◎混沌と獣性を振付ける-奔流する肉体の群れ
高嶋慈
今年第3回目を迎えるKYOTO EXPERIMENTは、昨年度より、ブラジルのダンス・フェスティバルPanoramaと提携関係を結んでいる。今年は提携プログラムの1つとして、Panoramaの創設者であるリア・ロドリゲスが振付けしたダンス作品『POROROCA(ポロロッカ)』が上演された。「POROROCA」とは、大潮によって大量の海水がアマゾン川に逆流する自然現象を指す言葉である。リア・ロドリゲスは、自身のカンパニーの拠点をリオデジャネイロの貧民街の1つであるマレ地区に置き、ワークショップなどの活動を通じてコミュニティと関わりを持ちながら創作活動を行っている。本作『POROROCA』では、近代的な個としての身体の輪郭が集団の中に溶け出し、混沌と生(性)のエネルギーに充満した場を創出させることで、ダンスは社会のリアリティに対してどのように対話できるのか、という問いかけがなされていた。その真摯な問いの実践としてのダンスは、ブラジルという地域性、歴史的・文化的・自然的特性だけに限定されるのではなく、普遍性を持って見る者の思考と身体に迫ってくる強度を備えていた。
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