忘れられない1冊、伝えたい1冊 第11回

「プロセス 太田省吾演劇論集」(太田省吾著、而立書房、2006)
 西尾佳織

「プロセス 太田省吾演劇論集」表紙
「プロセス 太田省吾演劇論集」表紙

 遅いテンポと沈黙劇で知られる、太田省吾の演劇論集である。1975年、1980年、1988年に出版された三冊の演劇論集が収められている。私は太田さんに会ったことも、作品を生で見たこともないけれど、この人はきっと恐いくらい誠実で厳しい人だったに違いない、と読むたび思う。語られている内容以上に、語る口調にハッとする。読んでいる私が見られている気がする。ベッドで読むと寝てしまう。ってそれ、全然ハッとしてないじゃないのと言われそうだが、なんだか、だららんとは読めないのだ・・・。
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アマヤドリ「フリル」(クロスレビュー佐藤佐吉演劇祭編 10)

「フリル」公演チラシ
アマヤドリ「フリル」公演チラシ
 クロスレビュー佐藤佐吉演劇祭編の最終第10回は、アマヤドリの初公演。前身の「ひょっとこ乱舞」はアマヤドリと同じ作・演出の広田淳一を中心に2001年結成。「現代口語と身体性を表現の両輪とし、リズムとスピード、熱量と脱力を駆使した『喋りの芸』としての舞台表現」を目指していました。 2004年「若手演出家コンクール2004」で最優秀演出家賞。 2005年には、佐藤佐吉賞 最優秀演出賞・優秀作品賞受賞(『旅がはてしない』)。2009年、2010年と連続して「アジア舞台芸術祭(Asian Performing Arts Festival)」に広田が演出家として招聘され、2011年は韓国演出家協会主催の「アジア演出家展」に参加。若手の演劇人として内外で才能が評価されています。今年3月の第25回公演を最後に「ひょっとこ乱舞」から改名。「アマヤドリ」として再出発した舞台はどうだったのでしょうか。レビューは★印による5段階評価と400字コメント。掲載は到着順。末尾の括弧内は観劇日時です。(編集部)

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F/T12 記者会見

◎コンセプトは「ことばの彼方へ」 F/T12が10-11月に

 東京からの文化発信を目指す第5回フェスティバル / トーキョー(F/T12)の記者会見が9月12日、リニューアルオープン間もない東京芸術劇場で開かれた。今回は主催12演目、公募11演目を含む内外の多彩なプログラムによって、「震災復興の糧となる新たな想像力を生み出し、国際都市トーキョーから再び世界へと、東京ならではの創造性を発信」(「開催趣旨」)するという。会期は10月27日から11月25日までの約1ヵ月間。東京・池袋を中心に開かれる。
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第22回こどもの館劇団演劇発表会「タロウくんのユメ」

◎タロウくんのユメ、こどもたちの夏
 伊藤寧美

 今年もまたこどもの館劇団の公演がやってきた。姫路駅から車で20分あまりの山奥に建つ兵庫県立の大型児童館、こどもの館へと足を運ぶ。初めてこの劇団に関わった10年前から、出演者として、観客として、夏には毎年のように姫路を訪れている。

 こどもの館劇団は、1991年に当時の兵庫県知事貝原俊民氏と、こどもの館の設計者である建築家安藤忠雄氏の提案により、劇団NOISEの如月小春氏の指導のもと開催された、夏休み期間中の中学生を対象とした演劇ワークショップから始まった。当初は一回きりの企画の予定が評判を呼んで毎年の開催となり、リピーターの参加者が中心となって継続的に運営されるよう「劇団」を名乗るようになる。また5年目からはOB、OGや近隣の小中学校の教員を初めとした大人たちも加わり、翌年には彼らを対象とした演劇指導者養成講座もワークショップと並行して開催されるようになった。2000年の如月氏逝去までは彼女が指導者の中心として、2001年以降は柏木陽氏とNPO法人演劇百貨店が指導を引き継ぎ、現在もこのワークショップは行われている。
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三宅島在住アトレウス家《山手篇》

◎転々とする感想
 川光俊哉

 朝の7時から、観劇に出かけました。自分で公演をやるときは、7時に劇場集合なんてよくやったと思うが、なかなかこの時間に公演はやらない。15時、19時の回もあったが、せっかくなので、という気持ちで7時の回に予約した。せっかくなので、と思った人がほかにもたくさんいたのでしょう、どの日も7時の回から予約が埋まっていったようです。
 鴬谷駅から、ラブホテル街をぬけて、会場の平櫛田中邸に到着した。おじいちゃんおばあちゃんの家を思い出すような、ただの民家です。
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北京蝶々「都道府県パズル」(クロスレビュー佐藤佐吉演劇祭編 9)

