年末回顧「振り返る 私の2014」募集中!

 時間が過ぎるのが年々速くなりますね。また年末回顧アンケート企画「振り返る 私の2014」の時期がやってきました。今年見た公演から「記憶に残る3本」を挙げ、コメント400字で締めくくるワンダーランド恒例の企画です。この1年の観劇体験にとりあえずの区切りを付けてみてはいかがでしょうか。締め切りは12月15日(月)、月末25日頃に掲載予定です。多くの方々の投稿を期待しています。

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iaku「流れんな」

◎濃密で軽やかな会話劇
 片山幹生

 大阪を中心に活躍する劇作家、横山拓也の作品を見るのはこれが三本目だ。「エダニク」、「目頭を押さえた」、そして今回の「流れんな」。いずれもシンプルで短いタイトルではあるが、「いったいどんな作品なのだろう?」とこちらの意識に妙なひっかかりを残す。どこか演劇作品のタイトルらしく感じられない。「エダニク」、「目頭を押さえた」のタイトルは、実際に舞台を見ると腑に落ちた。「なるほど」と思わずうなる仕掛けがタイトルにも施されている。
 「流れんな」というタイトルを目にしたとき、いくつかの疑問が思い浮かんだ。この言葉はいったいどのようなイントネーションで発音されるのだろうか? 命令調の強い調子で「流れんな!」だろうか? あるいは命令ではあるけれども、「流れて欲しくない」という悲鳴だろうか? あきらめあるいは苛立ちのこもった「流れんなぁ」だろうか? またこの「流れんな」の主語はいったい何なのだろうか?
 終幕時に「流れんな」というタイトルは、私が思い浮かべていたあらゆるイントネーションで発話されうることがわかった。そしてこの動詞にかかる主語はひとつではない。「流れんな」に重なる複数のイメージがもたらす豊かな余韻が、じわじわと私の心に広がっていった。
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KYOTO EXPERIMENT2014

◎劇評を書くセミナー KYOTO EXPERIMENT 2014編 報告と課題劇評

【京都芸術センター】
【京都芸術センター】

 劇評を書くセミナー KYOTO EXPERIMENT 2014編を11月3日に開催しました。対象としたのはKYOTO EXPERIMENTで上演された全作品(フリンジなど関連企画を含む)で、会場は京都文化センターでした。
 講師は京都造形芸術大学舞台芸術学科教授、同大学舞台芸術研究センター主任研究員の森山直人さん。森山さんの講評を受けて作品を巡る議論が活発に行われ、5年目を迎えたKYOTO EXPERIMENTの充実ぶりを象徴するような、実りある時間になりました。
 提出された原稿のうち、了解の得られたものを掲載します。(編集部)
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世田谷パブリックシアター「炎―アンサンディ」

◎物語的想像力の場としての中東
 水牛健太郎

 舞台はカナダのモントリオール。中東系移民の女性ナワル・マルワン(麻実れい)が死に、公証人エルミル・ルベル(中嶋しゅう)が子ども2人を呼んで、遺言を伝える。それは、彼らの父と兄を探し出して手紙を渡してほしいという内容。双子の娘ジャンヌ(栗田桃子)と息子シモン(小柳友)は、これまで母親に過去の話を聞かされておらず、戸惑う。しかし、エルミルの説得もあり、まずジャンヌが、次いでシモンが中東へと旅立つ。それは父や兄を探すと同時に、祖国の内戦に翻弄された母の過去を知る旅ともなっていく。

 「炎 アンサンディ」はレバノン出身の劇作家ワジディ・ムワワドの作品だ。作品中に特定の国名は出てこないが、レバノン内戦を題材にしたものであることは、まず間違いない。作品には、内戦の様々なエピソードが出てくる。難民の乗ったバスへの銃撃、処刑される3人の子どものうち1人だけ助けると言われ、指名するよう迫られた母親の話、難民キャンプでの虐殺事件などだ。

 そうしたことから、この作品を、中東出身の劇作家が現地の悲惨な状況をリアルに描き出したものとして理解するのが自然かもしれない。作者ムワワドはレバノン出身者として「向こう側」に属しており、その立場から先進国(「こちら側」)に住む私たちに「中東の現実」を教えてくれるのだと。

 しかし、私はむしろ、逆なのかもしれないと感じた。つまり、作者ムワワドにとっても、リアルなのは中東ではなくて先進国での暮らしではないか。そして、中東は彼の物語的想像力が飛翔する、非日常の場なのではないか、ということだ。
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劇団民藝「コラボレーション—R・シュトラウスとS・ツヴァイク—」

◎ただ、これだけが言いたくて
 鉢村優

 front盟友の劇作家ホフマンスタールを亡くして以来、ドイツの作曲家リヒャルト・シュトラウス(西川明)は魅力的な台本を渇望していた。楽想を引き出す呼び水が無ければオペラが書けない、とぼやく彼を妻のパウリーネ(戸谷友)は叱咤し、オーストリアの人気作家シュテファン・ツヴァイク(吉岡扶敏)に勇気を出して連絡するようけしかける。

 後日、ツヴァイクがシュトラウスの邸宅にやってくる。求めに応じて、オペラの台本を書こうというのだ。シュトラウスはツヴァイクを歓待し、「音楽的なアイディアが頭の中に渦巻いているのに、それを出すことができなくて苦しい。早くプロットをくれ」と懇願する。その剣幕にツヴァイクは戸惑い、焦るシュトラウスと押し問答を繰り返す。ついに二人は「無口で控えめだった女が、結婚した途端口うるさい女房に変わる」という喜劇を作ることにする。このオペラはホフマンスタールと作ってきた数々の名作を超えるコラボレーションになるだろう、と言ってシュトラウスは有頂天になる。

