◎鼎談 不条理劇、岡田演出、個性派俳優のブレンドの味
芦沢みどり、香取英敏、水牛健太郎
世田谷・シアタートラムで開かれた「友達」公演(2008年11月11日-24日)は、芝居好きの間で事前にかなり話題になりました。安部公房の代表的な戯曲を、チェルフィッチュ主宰の岡田利規が演出するうえ、小林十市、麿赤兒、若松武史、木野花、今井朋彦ら人気、実力、個性の際だった俳優が登場するからです。不条理劇と岡田演出と個性派俳優陣との組み合わせが注目されたのでしょう。その結果はどうだったのか、ワンダーランドの寄稿者3人が舞台をさまざまな角度から検証しました。(編集部)
『瀕死の王』のチラシは、縦長の金色のフレームに入った写真だ。2人のティアラをつけた喪服姿の女性の間に、頭に王冠を載せた男性が車椅子に座っている。王冠からタイトルにある王様のようだが、パジャマを着て病人に見える。ティアラや王冠がなければ、喪服もパジャマも普通で、写真館で撮った家族写真に見えないこともない。その家族写真の金枠にかかるように、「死っ!死にたくねぇ!」と書かれている。初めて見る不条理劇は、チラシにも奇妙さがあり変に印象的だった。
トレンディ・ドラマシリーズ第2弾三部作の第2話というので、「いまどき?」と少々不安になりながら見に行った。フライヤーは情緒過剰だし、うむむと思っていたが、信頼すべき筋から、良かったのことばを聞いたので、でかけていった。行ってよかったというのが、感想。見逃さないでよかった。
鋭利な刃物で切りつけられた感覚がした。
三浦大輔率いる劇団、ポツドールの新作『顔よ』は、タイトルそのまま、友人に向かって、お前の顔はよいとか悪いとか、お世辞なのに本気にしたか、とか論評しあう、いわば、ミもフタもない芝居である。
最近の「エンタの神様」(日本テレビ系列のお笑い番組)はすごい。何がか、というとつまらなさにおいてすごいのである。「爆笑の60分!笑いが止まらない」と冒頭にキャプションがあらわれるのとは対照的に、圧倒的に笑えない60分。以前からそうだったともいえるが、このところ笑えない程度が極まっているように見える。お笑いブーム末期という現状を象徴的に映像化しようと目指しているのか?と勘ぐりたくなるほどに、次々と登場する芸人は、どこかでかつて見たような(そしてもはや誰もがすでに消費してしまった)ネタと形式をなぞってゆくばかりで、ネタの個性はキャラ設定以外ほぼない。笑いのマニエリスム(マンネリズム)。笑えない笑いを笑う。いや、視聴者はもう通常の意味では笑っていないだろう。それでも番組は堂々と続行している。それは大いなる謎だ。その謎において「エンタの神様」は、いま見るに値する番組である(少なくともぼくのなかで)。
開幕時から漂う、この「気味の悪さ」は何であろう。薄暗い地下の詰所、どぶさらいにでも使うようなゴムの防護服、そして「高額時給」を謳うビラ。全てが『死体洗い』のアルバイトを連想させる。何の話なのか言葉で語る前から、既に薄気味悪さ満載である。さらに舞台上に水道があって本当に水が流れたり、消毒用とおぼしき液体を霧吹きで噴いたりと、そこで行われる作業は、なんとなく湿った感じがする。その高い湿度感からか、得も言われぬいやな臭いが漂ってくるようである。ひどく気持ち悪い情景の舞台というのは間々あるが、本当には存在しない臭いが、意識の中に立ち込めてくる舞台というのは特筆に価する。
背番号零による初の会話劇という挑戦は、コトバとコトバの合間に肉の手触りをふと浮き上がらせた。