ワンダーランドのクロスレビュー挑戦編12月は、京都の努力クラブ「旅行者感覚の欠落」公演(12月7日-10日、元・立誠小学校)に決まりました。昨年3月に旗揚げしてから5回目の公演。レビューは★印と400字コメント。締切は12月11日(火)正午。観客のみなさんの投稿を待っています。
(編集部)
青年団+大阪大学ロボット演劇プロジェクト「アンドロイド版『三人姉妹』」
◎カレー礼讃
川光俊哉

いったい何が書いてあるのか、よく分からない。いや、大ざっぱには分かるのだけれど、一人ひとりの発話が、大きなテーマと結びついているのかいないのか、よく分からない。はっきりしない。ただ、巨大な寂しさだけが、そこに残る。十九世紀末、あるいは、二十世紀初頭のロシア帝国の地方都市という、とてつもなく特殊な背景を題材としているのに、この作品が大きな普遍性を獲得しているのは、たぶん、この曖昧さにある。たとえば聖書に書かれたこと、あるいはイエスの発言自体が、いかようにも解釈できるために、のちに、いくつもの偽書が生まれてきたように。
アンドロイドを使った本格的な演劇を作るにあたって、すぐに思いついたのは『三人姉妹』の翻案だった。
アンドロイド、あるいはロボットが根源的に持つ寂しさを描きたいと思った。いや、厳密に言えば、ロボットは寂しがらないので、寂しく感じるのは私たち人間なのだが…。
『アンドロイド版 三人姉妹』の当日パンフレットで、作・演出の平田オリザはこのように書いているが、平田の翻案に対して、よくも悪くも、「分からない」という印象(全体的な、腑に落ちないという感じ)はない。
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青年団+大阪大学ロボット演劇プロジェクト「アンドロイド版『三人姉妹』」
◎私たちを交代できるもの、私の芯の擦り切れる音
綾門優季

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わかりあえないことから始めることに、私たちは疲れ果ててしまった。
一瞬でわかりあいたい、という私の中で燻る欲望が、生涯叶えられないことは知っている。
しかし、何故、膨大な時間を対話にも会話にも尽くしたにも関わらず、わかりあえるどころか、さらに遠ざかってしまったような錯覚に、私たちは時折、囚われてしまうのだろう。
この溝を埋める術はないのか?
この隔たりを狭める策はないのか?
そう問うことに、私は疲れ果ててしまった。
私のことを一瞬でわかってくれるのは私だけだ。
だから、私たちが「わかりあうこと」を交代するものがあるなら、それに面倒なことをすべて押し付けてしまおう。
そう、たとえば、アンドロイドに。
私自身が口を開かなければ、「わかりあえないこと」に直面する回数は、それだけ減少するのだから。
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忘れられない1冊、伝えたい1冊 第15回
◎「劇的言語」(対話:鈴木忠志・中村雄二郎 白水社 1977年)
カトリヒデトシ

元より偉大でもないのは自明だが、演劇に関してはロスジェネになりたくない。
ガキのころから季節季節には母に歌舞伎座に連れていかれ、わけもわからずおうむ岩のように「つきもおぼろにしらうおの」とかいっていた。父には毎月寄席につれていかれ「なおしといてくんな」とか「抱いてるおれはいってえ、誰なんだ」とかいう、やな小学生だった。
そんななんで古典に関しては昭和後半の「名人」という人を随分生で見てきた。ありがたいことだったなぁ。今でも六世歌右衛門や先代の辰之助は夢にみるし、圓生や志ん生のくすぐりや「カラスかあと鳴いて夜が明けて」とかの口調がついてでる。ふと「昔はよかった」といってしまうこともある。
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劇団、本谷有希子 「遭難、」
◎劇評を書くセミナー 東京芸術劇場コース 第3回 報告と課題劇評

ワンダーランドの「劇評を書くセミナー」(東京芸術劇場共催)第3回は11月2日(金)午後7時から同劇場ミーティングルームで開かれました。
合評の対象になったのは、劇団、本谷有希子 「遭難、」。鶴屋南北戯曲賞受賞作の6年ぶりの再演でした。提出された受講者の劇評12本を取り上げならが、講師を務めた演劇ジャーナリスト徳永京子さんが問題提起。その後、公演間近の配役交代と男優による女性教師役の評価、舞台前面で上げ下ろしされる透明な仕切り、トラウマの意味と影響などが話し合われました。以下、掲載の了解が得られた劇評を掲載します。ご一読ください。(編集部)
空気ノ機械ノ尾ッポ「~ソトへ~」(クロスレビュー挑戦編)
象牙の空港「女体出口」(クロスレビュー挑戦編)
絶対に通る! 地方劇団のフェスティバル攻略法
谷竜一(集団:歩行訓練代表)

どもども。谷です。僕は君たちに武器を配りたい。っていいタイトルですね。でも武器より楽器。楽器よりラッキー。ラッキーも二度三度続くなら、もはやマグレではない。谷です。山口で、今もっとも調子に乗っている舞台芸術ユニット「集団:歩行訓練」(通称ほこくんちゃん)の代表です。
今年は何故か、えだみつ演劇フェスティバル2012(「えだフェス12」)、フェスティバル/トーキョー12(「F/T12」)という日本有数の特徴的なフェスティバルに参加が決定し、全国ツアーに行くことになっています。ていうかもうやってます。いやあ、選考にあたった皆さんなかなか勇気があるなあ。
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山下残「ヘッドホンと耳の間の距離」
◎広がりゆく、コレオグラフ
中野三希子

山下残の作品は、訳が分からない。ある程度はもう覚悟ができているので、まずは我慢する。全力なのか適当なのか分からないシーンの連続に、そろそろ何か展開があるのではないかとつい期待する。期待は裏切られて、わりと何も起きない。のに、目が離せない。何も起きていないフリをして何かが起きているからだ。そして、訳が分からないフリをして、そこで起きていることは実はまぎれもない「ダンス」なのである。そう気付いて、嬉しくなってしまう。
『大洪水』『庭みたいなもの』に続き、STスポットと山下の3作目の協働となった『ヘッドホンと耳の間の距離』。
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さいたまゴールド・シアター「白鳥の歌」「楽屋」
◎劇場に根を張る巨木に
木俣冬
劇場脇の通路を抜け階段を上がり、さいたま芸術劇場大ホールのステージ上に特設された劇空間に足を踏み入れると、左側の奥に複数の鏡とテーブルがあって、さいたまゴールド・シアターの俳優たちが座っている。そこがアクトスペースかと思ったら、違って、右側に階段上の客席が設置されていた。
客席前のアクトスペースのつきあたりには、舞台裏を想像させる機材や小道具などの入った棚がいくつか並んでいた。
「こいつあしまった!」と老俳優ワシーリー・ワシーリイチ・スヴェトロヴィードフが上手からよろよろと登場し、チェーホフの短編戯曲「白鳥の歌」がはじまる。
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