太陽劇団「Le Dernier Caravanserial《最後のキャラヴァン宿》」

◎テクストと身体-日本の翻訳劇制作現場で考える  芦沢みどり ▽太陽劇団の最新作に即して  このところ学校でのいじめを苦にした小中学生の自殺が頻発して、教育委員会の対応やマスメディアの報道のあり方も含めて、社会の関心の的 … “太陽劇団「Le Dernier Caravanserial《最後のキャラヴァン宿》」” の続きを読む

◎テクストと身体-日本の翻訳劇制作現場で考える
 芦沢みどり

▽太陽劇団の最新作に即して
 このところ学校でのいじめを苦にした小中学生の自殺が頻発して、教育委員会の対応やマスメディアの報道のあり方も含めて、社会の関心の的になっています。最近の子どもには他者への想像力が欠けている、といった言説もメディアを通して聞こえてきます。昨今の日本が子どもに限らず想像力を欠いた社会であることは間違いないにしても、自他ともに人を尊重しなくてはいけないといった倫理観は、自他の概念が曖昧なまま思考停止のミーイズムに陥っているかに見えるこの国では、いくら学校が道徳教育に力を入れたところでそう簡単に育つものではなかろうに、と思うのですが。

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長塚圭史作・演出「アジアの女」(新国立劇場)

◎ふかふかの絨毯は生きた心地がしない
今井克佳

「アジアの女」公演チラシ開演前の舞台を見つめていて、ふと香月泰男という画家の絵を思い出した。過酷なシベリア抑留体験から生まれたいわゆる「シベリアシリーズ」の作品の一つに、暗い色調の骸骨のような人間の顔が壁のように並んでいる絵があった。あれは死者の顔ではなかったか。

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ピンク「We Love Pink」

◎ピンク:かわいい子には悪ノリさせろ!  伊藤亜紗  高めのポニーテールにリストバンド、揃いのハイソックスにはもちろんミニのスコートか短パンを合わせてめいっぱいの元気をアピールっ!なのはいいけど思いっきり振りあげたナマ足 … “ピンク「We Love Pink」” の続きを読む

◎ピンク:かわいい子には悪ノリさせろ!
 伊藤亜紗

 高めのポニーテールにリストバンド、揃いのハイソックスにはもちろんミニのスコートか短パンを合わせてめいっぱいの元気をアピールっ!なのはいいけど思いっきり振りあげたナマ足はバレリーナだったらちょっとあり得ないようなぽてっとくびれのないラインで……。

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ころがす「1988年6月30日、あるいはバイエル」(岸井大輔作・演出)

◎あやふやな身体のための演劇入門(バイエル)  小澤英実  劇場という「何もない空間」と、そこで行われる公演の関係。それは例えば、劇場が器・容れ物で、公演が容れ物の中身というふうにたとえられる。そのとき劇場は演劇と日常の … “ころがす「1988年6月30日、あるいはバイエル」(岸井大輔作・演出)” の続きを読む

◎あやふやな身体のための演劇入門(バイエル)
 小澤英実

 劇場という「何もない空間」と、そこで行われる公演の関係。それは例えば、劇場が器・容れ物で、公演が容れ物の中身というふうにたとえられる。そのとき劇場は演劇と日常の境界線になる。岸井大輔がここ三年ほど断続的に続けてきた「ポタライブ」シリーズは、様々な現実の街中を散策しながら観劇するというユニークな上演スタイルを特徴とする。その「ポタライブ」が寺山修司の「市街劇」の意匠を今に引き継ぎつつそれと異なるのは、岸井が舞台空間を劇場から現実の街へと解き放つとき、その主眼が、寺山のように「虚構の烙印を付された演劇を、歴史と同じ高みに押し上げること」ではなく、あくまで固有の場所性を備えた具体的な空間に対する異化、「場の劇化」に向けられていることだ。

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スパンドレル/レンジ「おとなのいない国」

◎「おたく」の殻から抜け出した末に  小笠原幸介  会場に入ると、ポリ袋の中に入った女子高生たちが携帯でゲームをしているのが見える。そして客電が消えると音楽にあわせ、生気のない顔で彼女たちがパラパラを踊り始める…という導 … “スパンドレル/レンジ「おとなのいない国」” の続きを読む

◎「おたく」の殻から抜け出した末に
 小笠原幸介

 会場に入ると、ポリ袋の中に入った女子高生たちが携帯でゲームをしているのが見える。そして客電が消えると音楽にあわせ、生気のない顔で彼女たちがパラパラを踊り始める…という導入部にまず惹かれた。

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超歌劇団「ドガガガーンゴワーシュンボコーンプシューバゴーン」

◎「コドモ頭脳」が生み出す真夏の夜のスペース・アトラクション  梅山景央(ライター/編集者)  見てる間はハラハラ、ドキドキ。終わってみればスカっと痛快。見事になんにも残らない演劇。そんな素晴らしい演劇体験について、あと … “超歌劇団「ドガガガーンゴワーシュンボコーンプシューバゴーン」” の続きを読む

◎「コドモ頭脳」が生み出す真夏の夜のスペース・アトラクション
 梅山景央(ライター/編集者)

 見てる間はハラハラ、ドキドキ。終わってみればスカっと痛快。見事になんにも残らない演劇。そんな素晴らしい演劇体験について、あとからごちゃごちゃ書く。こんな野暮な話もないだろう。とってもおもしろかった! それでいいんじゃないか。

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野田地図ロンドン公演 「The Bee」

◎”To bee or not to bee?” -戦略に満ちたロンドン進出第2作
今井克佳(東洋学園大学助教授)

プレビュー初日の開場時間は30分近く遅れ、開演は10分遅れた。たまたまロビーで話すことの出来た関係者からは、公式初日(プレスナイト)まではゲネプロのつもりで、毎日演出が変わると聞いたが、すぐにそれを実感した。直前まで演出プランが練られていたのであろう。

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零式「返事」

◎「閉塞感」のない肩すかし 人物設定が凝りすぎか  小畑明日香 『半寝』で第24回新風舎出版文化賞出版化推薦作選出、 前作『ブリキ・ゴーレム』で2005年佐藤佐吉賞優秀脚本賞など、 多くの脚本賞を受賞している劇団零式の、 … “零式「返事」” の続きを読む

◎「閉塞感」のない肩すかし 人物設定が凝りすぎか
 小畑明日香

『半寝』で第24回新風舎出版文化賞出版化推薦作選出、
前作『ブリキ・ゴーレム』で2005年佐藤佐吉賞優秀脚本賞など、
多くの脚本賞を受賞している劇団零式の、最新作『返事』をついに見に行けた。
一昨年『半寝』のチラシを見てから気になっていた劇団だったので、
こまばアゴラ劇場での公演が決まってとても嬉しかった。
なっておくもんだ、劇場支援会員。

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reset-N『パンセ2006』

◎洗練されたスタイルの完成形 新しい展開の始まりを  小笠原幸介(Cut In 編集部)  reset-Nは、作・演出の夏井孝裕による重厚な脚本と、ステージデザイン、音響、照明等、スタイリッシュな舞台効果で注目を集める東 … “reset-N『パンセ2006』” の続きを読む

◎洗練されたスタイルの完成形 新しい展開の始まりを
 小笠原幸介(Cut In 編集部)

 reset-Nは、作・演出の夏井孝裕による重厚な脚本と、ステージデザイン、音響、照明等、スタイリッシュな舞台効果で注目を集める東京の劇団だ。今回上演の『パンセ』という作品は3年前に初演されたもので、今回はその改訂版の再演。そのプレビュー公演を見ることができた。

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