◎肯定と否定のあいだのあいだで半魚人は愛を叫ぶ
プルサーマル・フジコ
似ている……と安易に喩えるのは失礼で怠慢だけども、鰰の『動け! 人間!』を正面から語るのは難しいのでまずは迂回して搦め手から攻めてみる。長い旅になりそうだけどお付き合いいただきたい。
小劇場レビューマガジン
◎肯定と否定のあいだのあいだで半魚人は愛を叫ぶ
プルサーマル・フジコ
似ている……と安易に喩えるのは失礼で怠慢だけども、鰰の『動け! 人間!』を正面から語るのは難しいのでまずは迂回して搦め手から攻めてみる。長い旅になりそうだけどお付き合いいただきたい。
今回のクロスレビューは庭劇団ぺニノの『アンダーグランド』を取り上げました。「一時間で心臓を取り出す」手術ショーを生演奏付きで見せるという異色作。2006年に上演され話題を呼んだ作品の再演です。クロスレビューには多くの、とは言い難いものの、力の入った投稿をいただきました。(編集部)
◎不都合な視覚、豊かな非視覚
門田美和
私は翻訳をする。誰かの意図を別の言葉に置き換えて伝えている。そのとき私の頭の中には誰かの意図が入り込み、時にさらりと、またはそうではなく私から出て行く。私を通過したら言語だけが変わる。そういうコミュニケーションの形式を私は生業としているのだと思っていたけれど、本当はどうなんだろう。
◎暗闇で感じる「日常からの自由」
カトリヒデトシ
どこまでも上空が開かれている感覚。この空間には終わりがないのかもしれないと感じさせる。
広々としたところにいる「畏れ」よりも、満たされていく解放感への戸惑いだった。
…おかしいな。ここはビルの地下のはずなのに。
私が暗闇の中で感じていたのは、そういった虚空へ自分が開かれていくような開放感であった。
◎「内なるオウム」の視座なく
鈴木励滋
舞台は一昨年の公演ではマンションの一室であったが、今回は一戸建てだという。
赤を基調とした調度品、調度品と言っても正面奥に天井まで延びた7列9段の棚があるくらいなのだが、上から三段目辺りが下手側に、その上の段は上手側に伸び、それぞれが梁のようになっている。上手側にのみ壁がありこれもまた生々しい赤で塗られている。棚や梁にはマトリョーシカやエッフェル塔やベネチアのマスクなどが全集とともに並べられ、間接照明が配され、洗練された部屋を表していた。
◎強力で甘美な物語
小畑克典
「革命日記」は、集団が共有する大きな物語と個人に属する小さな物語を対置し、その二元対立が生み出す緊張やうねりを推進力とする、強力かつ甘美な物語である。その力強さ・甘美さは確かに観客をひきつけるが、同時に何かしら居心地の悪さを感じさせた。
◎立花の背中が幻視させる非「革命」的な時間
プルサーマル・フジコ
『革命日記』はまず何を差し置いても立花という女性の役を演じた鄭亜美が真面目さと切なさと色っぽさを抑制しつつも振りまいていて、革命闘士も支援者も町内会のおばさんたちもひっくるめた全ての登場人物の中でいちばんマトモな人間であるその彼女が、革命組織の異常さを客席に背を向けたまま糾弾するシーンが素晴らしい。
◎沈黙する神に向かって語りかける-待つこと
竹重伸一
この舞台は観客と共に、決して応答することのない沈黙する神に向かっても語りかけているように思えた。その意味ではDA・Mの仕事はS・ベケットの『ゴドーを待ちながら』に連なるものかもしれない。二年前の前作『Random Glimpses/でたらめなわけ』では映像や大量の椅子を使ったりしてまだスペクタクルな要素を多分に残していたが、今作はパフォーマーの肉体と空間との関係にフォーカスを絞ってよりシンプルでフラットな作品になった。そしてパフォーマーの動きも、特に前作では過剰な情念を感じさせた中島彰宏のパフォーマンスの変化がよく示しているように、よりニュートラルでイリュージョンや意味性を排除したものになっている。
6月のクロスレビューは庭劇団ペニノの「アンダーグラウンド」を取り上げます。2006年に上演され話題を呼んだ作品の再演です。世田谷・シアタートラムで6月6日から13日まで上演されます。
応募要領は、これまでと同じです。☆印による5段階評価。レビュー本文(コメント)400字。名前と肩書。それに郵便番号と住所を書き添えてください。もう一つ、観劇日を末尾に付けてください。送り先は info(a)wonderlands.jp 。(a)はアットマークに変えてください。多数の応募を待っています。
締め切りは6月14日。公演を見たばかりの熱気あふれる投稿をお待ちしています。採用分には薄謝を進呈します。
6月16日発行予定の「マガジン・ワンダーランド」に掲載予定。その後、webサイトに転載します。 マガジンの購読(無料)は登録ページから手続きしてください。