個人的な事情で長いこと休載してしまい申し訳ございませんでした。
4月は新年度(今のところ、おおかたの大学は)のスタートですので、これからの催しは月が明けてから発表されるところが多いです。見つかり次第【レクチャー三昧】カレンダー版(>>)に入力していきますので、そちらをご覧下さい。(4月の情報が主になりますが、5月と6月の情報も一部含まれます)(高橋楓)
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月: 2012年3月
ジエン社公演「アドバタイズドタイラント」
◎言葉と音楽の立体交差点で
梅田 径
観劇を愛する人なら誰でも、ひいきの劇団がひとつやふたつあるはずだ。とはいっても、その劇団の旗揚げから観続けているというのは稀なケースに入るだろう。名も知らぬ劇団の旗揚げを観に行くには動機がいるだろうし、その劇団がずっと見続けたくなるようになるほど魅力的でなければならない。
僕が旗揚げからすべての公演を見ている劇団はまだジエン社しかない。僕がジエン社を見続けているのは、単純にジエン社や作者本介のファンである、ということだけではなくてもう少し屈折した理由がある。早稲田大学で凡庸な学生としてすごしていた僕はジエン社を、その前身である自作自演団ハッキネンと重ねてしまうのだ。そもそも「ハッキネンの劇団」という肩書がなければジエン社を観に行くこともなかっただろう。
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渡辺美帆子企画展「点にまつわるあらゆる線」(青年団若手自主企画)
◎彼女のすべてを見尽くすことはできない-展示空間を食い破る演劇のトリガー
藤原ちから/プルサーマル・フジコ
■「記憶/記録」の罠
今この瞬間にもたくさんの作品が生み出されているが、たとえ優れたものであっても、たまたま良き理解者に恵まれなかったがゆえに埋もれてしまうことはある。タイムラインは今や、消費と忘却のストリームを形成している。それが果たして、作り手たちの渾身の作品の味方をしてくれるのかどうか、定かではない。だがそれでも「それ」は確かにあったのだ!、と思うからこそ、その存在証明をアーカイブとして書き残すこと。それが劇評の主たる使命だと考えてきた。
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パセリス「あたりまえのできごと」(クロスレビュー挑戦編第25回)
中野成樹+フランケンズ「ゆめみたい(2LP)」
◎それでも「そっと前進」する
關智子
(‘This is a tragedy of a man, who could not make up his mind.’)
ローレンス・オリヴィエが監督・主演を務めた映画『ハムレット』はこの言葉から始まる。叔父クローディアスに殺された父王の仇をとろうとしながら、主人公ハムレットはその決定的証拠がないためになかなか目的を果たせずにいる。ハムレットを決断できない男として見る見方は現在では広く受け入れられており、あらゆる上演でこの解釈が取り入れられている。中野成樹+フランケンズ(以下「ナカフラ」)『ゆめみたい(2LP)』も部分的にはその流れを汲んでいると言えるだろう。決断できない男ハムレットを描いた他の上演作品やオリヴィエの『ハムレット』とこの作品が異なっている点は、前者は作品を提示するにあたってなんらかの解釈を採択すると「決断」しているのに対し、後者は作品の提示の仕方そのものも全面的には「決断」しない。
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「クロストーク150分 最前線の演劇知」(前・後期)
◎熱く語った150分!×8
伊藤昌男
昨年の4月、東日本大震災の1か月後に始まった徳永京子プロデュース『クロストーク150分 最前線の演劇知』。前期と後期を合わせ、最前線で活躍する8人の劇作家・演出家の話を聞いた。
それぞれが、確固とした信念と実績に裏打ちされた貴重な話をされ、演劇界に対する思い入れも当然ながら真剣なものであつた。トークは毎回一人のゲストに対し、演劇ジャーナリストの徳永京子さんがインタビユーするという形式で行われた。
徳永京子プロデュース『クロストーク150分 最前線の演劇知』
・前期(2011年4月~2011年7月)岩松 了、長塚圭史、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、野田秀樹
・後期(2011年12月~2012年2月)宮沢章夫、松尾スズキ、鵜山 仁、いのうえひでのり
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クロスレビュー挑戦編の4月公演団体決まる
クロスレビュー挑戦編の4月公演が次の2団体に決まりました。みなさんのレビュー投稿をお待ちしています。
・コント劇団 もより駅は轟です(2012年4月20日-22日(日) 、劇場バイタス新宿)
・京都・劇団しようよ「ガールズ、遠く -バージンセンチネル-」(2012年4月26日-30日、東山青少年活動センター)
5月公演団体の応募受付中です。締め切りは4月15日(日)。 旗揚げ間もない劇団、これまでの活動が評価されていないと感じているグループ、短期間の公演で周知/宣伝が広がりにくいカンパニーなどの積極的な応募を歓迎します。詳細は次のページをご覧ください。
>> クロスレビュー挑戦編応募要項
サイバー∴サイコロジック「掏摸-スリ-」(クロスレビュー挑戦編第24回)
サイバー∴サイコロジックは、早稲田大学演劇倶楽部出身の松澤孝彦さんを中心に、2007年結成。「富山県葉暮町で起こる『ナンセンス・ミステリ』を創作し続ける。異常な建築美術で繰り広げられる、シュールな会話と地元愛が特徴的」というのに、今回は芥川賞作家中村文則作「掏摸」の舞台化に挑む話題作。広げた風呂敷を、最後に一気に収束するというこの劇団の荒技がどう発揮されるのか-。以下、5段階評価と400字コメントを到着順に掲載しました。末尾の括弧内は観劇日時です。じっくりご覧ください。(編集部)
北九州芸術劇場プロデュース 「テトラポット」
◎再生と歴史、縮尺のマジック
落雅季子
柴幸男の作品はいつも、距離が縮尺によって変化するということを教えてくれる。人の生死、家族の暮らし、物質世界の理を等価に並べながら時間軸と空間を瞬間的に伸縮させ、時に圧倒的な情感を構築する彼の世界は、1センチの至近距離が地図の上では1万キロメートルにもなり得るダイナミズムを孕んでいる。
そんな彼にとって二年ぶりの新作『テトラポット』は、北九州芸術劇場プロデュースの、あうるすぽっとタイアップ公演シリーズで、現地で活動する俳優らと共に二か月かけて作りあげた作品となる。柴が北九州で創作を行うのは初めてではなく、2010年11月、同劇場のドラマリーディングの企画にて自身の『わが星』を上演しており、そのときから続投している俳優も多く見られた。ここ数年、舞台作品におけるアーティスト・イン・レジデンスは関東以外の地方にも着実に根付き、大きなうねりを形成している。中でも北九州芸術劇場は独自のシリーズ企画を複数持ち、実力、話題性ともに十分な劇作家を選んで共に作品づくりに努める、志の高い公共劇場である。
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五反田団「びんぼう君」
世田谷パブリックシアターの舞台批評講座の受講生3名で結成された「劇評の会」。今年で7年目を迎え、毎月「世田谷劇報」という会報も発行しています。そのメンバーである藤倉秀彦さんの五反田団「びんぼう君」評を、了解を得て会報の2012年 2月13日号(通巻121号)から転載します(編集部)。