地点「はだかの王様」
レイジーブラッド featuring Reykjavík!「The Tickling Death Machine」
杉原邦生/KUNIO 「更地」
劇団競泳水着「リリィ」

◎台風一過―KYOTO EXPERIMENT2012報告(第2回)
 水牛健太郎

 以前どこかで書いたけれど、身分というのは演劇そのものである。「この人は王様だ」という「お約束」の上にすべてが築かれ、それが否認されるや王冠は奪い取られる。「身分は演劇だ」というのは比喩ではない。ただの事実だ。だっ
て、誰かが誰かより、「生まれつき高貴である」なんて、現実じゃありえない。お芝居の設定以外の何だと言うのか。それが一国を挙げての大掛かりなものだったとしても、お芝居に違いはない。

 「はだかの王様」というお話の鋭さは、身分というもの(というか、ありとあらゆる「AさんはBさんよりも偉い」)の演劇性というものを、容赦なく暴いてしまうところにある。一見のんきな寓話のようで、その刃はすべての虚飾を切り裂く。
誰の身の周りにも、一人や二人、「はだかの王様」にたとえたくなる人がいるのではないか。会社の上司とか。劇団の主宰とか。や、特定の劇団の話じゃないですよ、もちろん。
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レイジーブラッド featuring Reykjavík!「The Tickling Death Machine」
杉原邦生/KUNIO 「更地」
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劇団オルケーニ「ショックヘッド・ピーター」

◎劇評を書くセミナー 東京芸術劇場コース 第1回 報告と課題劇評

「ショックヘッド・ピーター」公演チラシ
「ショックヘッド・ピーター」公演チラシ
 ワンダーランドの「劇評を書くセミナー」は2012年年9月、リニューアルオープンした東京芸術劇場の共催で始まりました。同劇場で上演される舞台を4人の講師の方々とともに合評する全9回の講座です。第1回は9月21日(金)午後7時から同劇場ミーティングスペースで開かれました。
 合評の対象になったのは「ショックヘッド・ピーター」公演の劇評12本です。この公演が日本語字幕付きのハンガリー語で上演されたことに対する評価、「子ども」のためとは何か、舞台と重ね合わされるハンガリーの戦後史、リニューアルオープンに合わせて取り上げられたわけ、不可解だったウサギ狩りエピソードの意味などなど、多岐にわたる視角から12通りの光があらためて舞台に当てられました。
 執筆した受講者から自分の劇評について話してもらったあと、参加者から質問や意見が出され、講師の林あまりさんが最後に意見と指摘を加えて締めくくる形で進行しました。終わったのが午後10時近く。その後も居残りの方々が館内のレストランで遅くまで話し合いました。以下、執筆者の了解を得た劇評を掲載します。(編集部)
劇評セミナー第1回ページに続く

劇団オルケーニ「ショックヘッド・ピーター」

◎一流の観客、三流の観客
 林あまり

「ショックヘッド・ピーター」公演チラシ
公演チラシ

 芝居は半分、いやもしかしたら半分以上、観客がつくるものかもしれない。劇団オルケーニ「ショックヘッド・ピーター」を観て、ハッとした。眠っていた頭を殴られたみたいな気分だ。

 子どもの指がハサミで切られ、ぴょんぴょんとハネては床に落ちる。―恐ろしいシーンのたび、私はそっと隣の席の男の子(小学一年くらい?)の様子をうかがっていた。こんなコワイの見て、大丈夫かな…と。思わずにいられなかったから。
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10月のクロスレビュー挑戦編は MU公演

 ワンダーランドの公募クロスレビュー(クロスレビュー挑戦編)10月公演は、MU bootleg公演 vol.2「いつも心だけが追いつかない」(10月5日-8日、乃木坂・Theater&Company COREDO)を取り上げることになりました。予約、アクセスなどはMUのサイトをご覧ください。観劇されたみなさんの投稿を待っています。投稿レビューの詳細は >>応募ページをご覧ください。11月公演分の締め切りは10月15日(月)です。(編集部)

