仏団観音びらき「蓮池極楽ランド」

◎テーマパークの実態を仏団色で描き出す
葛西李奈(フリーライター)

「蓮池極楽ランド」公演チラシなんまいだ~♪なんまいだ~♪両手を合わせ、天高く突き上げるキャスト総勢に胸打たれた。くり返し祈りをささげる彼らの表情に、希望の色は見えない。すべてを投げ捨て、懸命に許しを乞うている感じもしない。あきらめの極地にたどり着き、開き直ってしまった様子なのだ。夢を与えるテーマパークの裏側で、現実を受け止められず歪んでしまった彼ら。生きていることのどうしようもなさが伝わってきて、心身ともに力を吸い取られた。

第3回公演「女囚さちこ~ブス701号怨み節~」で、その名を知った仏団観音びらき。煩悩を笑いで昇華させる、ド派手で華麗な自虐的ナンセンスコメディに魅せられ、すっかりファンになってしまった。爆笑の渦に巻き込まれたい。大笑いしたあとに、じわじわ広がっていく痛みを味わいたい。そんなマゾヒスティックな欲求を満たしてくれる劇団である。今公演は、主宰・本木香吏氏が、某テーマパークで働いていた経験をもとにつくられたとのこと。第6回公演「宗教演劇」でガラスの仮面を仏団色に料理してくれた彼女らは、どんな舞台を観せてくれるのだろう?はやる気持ちをおさえ、ワクワクしながらタイニイアリスを訪れた。

とある片田舎に建てられた蓮池極楽ランド。巨大な蓮池観音菩薩像の真下では、極楽ミュージカル「蜘蛛の糸」が上演されている。見おぼえのある着ぐるみキャラクターたちと罪人カンダタが1本の「蜘蛛の糸」をめぐって悶絶するのだ。閻魔や天女といった登場人物たちも舞台を彩り、大迫力スペクタクルが展開される。…が、来場者数は、悲惨な状況。にも関わらず、上演は一向に中止される気配がない。併設する蓮池グランドホテルの女将がそれを許さないのだ。神のお告げを受けて蓮池極楽ランドをつくった女将は、どうやら、この場所で絶対的な権限を持ち合わせているらしい。というのも経営者である夫は、妻である女将に頭が上がらないのだ。夫の浮気が原因で、宗教に走ってしまった妻を咎められないのである。それでいて夫は、経理の女性と不倫中。財政状況も人間関係もどうしようもないことになっている。最終的に、蓮池グランドホテルの名物温泉は、温泉の素を入れたものであることが発覚。マスコミに報道され、キャラクターの著作権侵害も問いただされ、蓮池極楽ランドは見事に経営破綻に追い込まれるのだった。

わたしの印象に残ったのは、願わず流れ着いてしまったミュージカルの出演者たちだ。元ディズニー踊り子、元ピューロランドの着ぐるみアクター、元四季の座員などなど。夢に破れながらも、それぞれが過去の栄光にしがみつきながら日々を過ごしている。どうにかして自分の才能を認めさせようと、互いに奮闘するのである。その姿が、ものすごくリアルで痛々しい。ところどころの会話も、グサグサ胸に突き刺さる。さすが、本木香吏氏のしょっぱい経験が組み込まれているだけのことはある。テーマパークの裏側を詳細に伝えるためだろうか。ド派手で華麗なアクションはおさえ気味に、エピソードを練り上げていたように感じられた。

わたしは、仏団観音びらきの面白さは、大笑いしたあとの痛みにあると思っている。その点から見ると、今回は笑いのポイントが少ないように感じられた。痛みの方が先にきて、落ち込んでしまったのだ。わたしの身近な人々を思い浮かべてしまったからかもしれない。いつもは気にならない暗転の数々も、集中力が途切れる要因となってしまった。正直に言うと、極楽ミュージカル「蜘蛛の糸」の上演場面以外、爆笑した記憶がないのである。

