◎私/たちのありかを問う
中村みなみ
「deprived(仮)」という一風変わったタイトルは、当初「private」とされていたらしい。privateとdeprived(奪われた)とは同語源の言葉である。privateには、人間がみな属しているpublicから分離した/所属関係を奪われた状態の意が含まれているそうだ。
2014年4月に上演された「deprived(仮)」は、時代・国・形式の異なるさまざまなテキストがコラージュされた演劇である。
shelfはこれまでも「untitled」(2011)、「edit」(2013)等でテキストコラージュに取り組んできたが、今作品は『日本国憲法前文』に始まり、太宰治による小説『おさん』『人間失格』、ベルトルト・ブレヒトの戯曲『セツアンの善人』、武者小路実篤のエッセイ『ますます賢く』、武田泰淳の短編小説『ひかりごけ』、日本国歌『君が代』、童謡『手のひらを太陽に』、賛美歌『アメイジング・グレイス』、英詩人ウィルフレッド・オーエンの『不思議な出会い』と、特に幅広い種類の言葉が引用されている。
6名の俳優たちはそれぞれが各パートを負う形となっており、川渕優子による『日本国憲法前文』朗誦に続いて三橋麻子が『おさん』の終局部分を語ると、その次には別の俳優が別のテキストを…といった具合に展開していく。
“shelf「deprived(仮)」” の続きを読む