 しかし、ツヴァイクはユダヤ系であった。着実に勢力を増しつつあったナチスの迫害は、二人のオペラにも影を落とし始める。上演中止の圧力を辛くも振りきり、初演は大成功を収めるが、ツヴァイクの身には危険が迫っていた。彼はオーストリアから亡命する。一方、シュトラウスの息子の妻もユダヤ系であった。嫁と孫たちを迫害から守るには、政権が押し付けた第三帝国音楽局総裁の任を引き受けねばならない。

 シュトラウスはツヴァイクに秘密裏での共同制作を再三提案するが、ツヴァイクが応じることはなかった。イギリスへ、ブラジルへと移住を繰り返したツヴァイクは、1942年、サンパウロで妻とともに自ら命を絶つ。戦後、年老いたシュトラウスは非ナチ化裁判に出席する。やむをえないナチスへの協力、再び訪れることのなかったツヴァイクとの共同作業を嘆いてシュトラウスは、あなたならどうしたと言うのか、と客席に向かって問いかけるのだった—
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エヴァ・フォン・シュワインツ「GH ( ) ST」

◎未完成な幽霊、不完全な“GHOST”
 辻佐保子

マンハッタン中心地での演劇フェスティバル「プレリュード」

 マンハッタン島の中心にそびえるエンパイアステート・ビルディングのはす向かいに、ニューヨーク市立大学 (City University of New York) の大学院がある。そこには演劇研究と実践の架橋として機能することを目的としたマーティン・E・セーガル演劇センターがあり、年に一度「プレリュード」 (The Prelude) という小規模な演劇フェスティバルが催されている (註1)。11回目となる2014年は、10月8日から10日までの3日間にわたって開かれた。

 「プレリュード」は、ニューヨークを拠点とする若いアーティストの支援を理念として掲げている。『浜辺のアインシュタイン』(Einstein on the Beach, 1978)などで知られる演出家ロバート・ウィルソンの下で長くアシスタントを務めたフランク・ヘンチュカーが製作総指揮に就き、4人のキュレーター(クロエ・バス、ジャッキー・シブリース・ドゥルリー、サラ・ローズ・レナード、そしてアリソン・ライマン)がプログラムを組むというシステムをとる。パフォーマンスやインスタレーションは主に2つの劇場(セーガル劇場とエレバス・リサイタル・ホール)とギャラリー、ミナ・リース図書館といった大学院内の施設で上演・展示された。本稿で取り上げるパフォーマンス『GH ( ) ST』(GH ( ) ST)も図書館を舞台にした出品作品の一つである。
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KYOTO EXPERIMENT 2014

◎観劇体験「KYOTO EXPERIMENT 2014」
 柴田隆子

 芸術の秋に加え、オリンピックの文化プログラムを意識してか、あちこちで芸術祭が賑々しい。京都国際芸術祭KYOTO EXPERIMENTと相前後して、東京ではダンストリエンナーレを引継いだ「Dance New Air ダンスの明日」や「フェスティバル/トーキョー14」が、地元横浜でも「ヨコハマトリエンナーレ」とは別に「神奈川国際芸術フェスティバル」が開催されている。芸術祭の名ではないものの、複合的なイベントは東京近郊ではたくさんあり、その気になれば毎日どこかで舞台を見ることができる。では、なぜ京都なのか。

 芸術祭は祭りだ。同じ祭りなら非日常がいい。日々の雑事を忘れ、舞台に集中したい。JR東海だって言っている、「そうだ、京都、行こう!」。去年観て気になったShe She Popの公演は今年も京都のみだし、週末なら3~4公演が見られる美味しい設定。会場毎の一律チケット料金制も値ごろ感があるし、ついでに京都観光だってできるかも。次々に発行されるニュースレターや作品についての紹介記事を読むと、気になるんだよね。
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ままごと「港の劇場」

◎演劇と生活を結ぶ光—小豆島・坂手港の劇場—
 落雅季子

チラシふたたび小豆島へ

 昨年開催された瀬戸内国際芸術祭の一環であった「醤の郷+坂手港プロジェクト」。ままごとはその参加アーティストとして小豆島の坂手港エリアで滞在制作をおこなった。2010年の岸田國士戯曲賞受賞以後、東京での活動ペースを抑えていたままごとが長期滞在の場所に選んだのがどんなところか知りたくて、私が初めて小豆島を訪れたのが昨夏のことだ。

 それから一年。坂手地区では今年もアーティスト・イン・レジデンスや展示が続けられており、ままごとメンバーも7月から9月にかけて断続的に滞在をしていた。昨年見た小豆島の風景や、そこでパフォーマンスしていた彼らの開放感あふれる表情が忘れがたく、今年9月、私は再び島を訪ねることにした。
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テアター・ブレーメンで働く

◎ドイツ演劇はドイツ料理より大分おいしい
 大泉七奈子

 私は、ドイツの公共劇場の現場で舞台美術の勉強をするべく、テアター・ブレーメンという劇場で働いています。
 そもそもドイツに来たきっかけは、文化庁の新進芸術家海外研修制度という奨学金を頂けた事に端を発します。2013年の9月に渡独したので、1年ちょっとになります。ドイツの劇場のシーズンは9月に始まります。2013/14年シーズンをミュンヘンの劇場、カマーシュピーレで過ごし、2014/15年シーズンから、つまりつい最近、ブレーメンにやって来ました。
 それまでは東京で舞台美術家の助手をしたり、その後小劇場中心に自分でデザインをやったりしていました。ワンダーランドで過去に取り上げられた作品のいくつかは、私が美術を手掛けたものです。
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