「都道府県パズル」公演チラシ
「都道府県パズル」公演チラシ
 北京蝶々は2003年、早稲田大学演劇研究会を母体に旗揚げした劇団。「 電子マネーや介護ロボットなど、現代の日常に浸透しつつあるテクノロジーをモチーフに近未来の日常を描く」のが特徴だとホームページで述べています。複雑系のカオス理論由来の劇団名を持ち、若手演出家コンクール2007(日本演出者協会主催)で審査員特別賞・観客賞を受賞した期待の劇団です。今回は、「道州制基本法」をめぐり、国民の意見が推進派と反対派の真っ二つに割れている近未来の日本が舞台。「郷土愛に火をつける、ローカルエンターテイメント」はどんな展開を見せたのでしょうか。レビューは、★印による5段階評価と400字コメント。掲載は到着順。レビュー末尾の丸括弧は観劇日時です。
 東京公演は終了しましたが、9月8日から大阪公演が予定されています。ご注意ください。(編集部)

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ジェローム・ベルとテアター・ホラ「不自由な劇場」

◎拍手は誰に贈るのか
 よこたたかお

はじめに

 去年の11月にフェスティバル・トーキョーと彩の国さいたま芸術劇場の共催により、『ザ・ショー・マスト・ゴー・オン』を上演してから、日本のダンス愛好家だけではなく、演劇愛好家や現代美術愛好家にも名前を知られ、既に一定数のファンを獲得しているジェローム・ベルの新作『不自由な劇場Disabled Theater』が今年の5月、チューリッヒのクンステン演劇祭で上演された。この作品はドイツ、スイス、フランスを巡回し、筆者が見たのはアヴィニョン演劇祭(フランス)での7月14日15時の回だ。この作品は既に11月まで上演が決まっている。
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鵺的「荒野 1/7」

◎濃厚な演劇らしさ
 水牛健太郎

「荒野 1/7」公演チラシ
「荒野 1/7」公演チラシ

 観客席の前の、ごく狭い、奥行きもあまりないスペース。そこに背もたれのない丸い椅子がいくつか置かれている。役者が一人ずつ登場し、椅子に座って話し始める。演技空間は、喫茶店に設けられた時間貸しの会議室に見立てられているが、セットは横一列に置かれた椅子だけで、演技はほぼ顔の表情に限られている。役者は入退場の時以外には、立ち上がることもほとんどない。台本こそ手にしていないものの、リーディングに近いような演出なのだ。それなのに濃厚な演劇らしさが漂う。
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バストリオ 「Very Story, Very Hungry」(クロスレビュー挑戦編)

「Very Story, Very Hungry」公演チラシ

 バストリオは2010年から今野裕一郎が主宰するユニットとして本格的に活動を開始しました。メンバーや形態を変えながら「映画や演劇や写真などの表現手法によって、対象をフラットに捉え、コラージュの手法を用いて実際的なものへと捉え直すことで独創性のある作品を作りだす」とWebサイトで述べています。今回の舞台はスペイン文学の古典「ドン・キホーテ」の枠を借り(たふりをし)ながら、映像あり、ダンス(的な身体表現)あり、寓話性を帯びたエピソードが次々につながる不思議な時間。手強い公演はどうとらえられたのでしょうか。今回は投稿が少ないのが残念ですが、レビューは5つ★による評価と400字コメント。掲載は到着順。レビュー末尾の括弧内は、それぞれの観劇日時です。(編集部)

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木ノ下歌舞伎「義経千本桜」(京都×横浜プロジェクト2012)

◎古典と現代の往来-カブク! 若い演劇人たち-
  田中綾乃

「義経千本桜」公演チラシ
「義経千本桜」公演チラシ

 木ノ下歌舞伎は、京都造形大学出身の木ノ下裕一と杉原邦生を中心にして、歌舞伎の古典作品を、現代的視点で多角的に捉え直す試みを行っている若手の劇団である。歌舞伎作品の現代化というのは、いまに始まったことではなく、例えば、花組芝居や山の手事情社、さらに言えばコクーン歌舞伎も古典作品を現代の感覚で再構築する作業を行っている。
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