ロラ・アリアス「憂鬱とデモ」
劇団しようよ「SHIYOUYO EXPERIMENT 2013 使われないプログラム」(番外編)

◎淡い憂愁を帯びたユーモア―KYOTO EXPERIMENT 2013報告(最終回)
 水牛健太郎

 ダブル台風の襲来に、高速道路でバスが立ち往生といった最悪のシナリオが頭に浮かばないこともなかったが、えいままよと出かけてみれば、バスは少しの遅れもなく早朝6時半に京都に到着した。
 京都時代の友人と湯葉など食べて自転車で京都芸術劇場春秋座に駆けつけ、プログラムの1つ池田亮司の「superposition」を見たが、ハイブロウ過ぎて歯が立たない。電子音の猛烈な連打に、深夜バスの疲れもあり、意識が飛ぶことも再三。「映像作品なのでカバー範囲外」ということにして評は遠慮させていただく。
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【レクチャー三昧】2013年11月

 今月はフェスティバル/トーキョーとの兼ね合いで多忙をきわめる時期でございます。私事ですが、去年フェスティバル/トーキョーのパスポートを買ってせっせと通っていたら、終盤になってぎっくり腰になってしまいました。年齢のせいにしたくはなし、強靱な身体(と精神力)が欲しいです。(高橋楓)
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Baobab「家庭的 1.2.3」
She She Pop「シュプラーデン(引き出し)」
集団:歩行訓練「ゲームの終わり」

◎ごつごつした異文化の手触り―KYOTO EXPERIMENT 2013報告(第4回)
 水牛健太郎

 20日の京都は雨。朝から小雨が降りしきり、時に強くなったり、ふいに止んだり。京都らしい湿った情緒を感じさせる1日だった。自転車には乗れなかったが、この日の会場はすべて三条と五条の間。十分歩いて回ることができた。京都ならではのこんなコンパクトさは嬉しい。
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木ノ下歌舞伎「木ノ下歌舞伎ミュージアム”SAMBASO”〜バババッとわかる三番叟〜」
笑の内閣「高間響国際舞台芸術祭(Dブロック)」

◎めでたさの感じ—KYOTO EXPERIMENT 2013報告(第3回)
 水牛健太郎

 10月13日の京都はからっと晴れ、まさに観光日和となった。日本全国、いや世界からの家族連れや若者たちが行き交う古都。そこかしこに漂う浮き浮きとした空気に「ちっ」と舌打ちして、ただひとり観劇へと急ぐ偏屈そうな中年男の姿があった。誰あろう私である。
 忘れていた。この時期のバスは死ぬほど遅い。歩くよりは速いが、自転車よりはずっと時間がかかる。渋滞の上に、乗り降りの度に一騒動。「ピーピーピー」「一歩奥へ詰めてくださあい。ドアが閉まりません」「運転手さん、PASMOは使えるの?」……。
 バス移動を選んだのは間違いだった。私は深夜高速バスのサービスでただでもらった市バス一日乗車券を握りしめて後悔に震えた。来週と再来週は絶対に自転車に乗る。そう心に誓った。
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NPO法人向島学会×東京アートポイント計画「墨田区在住アトレウス家」Part 1&2

◎アトレウス家の過ごし方 その1
 中村みなみ/日夏ユタカ

 アトレウス家はギリシャの神話や演劇に登場する家族である。一家が現代の東京に住んでいたら?—このような発想から始まったという「アトレウス家」のプロジェクトは2010年にスタートした。『墨田区在住アトレウス家』『豊島区在住アトレウス家』『三宅島在住アトレウス家』と上演の度に名前を変え、一家は住む場所を変えてきた。

 上演は住む人がいなくなった民家、地域の複合文化施設、島の林道などで、いわゆる劇場では行われない。つまり、ここにいれば全てを見通せるという点は設定されていない。そこでは観客が、何を見聞きし、また何を見聞き逃すかを、意識的にも無意識的にも選択することになる。

 家はそこに住む人と場所の両方を意味する。「家」を標榜するこの作品は時間と空間の枠組みであり、訪れた人たちは各自でその「家」での過ごし方を模索することとなる。ここでは中村みなみ、日夏ユタカ、斉島明、廣澤梓の4名の「アトレウス家」での時間を紹介します。
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アートネットワーク・ジャパン×東京アートポイント計画「豊島区在住アトレウス家」
ミクストメディア・プロダクト×東京アートポイント計画「三宅島在住アトレウス家」

