◎真摯だけれど何か物足りない 清志郎の歌を聴きながら
直井玲子
今年の5月2日からずっと、忌野清志郎の歌ばかりを聴いている。この日、清志郎が亡くなったのだ。大人になって長い間その存在を忘れかけていたけれど、清志郎は私の少女時代のアイドルだった。連日CDやDVD、もちろんYouTubeを見続けいていると、新たな発見がたくさんあってやめられなくなる。
小劇場レビューマガジン
◎真摯だけれど何か物足りない 清志郎の歌を聴きながら
直井玲子
今年の5月2日からずっと、忌野清志郎の歌ばかりを聴いている。この日、清志郎が亡くなったのだ。大人になって長い間その存在を忘れかけていたけれど、清志郎は私の少女時代のアイドルだった。連日CDやDVD、もちろんYouTubeを見続けいていると、新たな発見がたくさんあってやめられなくなる。
◎始まりの場所へ-「ハッシャ・バイ」の海-
金塚さくら
海だ。あと一歩踏み出せば足元は溶けるように崩れ、そこは茫漠の海だ。
赤いワンピースを着て、女は波打ちぎわすれすれに立っている。ほとんど怒っているかのような厳しい無表情で、睨むほどに強く遠い水平線を見つめる。
「私は母のない国に行くのです」
海底の地下トンネルを抜けて。怒りの声にも嘆きの声にも耳を貸すことなく、絶望にだけ未来を託して。海に臨む最後の地平に、彼女は独り立つ。
◎俳優の役割や魅力とは 青年団・南河内万歳一座共同企画
水牛健太郎
芝居にかかわる人間は数多いが、私たちが舞台の上に見出すのは役者だけだ。当然のことではあるが、しかしそれが再確認される時点で、既にそれ以外の人たちが舞台の隠れた「主役」となっている事態を示唆しているといえる。演劇の設計図を書く劇作家、そしてそれを舞台の上に実現していく上で、主導権を握る演出家。ことに日本では「作・演出」という形で両者を兼ねるのが、小劇場を中心に一般的な形式になっている。何よりもまず、「作・演出」個人の作品として、芝居が理解されているゆえんだ。
◎美しく正確な演劇
柳沢望
今年の5月から、移動テントで全国各地をツアーしている劇団どくんごによる舞台作品「ただちに犬 Deluxe」。その、埼玉(浦和美園)での公演を見た(9月20日)。私などは、テント芝居なんて聞くと、一昔前のものという風に思ってしまいがちだけれど、移動するという条件において研ぎ澄まされるものもあるのだ、と直に見せつけられた感じだ。