◎「不揃いの美」によるクールな知性の発露
伊藤亜紗(ダンス批評)
本日の「ショー」会場は何と温泉施設内の大広間。障子戸を開けると意外にもなかは温室のようでガラス張りから冬の陽光が差込み、とはいっても中庭越しに否応無く目に飛び込んでくるのは酔っぱらったじいさんばあさんのまったりとした雑魚寝風景である。ダンスをアートとしてしつらえるなら排除するであろう、あらゆる猥雑さに満ちた寛大な空間。「携帯電話、アラーム付き時計など、その他音の出る機械はどうぞご自由にお使いください」とのアナウンスに始まり、横に長い舞台はもちろんカラオケ仕様、袖と舞台を区切るのはビロードの布などではもちろんなく、歌磨か何かがプリントされたひょろ長い暖簾である。
関西野外劇の雄として知られる劇団犯罪友の会は、今年で創立30周年だそうだ。私はこの集団を、アングラ演劇の最良の部分を継承し発展させている劇団だと考え、演劇批評家として一貫して評価し、支持し、応援してきた。今年10月に上演された『かしげ傘』は、「30周年超大作野外劇」と銘打たれているだけあって期待に違わぬ力作であったが、これを見ながら私は、もはや「アングラ」云々という文脈でこの集団の魅力を語る必要はなくなったのだな、とふと思った。「犯友」の芝居は、「犯友」の芝居以外のなにものでもなく、殊更に他の芝居との共通性を指摘したり、あるいは相違点を強調したり、といった、私自身がこれまでやってきた批評的な作業は、なんだかさかしらな営為に過ぎなかったような気がしてしまった。それほどに、この集団は、他の追随を許さぬ独自の魅力を備えた劇団として成熟しつつあることを、確認した次第である。
大阪の劇団「仏団観音開き」の東京公演(10月14日-15日、新宿タイニイアリス)は爆笑、興奮の渦だったようです。「仏団」はその後、横浜で開かれた「ぶたばん2006」(10月28日-29日)というライブイベントに劇団鹿殺し、毛皮族、宇宙レコードらと一緒に出演するなど知名度を上げています。遅れ遅れですが、アリス公演のレビューがいくつか載っているので紹介しましょう。