仏団観音びらき「蓮池極楽ランド」

◎テーマパークの実態を仏団色で描き出す
葛西李奈(フリーライター)

「蓮池極楽ランド」公演チラシなんまいだ~♪なんまいだ~♪両手を合わせ、天高く突き上げるキャスト総勢に胸打たれた。くり返し祈りをささげる彼らの表情に、希望の色は見えない。すべてを投げ捨て、懸命に許しを乞うている感じもしない。あきらめの極地にたどり着き、開き直ってしまった様子なのだ。夢を与えるテーマパークの裏側で、現実を受け止められず歪んでしまった彼ら。生きていることのどうしようもなさが伝わってきて、心身ともに力を吸い取られた。

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新国立劇場「アルゴス坂の白い家-クリュタイメストラ-」

◎悲劇の背後にある悲劇 舞台から滲む矛盾と葛藤
葛西李奈(フリーライター)

「アルゴス坂の白い家」公演チラシ悲劇を描くことには、どんな意味があるのだろうか。劇場をあとにしながら出てきた疑問は、それだった。わたしは、悲劇をながめながら、涙する。そして、自分の身を振り返る。「この状況よりはマシな現実を生きているわ」と、ホッと胸をなでおろす。いまのシアワセをかみしめ、日々を大切に生きていこうと思う。しかし、それができるのは、物語が必ず終わりをむかえるという安心感があるからだ。世界で起きている悲劇は、決して、何ひとつ、終わっちゃいない-。何度も何度も、ギリシャ悲劇のスジから脱線する登場人物たち。彼らは懸命に、その事実を、わたしに伝えつづけているようだった。

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X-QUEST「金と銀の鬼」

◎役者の肉体とパワフルな台詞で物語を生きる
葛西李奈(フリーライター)

「金と銀の鬼」公演チラシ剣を交える2匹の鬼の姿に、ぎゅっと心をつかまれた。生まれつきの容姿によって、人間からつまはじきにされ、ひとりぼっちになった弟の唯一の支えは、兄だった。その兄に剣を向けなければならない自分との葛藤が、表情を涙でゆがませたのだろう。人間を忌み嫌う鬼と、共存を望む鬼。どちらにしても、悲劇をつくりだす背景には、差別に気づかず日々の生活を営む人間がいるのだ。舞台を観ながら、そんなことを思った。

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空間ゼリー「穢れ知らず」

◎純愛の果ての崩壊と救い 背後にあるいくつもの真実
葛西李奈(フリーライター)

「穢れ知らず」公演チラシひたすらに隠し続けていた秘密が明かされた瞬間。劇場中に響きわたったのは、真っ白な肌を持つ、女の慟哭だった。やり直しがきかない現実は存在する。泣きわめきながら、周囲の人々の足元にすがりつく女の姿は、その事実を嫌というほど観客に知らしめていた。許しはどこにもない。味方は誰もいない。果てしなく広がる絶望。そんな孤独の中で生きる地獄よりも死を選んだ女は、むしろしあわせだったのではないかと思えた。光なき世界をまえに、愛する男の手によって息絶えることが、女にとっては最大の救いだったのかもしれない。脳裏に焼きついた作品の内容を思い浮かべながら、ぼんやりとそんなことを考えた。

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東京オレンジ「天国と地獄」

◎一寸先は闇か光か インプロプレイヤーたちの挑戦
 葛西李奈(フリーライター)

 うらやましいと思った。役者たちが本当にキラキラしていたからだ。彼らは頭と体と心を駆使し、五感…いや第六感までをも研ぎすませて舞台に立つ。この公演には、最低限の構成以外、あらかじめ決められた台本が用意されていない。それは、毎回どのように物語が展開するのか誰もわからないということだ。役者は仲間、自分自身、そして必ず物語がエンディングを迎えることを信じて観客の前に飛び出していく。どの瞬間も気を抜けないだろうし、相当な集中力が必要だと思う。それでいて精一杯、楽しそうに舞台を駆けめぐる姿に思わず胸を打たれた。わたしは一瞬をどれだけ真剣に生きているのかと思わされた。

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机上風景「幻戯」

◎二人の娼婦が示唆する女性の在り方
葛西李奈(フリーライター)

机上風景「幻戯」公演チラシカーテンコールで頭を下げた黒服の二人を見て、永久に抜け出せない暗闇に迷い込んだような気持ちになった。物語の中盤で静かに提示された謎を追っているうちに、果てしない孤独に近づいている自分に気づいた。それは公演内の台詞を借りれば、湿り気を帯びた気配に追われるように、私の心身を侵食するものだった。終演後、すぐには舞台上で起きた事象に意味付けをすることができず、私は劇場を出てから、悶々としつつ思考をめぐらせた。

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仏団観音びらき「宗教演劇」

ご無沙汰しております。
かなり久しぶりの登場です。
公演から半年も経過していて恐縮ですが
ずっと心に残っていた仏団観音びらきの
第6回公演「宗教演劇」の劇評を執筆しました。

初めて仏団を観たときの
エピソードも含めて書き出してみました。
読んでいただけたら嬉しいです。

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蜻蛉玉「へ音記号の果物」

◎果実の香り立ち上る 五感で描く女と生命の姿
葛西李奈

劇団から送られてきたDMの手触りと質感で「匂い」を思い出した。「ニセS高原から」では本家本元の脚本から全てのキャストの男女を入れ替えた演出が話題になっていたが、どうやら頭で覚えていた情報と肌で覚えていた感覚は違うらしい。作品中に出てきたスイカ、夏みかん、ブルーベリーを含め、皮をむくと瑞々しさが溢れ出すような台詞やしぐさに五感を刺激されていた部分が大きかったようだ。いまだ本公演を拝見したことがなかった私は、その「匂い」を確かめるために、今回劇場に足を運んでみることにした。

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COLLOL「性能のよい~シェイクスピア作『オセロー』より」

1月7日のマチネに観劇してきました。
題材は悲劇なのだけれど、どこか夢見ごこちな空間。
ラストではじわじわと胸にこみあげてくるものがありました。以下、あじさいがごとくをご覧ください。