地域演劇の未来形を求めて 枝光本町商店街アイアンシアター(北九州市)

 市原幹也(枝光本町商店街アイアンシアター芸術監督/のこされ劇場三主宰)

市原幹也さん
市原幹也さん

 ぼくが芸術監督を務める北九州市の「枝光本町商店街アイアンシアター」について、紹介の記事を書いてほしいとワンダーランド編集部から依頼を受けた。アイアンシアターは、地元企業経営者を中心とした有志が結成した、まちおこし団体「北九州お手軽劇場」(http://otegarugekijou.org/)が運営母体となり、「枝光本町商店街アイアンシアター応援団」という地元企業団体からの年間準備金と、助成金、そして来場者からの募金や寄付によって運営されている劇場である。
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維新派「台湾の、灰色の牛が背のびをしたとき」

◎小さい人 途方もない世界
 岡野宏文

「台湾の、灰色の牛が背のびをしたとき」公演チラシ 維新派の舞台の最大の特徴は、人がみんな「小さい」ということである。三、四十人も登場する人物たちが、その数の多さを裏切るように、みなあまりにも小さい。白塗りの少年たちがいくら喜びの中を疾走しても、スーツに身を包んだ若者たちがいくら粛々と歩もうと、その小ささは圧倒的だ。

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五反田団「迷子になるわ」

◎前田司郎はどのようにして迷子になったか。
 芦沢みどり

1.「迷子になるわ」公演チラシ
 10月末から11月末にかけての30日間、豊島区の劇場を中心に繰り広げられた「F/T10」が閉幕した。<演劇を脱ぐ>というキーワードを掲げて開催された今年で3回目の演劇祭。そのプログラム・ディレクターの相馬千秋は冊子の中で「今回唯一、自らが書き下ろす戯曲を演出する前田司郎は、敢えて『うまい劇作』の王道から離れ、『迷子宣言』をするという。これら(三浦基の作品も含めての意味:筆者補足)の上演を通じて、戯曲、俳優の身体をベースとした演劇創造の現在地点を再確認していきたい」、と『迷子になるわ』について前説している。
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鳥の劇場「白雪姫」

◎ 子供だって残酷の意味は分かるのに
 芦沢みどり

 「白雪姫」と聞けばたいていの人はグリム童話よりディズニー・アニメか子供向けにリライトされたお話の方を思い浮かべるのではないだろうか。かく言う筆者もその一人だったので、グリム童話をほぼ忠実に再現したという鳥の劇場の『白雪姫』を観て大いに驚き、かつ誤解してしまった。まずは原作と、一般に膾炙されていると思われるお話との違いをいくつか挙げてみたい。

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手塚夏子「私的解剖実験5-関わりの捏造」

◎不完全な肉体に宿る不完全な精神と、その救い
小畑克典
私的解剖実験5-関わりの捏造」公演チラシ
3人のパフォーマーたちは240cm×270cmの狭い舞台に乗り、”Zero” のコールとともに、各々のペースで脱力を開始する。自らの身体についてブツブツとつぶやいて実況しながら、ゆっくり時間をかけて身体を整える。”One” のコールで椅子に腰掛け、雑談を始める。服のこと、音楽のこと、食べ物のこと、その他諸々の、たわいのないリラックスした会話。そのうちに “Two”、”Three”、とカウントが進み、その度に少しずつシーンが中断される。ラウンドの間にほんの何秒かだけインターバルの入るボクサーのようだ。”Four”、”Five”、と進むにつれて、パフォーマーたちの身体が徐々にこわばるのが見て取れる。おそらく、カウントが一つ進むとともに、何らかの身体的制約、もしくは条件・ルールのようなものを課せられるのだろう。腕がプルプルと震え、土踏まずに力が入る。それに連動して、3人の関係にもこわばりが生じてくる、ように見える。

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中野成樹+フランケンズ「寝台特急”君のいるところ”号」

◎「大人ままごと」のおもてなし
小畑克典

寝台特急公園にはすでに何人か年かさの子たちがやってきていて、砂場のへりに固まっている。目が合う。いぶかしげに、あるいは値踏みするかのようにわたしを見つめる何対かの目。沈黙。
リーダー格と思われる女の子が、わたしの足下から50センチ彼ら寄りの辺りを指して、その指を左右につーっと動かす。

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青年団「革命日記」

◎強力で甘美な物語
小畑克典

「革命日記」公演チラシ「革命日記」は、集団が共有する大きな物語と個人に属する小さな物語を対置し、その二元対立が生み出す緊張やうねりを推進力とする、強力かつ甘美な物語である。その力強さ・甘美さは確かに観客をひきつけるが、同時に何かしら居心地の悪さを感じさせた。

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COLLOL「このままでそのままであのままでかみさま」

◎寒さと孤独、そして「ヨブ記」
鼎談(芦沢みどり、田口アヤコ、北嶋孝)

「このままでそのままであのままでかみさま」公演チラシ芦沢 今回のCOLLOLの公演『このままでそのままであのままでかみさま』について、最初に編集部からいただいたのは劇評を書かないかと言う話だったんですが、今回の作品は非常に色々な要素があるので、一人で書くよりは、鼎談にした方がいいと思ったんです。鼎談というより、私と北嶋さんが田口さんに質問する場になってしまうかと思うのですが。まずは会場のBankART Studio NYKですが、3月28日の夜、本当に寒くて使い捨てカイロを渡されて。その印象が強い。だだっぴろい横長の倉庫ですね。それでまずお聞きしたいのは、場所が先にあって、それに合わせて作品を作ったのか、それとも作品が先なんでしょうか。

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劇団 Ugly duckling「照準Zero in」

◎ステキにもつれた劇世界 虚無の風、ひやりと背中を
岡野宏文

「照準Zero in」公演チラシ親というのはほんとうによく分からない。子育てにビジョンがないのである。
人様に迷惑さえかけなければどんな人間になってもいいからねなどと喋った舌の先すら乾かぬうちに「医者になれ」などと抜かすから油断が出来ない。なれるのか今さら、医者に、オレが。だいたい、なりたくともなれないのが医者という職業の世の常であるのは十二分に承知の上で、かかる矛盾した見解を涼しい顔で言ってのけるのは、そもいかなる神経のなす技であることか。

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劇団印象「匂衣」(におい)

◎人心の機微に迫り、表現の幅広げる
今井 克佳

「匂衣」公演チラシ4月というのにひどく寒く、雪の散らついた晩に、劇団印象「匂衣(におい)」の初日を観にいった。
下北沢のスズナリのすぐ隣に、ミニシアター(映画)用のスペースがあって、それがシアター711である。50席くらいか。とても小さな空間だ。ありがたいのは椅子がふかふかなこと。映画用のスペースならではである。ただ、床の傾斜はゆるいので、後ろの席に座ってしまったらそれほど見やすいわけでもなかったのだが。

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