TRASHMASTERS「背水の孤島」

◎言葉もたない命よりも
 岡野宏文

「背水の孤島」公演チラシ
「背水の孤島」公演チラシ

 まず最初に、「背水の陣」という言葉の意味を確認しようではないか。
 この言葉は中国の史記による故事をもとにした成語で、絶体絶命の状況においてあえて川を背にした陣を敷き、決死の覚悟で全力を出し切って戦に臨むやり方で勝利を目指す戦略をいう。
 つまり「背水の陣」とは、十中一の望みもない立ち位置で、絶望に溺れるでもなく希望をかきたてるでもなく、もはや希望以外のなにものも持てぬがんじがらめの前のめりの姿をさすのである。
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砂連尾理/劇団ティクバ+循環プロジェクト「劇団ティクバ+循環プロジェクト」

◎秋風吹いて―KYOTO EXPERIMENT2012報告(第1回)
 水牛健太郎

 形も色も材質もバラバラの椅子が五つ、講堂に並んでいる。そこに出演者が座り、左端の椅子と隣の椅子の間には男性が、車いすを華麗に操って滑り込む。パフォーマンスが始まる。

 しばらくは顔見せとでも言うのか、出演者が一人ずつ、前に歩いて、壁に突き当たって後ずさりして戻ってきたり、自分の名前を言って、それを他のメンバーが口まねしたりと、一定の規則的な動作が繰り返される。でも、単調ではない。強烈な存在感を発揮するのは車いすの男性だが、三人いる外国人男性のうち二人は吃音者らしく、そのうちの一人は、自分の名前を言ってもまるで鳩の鳴き声のように聞こえる(吃音のためだけでなく、この人の名前自体、鳩の鳴き声を思わせる響きを持っていることに、今パンフレットを見ていて気づいた)。
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SENTIVAL! 2012 報告 2

◎祭りの後で―演劇フェスSENTIVAL! 2012 レビュー
 梅田 径

 atelier SENTIO、SUBTERRANEAN、巣鴨教会を舞台に繰り広げられた地域演劇フェスティバル「SENTIVAL! 2012」がOrt-d.d「夜と耳」の終演をもって終わりを告げた。4月から7月までの長期間、17団体によるパフォーマンスと、ポストトーク、クラシック音楽とダンスの競演、フェルデンクライスWSと充実した内容であった。
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東葛スポーツ「ビート・ジェネレーション」(クロスレビュー挑戦編)

「ビート・ジェネレーション」公演チラシ
「ビート・ジェネレーション」公演チラシ

 「東葛スポーツ」は金山寿甲(カナヤマ・スガツ)によるソロユニット。2007年から活動を始め、ヒップホップカルチャーの影響を受けた作風だそうです。今回の第5回公演は「ケルアック『路上』も、ギンズバーグ『吠える』も、バロウズ『裸のランチ』も、完読する事なく書棚にリリースした東葛スポーツなりの『ビート・ジェネレーション』」(同サイト)。どんなビートやカルチャーが飛び出すのでしょうか。出演者の顔ぶれにも注目ですね。レビューは★印と400字コメント。掲載は到着順。レビュー末尾の括弧内は観劇日時です。(編集部)

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コンプリシテ「巨匠とマルガリータ」

◎アヴィニョンでコンプリシテを見る。
 今井克佳

 まずはじめに断っておくが、これから紹介するコンプリシテの「巨匠とマルガリータ」は2012年12月から13年1月まで、ロンドンのバービカンセンターでの再演が決まっている。その後、来日上演があるかはさだかではないが絶対にないとは言い切れない。そのため、今後の公演を見る可能性がある方には、これから書くことはいわゆる「ネタバレ」となる。決定的なことを書くつもりはないが、かなり具体的な内容を紹介することになるだろう。気になる方は注意してほしい。
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