◎表現の深さについて、あるいは新しさはどこから生まれるのかということ。
矢野靖人
5月18日(日)、身体の景色の主宰である俳優・演出家の岡野暢さんから依頼を受けて、身体の景色のポスト・パフォーマンス・トークにゲスト出演するために、日暮里はd-倉庫に観劇に出かけた。
岡野さんとの最初の出会いは、あれは確か、2011年3月のことではなかったかと思う。忘れもしない、あの3.11(東日本大震災)の起こったその直後だった。それ以前から岡野さんのお名前や、身体の景色の評判は聞いていて、興味は持っていたのだけれどまだ観たことがなくて、そしてあの3.11の後、予定していた公演を断行するか、中止にするか? について、演劇や舞台芸術を取り巻く環境でいろいろな人たちが、様々な懊悩を抱え、そして身を切るような決断が為されていたさなか、身体の景色は、公演の断行を決めた。しかし相変わらず余震も続き、あるいは“自粛”というムードも漂い始めているなかで、果たして観客は劇場に来(られ)るのか。岡野さんや、身体の景色のドラマトゥルク・田中圭介君、その作品の出演者たちもこの問題に関しては相当苦しんでいたようで、確か、田中君から何とはなしに、宣伝・広報の協力を頼まれたんだったんじゃなかったかと思う。その辺りの記憶は曖昧だが、果たして僕は、身体の景色の稽古場に赴いた。そしてその身体の景色の、というか岡野さんの、自分の魂を剥き出しにしてそのままに舞台に乗せようとしているかのような仕事に心を揺さ振られ、熱に浮かされるままに多くの友人にお知らせを書いたのだった。や、順番は逆だったかもしれない。稽古場を見て、応援を勝手に買って出たのだったかもしれない。
いずれにしても岡野さんとのお付き合いはそこから始まって、その後、観劇した作品は、稽古場で観た「舞え舞えかたつむり&椅子と伝説」(作/別役実、身体の景色 vol.6)と、「エレクトラ」(作/ソフォクレス、身体の景色 vol.7)等々と続く。こちらも観に行ったし、岡野さんや田中君もshelfの作品をよく観に来てくれた。
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