おそらく、本木香吏氏の某テーマパークでの経験が、よほど強烈なものだったのではないかと思う。思い入れが強ければ強いほど、その箇所をクローズアップしてしまうものだ。パンフレットには「このお話を観たあとにテーマパークに足を運んでみてください」とある。確かに、今後テーマパークに行くようなことがあったら、キャストを見るたびに胸がチクチクしてしまうだろう。とすると…もしかしたら、つくり手の意図通り?もっと煩悩を笑いで昇華して欲しかったなぁと思いながらも、新しい仏団の魅力を知ってしまった感じだ。やはり、本木香吏氏の感性に惚れてしまっているのだろう。

次回公演は未定とのことだが、ぜひ活動を続けていってほしいと思う。笑いと痛みをどんどん振りまいて、邁進していってもらいたい。これからもずっと応援していきたい劇団だ。(2008.2.1)
(初出:週刊マガジン・ワンダーランド 第80号、2008年2月6日発行。購読は登録ページから)

【筆者略歴】
葛西李奈(かさい・りな)
1983年生まれ。日本大学芸術学部演劇学科劇作コース卒業。卒業と同時にフリーライターとして活動開始。大学在学中、善悪の評価なく相手の話を聞くことで、自己受容・自己発見を促すプレイバック・シアターと呼ばれる手法に出会う。学生時代の挫折経験を真摯に受け止めてもらい、精神的に回復した経験からインタビューの奥深さに目覚め、2年間にわたるトレーニングに参加。現在はその経験を活かし、インタビュー&ライティングのお仕事を増やしている。wonderland執筆メンバー。

【上演記録】
仏団観音びらき第7回公演「蓮池極楽ランド」
東京公演 新宿・タイニイアリス(2008年1月12日-14日)

作・演出:本木香吏
<出演>
本木香吏 峰U子 萬知明(劇団ウエスト) 松岡里花 東口善計 桂都んぼ 広田あき 藤原新太郎(TEAM-DARKーBLUE)藤原求実子 小林徹 ベッカム木下(激富) 濱崎右近
金明玉(大阪・福岡公演) 豊田文緒(大阪・福岡公演) 池下理都子(東京公演) 宮奥雅子(東京公演)ほか

スタッフ
作・演出:本木香吏
舞台監督:杉岡hige亮介(BS-=)
舞台美術:宮田志保
衣装:飯田直子
音響:安藤通康
照明:松田早織
イラスト:本木香吏
着ぐるみ制作:中村かおり・家路快将
振付:日垣陽子・豊田文緒・萬知明
宣伝美術:堀川高志(kutowans studio)
映像:石田アキラ(A.I.Films)
制作補助:鈴木ホリケ
プロデュース制作:福田祐子

映像出演:吉田千佳子 川北富貴 澁谷かおる 徳永あや子(流しそうめん一座) 豊田祐満 古川祐 美和 陽太

「蓮池極楽ランドのテーマ」
作詞:本木香吏
作曲:村山裕希

<福岡公演>くうきプロジェクトワンコイン実験シアター
2008年2月16日(土))PM2:00/6:00
<会場>福岡市立青年センター(地下鉄天神駅徒歩4分)
<料金>500円!!(全席自由)

<大阪公演>2007年10月12日(金)PM7:30
13日(土)PM2:00/7:00
14日(日)☆イベントあり/PM6:00
<会場>中津ピエロハーバー(阪急中津駅より徒歩2分)
☆イケメン日替わりゲスト☆
12日PM7:30 水津安希央  八田浩司
13日PM2:00 クスミヒデオ  緒方晋(TheStoneAge)
PM7:00 八田浩司  森田展義(吉本新喜劇)
14日PM6:00 小沢直行(ボーナス・トラック) 土性正照(劇団赤鬼)

<料金> 前売2500円 当日2800円 (全席自由)


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