◎アトレウス家の過ごし方 その2
 廣澤梓/斉島明

toshima_dm2『墨田区在住アトレウス家』はPart 1,2ののち、2011年3月にPart 3×4が予定されていたが、折しも起こった震災によって中止となった。それまでの上演場所であった2階建ての木造家屋「旧アトレウス家」を離れ、作品は大きく変化する。住居ではなく公共施設に、さらには本土を離れ三宅島に住むことになった一家の物語は、「家やまちを見つめ、考える」プロジェクトとして、より一層その性格を際立たせていくこととなる。
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劇団うりんこ「罪と罰」
庭劇団ペニノ「大きなトランクの中の箱」

◎妄想と寓意—KYOTO EXPERIMENT 2013報告(第2回)
 水牛健太郎

 KYOTO EXPERIMENT 2013は例年同様、正式プログラム以外にフリンジ企画がある。今年のフリンジ企画はワークショップとか批評なども含まれるが、演劇・ダンス等の上演に特化したものとしては「オープンエントリー作品」というカテゴリーがある。去年までのフリンジ企画は主催者側がセレクトしており、東京の旬な若手劇団が多かった。今年は「オープン」だけに、「条件を満たせば、ジャンル不問、審査なしで登録可能」だという。そこで地元劇団が多く参加することになった。
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忘れられない一冊、伝えたい一冊 第30回

◎「貧者の宝」(M.メーテルリンク著 平河出版社)
 吉植荘一郎

【「貧者の宝」表紙】
【「貧者の宝」表紙】

 韓国演劇を見ると思っていたのは「ナゼこれほど頻繁に“死者や異界との交流”が登場するのだろうか?」という事でした。というよりも韓国演劇の生ある俳優や演出家たちは、オバケや亡霊のバッコする世界(舞台)で、一体ナニと向き合っているのだろうか?と。
 私が昨年出演したジョン・ソジョン作『秋雨』もそうでしたし、この2月に東京でリーディング上演された韓国の新作戯曲『海霧』等はいずれも“死者や異界との交流”がテーマもしくはモチーフに…新国立劇場で上演された日韓合作劇『アジア温泉』(鄭義信作)もそうでしたね。
 オ・テソク作『自転車』とかソン・ギウン作『朝鮮刑事ホン・ユンシク』にはメタファーとかじゃない、もうそのものズバリの死人や亡霊、妖怪が“役として”登場して生者と対話したり相撲取ったりします。コレって何なの(笑)? 霊やオバケの登場を韓国文化に由来するものと理解するとして、じゃあ霊やオバケを演じたり、それと向き合う人間はどうやって演じたらいいのか?……それっぽく見せればいいだけかもしれないけど、何だか逆に本質からは遠ざかっていくような気がするし……。
 こんな事を考えている時に出会った本がメーテルリンク著『貧者の宝』でした。
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ミナモザ「彼らの敵」

◎「敵」は自分のなかにいる
 堀切克洋

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「彼らの敵」公演チラシ

 ミナモザ(瀬戸山美咲主宰)のホームページに、2013年7月に上演された『彼らの敵』の舞台写真が掲載されている。
 ご覧いただけたであろうか。掲載写真は、実に120枚近くにも及んでいる。おそらく、劇団ホームページに掲載されている一公演の写真の点数としては異例の数であろう。これらの写真を撮影した写真家の名前は、服部貴康。本作の主人公のモティーフになった人物である。
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AnK「SUMMER PARADE」

◎含羞について
 川光俊哉

「SUMMER PARADE」公演チラシ
公演チラシ

 「ぼくは(と一人称で述べる)、演劇に対して、急速に興味を失いつつある」と、青年団+大阪大学ロボット演劇プロジェクト「アンドロイド版『三人姉妹』」の劇評『カレー礼讃』に、ぼくは書いている。いまも、その思いはほとんど変わらない。舞台芸術は「いまここ」で起こるライブである以上、「急速に興味を失いつつある」「演劇」はもちろん「現在の演劇」を意味するのであって、たぶん過去には興味を持てる・おもしろい演劇があったにちがいないし、明日以降の未来の演劇は、ぜったいに現在のままではいけない。「実験的」「前衛的」と称し、実際には、もっとも「実験的」「前衛的」ならざるもの、「実験的」「前衛的」というジャンルをつくり、そこに安住している演劇人を、ぼくは嫌悪する。
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