題やつきあいの加減で一、二本もみれば、多くの人は小劇場から遠ざかる。当然のことだ。
にもかかわらず、オモシロイ劇団や上演を知っていると、何かのおり他人にエバれるのもまた事実。
そこで、劇団東京ミルクホール。
ひごろ演劇をまったく観ない彼・彼女に、かる~い気持ちで勧めてみても、涙ながらに感謝してもらえそうな、そんな劇団ナノである。

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少年王者舘「夢+夜~ゆめたすよる~」

◎「ノーベル精神分裂症」が漱石を砕く
杵渕里果

「夢+夜~ゆめたすよる~」公演チラシ名古屋が拠点の少年王者舘が今年も下北沢にやってきた。作・演出の天野天街を中心に八十二年に旗揚げした劇団である。
『夢十夜』、といえば漱石と思いきや、『夢+夜』、「+」は足し算の符号だった。
〈ゆめたすよる〉、よくみると振り仮名もある。夏目漱石、との記載はないから、これは私の不注意だ。漱石を期待したのですこし残念に思う。

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The Vagina Monologues (ヴァギナ モノローグス)

◎『ヴァギナモノローグス』の御開帳
杵渕里果

「ヴァギナ モノローグス」公演チラシもう十年も前のことだけど、TVタックルで田嶋陽子がこんなことを言っていた。
「オトコの性器は〝キンタマ”って“金”がつくのにオンナにはそういうのないじゃん!」
私、そんなことないと思った。

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三条会「ロミオとジュリエット」

◎知的刺激は受けたけど、泣かせてほしかったロミオさま
(鼎談)水牛健太郎+杵渕里果+芦沢みどり

三条会「ロミオとジュリエット」公演チラシジュリエット芝居-どんな上演だったか

芦沢みどり:ワンダーランド鼎談第2弾は、下北沢のザ・スズナリで上演された三条会の『ロミオとジュリエット』。三条会は知的なたくらみと遊び心に満ちた演出と、俳優それぞれに個性があって魅力的であることが定評になっています。さて、今回はどういう『ロミオとジュリエット』だったか。公演チラシには「むかしむかしロミオとジュリエットという人がいました。2人とも恋をしました。2人とも死にました。もしかしたら1人だったのかもしれません」というナゾめいた言葉が置かれています。公演パンフレットの方では、「今回の台本は、ジュリエットが登場している場面だけを抜粋して構成しました」と言っている。原作のうち、ヴェローナの広場や街路での立ち回り(喧嘩)、乳母の長セリフ、マキューシオの長セリフ、修道士ロレンスの長セリフなどがばっさりとカットされています。登場人物は八人。ロミオとジュリエット、あとはキャピュレット、キャピュレット夫人、乳母、パリス、ロレンス修道士、ティボルトですね。キャストは全員ジュリエットを演じるシーンもあります。

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パラダイス一座「続々・オールドバンチ~カルメン戦場に帰る~」(最終公演)

◎『オールド・バンチ』-記憶のバレエ
杵渕里果(保険業)

「続々・オールドバンチ~カルメン戦場に帰る~」公演チラシパラダイス一座の『オールド・バンチ』が終わった。
でもカーテンコール、演出の流山児祥は「さよならは言いません」と言っていたから、「最終公演」と銘打っても、また二年くらいしたら「再結成」で「復活」しそうな雰囲気はあった。

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三条会「近代能楽集」(全作品連続上演シリーズ)

◎変化する字体やレイアウト 三島戯曲と新潮文庫と三条会
杵渕里果(生保業務)

新潮文庫「近代能楽集」(新版)三島由紀夫の『近代能楽集』をみに、二〇〇八年は千葉に四度通った。全八作品を二ヶ月おきに二本づつの上演で、演目の順序は執筆年順。新潮文庫『近代能楽集』の順番と同じ、といえばわかりよいだろう。
千葉駅からパルコへ、さらに左へ曲がってしばらく歩くと、教会の二階に三条会のアトリエがある。駅から一七分ばかりかかる。

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イヨネスコ「瀕死の王」

◎瀕死の、殿
杵渕里果

「瀕死の王」公演チラシ「あと1時間40分で、王様はお亡くなりになるのです。このお芝居の終わりには」
舞台に、体調を崩した老齢の王が登場すると、王妃と侍医にこう宣告される。余命1時間40分。終演とともに昇天の予定。
「何を申す。縁起でもない」
王は、機嫌を損ねる。なるほど、タイトルどおり『瀕死の王』である。

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